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「オタク卒業」
「籠に閉じ込めちゃいけない鳥もいるんだと。羽根があまりに美し過ぎる。それが飛び去ったとき、自由になってよかったと喜ばなきゃいけないんだと。
とは言っても、鳥が飛び去った後の世界は、前よりくすんでわびしい。」
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人生で1番好きな映画の1番好きな台詞
アイドルに限らず我々は皆学業を修めて卒業を経験する。しかし推しの卒業発表と対峙する際の心構えは学校では教えてくれない。
そしてまさにその瞬間が訪れた。
推しとの出会いは2年前。
が、その前に自身の卒業の話。
地方のドがつく田舎で生まれ育ち、6歳の時両親は離婚した。
片親となってからは深夜遅くまで親は仕事で不在。学校から帰ったら家事炊事は自分たちでやる。
子供らしい振る舞いは許されず、学校や周りからは「落ち着きがあって勉強ができる子」と評価された。
自分を守るには賢く生きる術を覚える他なかった。
そのまま地元の高校を卒業。地元を離れてそこそこ良い大学に進学できた。
(これからは自分の人生を生きられる。自分の幸せを掴むことだけ考えていいんだ。)
自由で豊かな人生への第一歩は音を立てて崩れ落ちた。
些細な人間関係の失敗から心が壊れ始め、適応障害と診断された。
今まで普通に出来てたことが出来ない。人と会うのが怖い。
周りの顔色を伺って自分を殺して生きてきた。知識は勉強で身に付いても、自分を大切にする生き方は身に付いていなかった。
休学をして実家に戻り療養したが回復は間に合わず、大学を卒業することは出来なかった。
その後なんとか就職できるまでに回復したが今度は自分で仕事量をセーブするという社会人に必要なスキルを学ばず何でも引き受けた結果自滅。
再び精神を壊して入院することになった。
にっぽんワチャチャの鈴木Mob.を知ったのはその頃。
アイドルはおろか、自分世代の流行り曲も知らないような昔の洋楽ばかり聴いて育った人間が気付けばアイドルの推しが歌う姿を画面越しに追っていた。
ワチャチャには入院中ずっと元気を貰っていたからいつかライブに行って直接感謝を伝えたいと思った。
しかし気持ちとは裏腹に地方という制約、主に自身の体調の問題が大きくなかなか会いには行けなかった。
活動3年目に推し始めたグループは、一歩踏み出せない自分とは対照的に夢である武道館公演を決めて当日まで残り2ヶ月を切っている。
そんな中で発表された鈴木Mob.卒業。
幸い卒業後も何かしらの形で活動は続けるようなので安心したが本人が泣きながら気持ちを語る配信を聞きながら、自分の気持ちがわからず気の利いた言葉を掛けることが出来なかった。
これを書いている理由はそんな自分の気持ちに気付くため。そして後悔をしないため。
にっぽんワチャチャの鈴木Mob.は逆境を乗り越え夢を叶えて、また新しい世界に羽ばたこうとしている。
その姿を目に焼き付けるため自分も一歩踏み出そう。
そしてその姿が見える限り側で見守り続けたい。
大学と違いオタクには在籍期間の上限はない。
オタク卒業。まだ出来そうもない。