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高級ブランド”グッチ”創業者とその一族が辿るなんともダークで数奇な結末。『ハウス・オブ・グッチ』

少し前に観た映画『ハウス・オブ・グッチ』の感想を遅ればせながら投稿させてもらう。ブランド物にさほど興味が無い者でも知っている高級ブランド、"グッチ”。そのグッチの創業者とその一族にまつわる話だ。作品についてはこれから記載していくが、鑑賞後に何故かとグッチに行きたくなってしまう感覚にさせられたのは、この作品の魔力か、はたまた、こんな数奇な運命を辿ったにも関わらず今なお全ブランドの代表的立ち位置に君臨し続けるそのブランド力にあるのか、それはいささか不明。なんとも不思議な感覚に陥ってしまう作品だった。

グッチ家を崩壊の道へ進めていく女性(パトリッチィア)を演じるのはレディ・ガガ。『スター誕生』で映画女優としての一定の評価を受けた彼女だが、今回は歌声披露なく、表情と演技のみでその悪どさっぷりを表現している。冒頭、彼女の父親が経営している会社を訪ねるシーン、派手な服装でエゴ感たっぷりの歩き方から見える彼女の野心ぶりがこれから起こる物語の波乱を予期させる。グッチの跡取り息子であるマウリッツィオ(演じているのはアダム・ドライバー)とパーティで出会い、グッチ家の一族と分かると、その後は自己アピール満載であれよあれよとマウリッチィオを虜にし、結婚までしてしまう。当初は家業を継ぐことを拒否し、弁護士になろうとしていた夫を説得し、叔父のアルド・グッチ(アル・パチーノ)の計らいもあり、グッチの会社で働くようになる。マウリッツィオを上手くコントロールしながら、叔父、従兄のパウロ(ジャレッド・レトー)から会社の株を奪い、実権を掌握していくパトリッチィア。

アダム・ドライバーの少々抜けた感じの御曹司役とガガ演じる野心剥き出しの女性の相性が良さそうで、噛み合って無い部分もある感じがリアル。大柄のアダムと小柄のガガというふたりの身長差が身分不相応であり、相反関係になっていく行く末のアクセントにもなっていそうでその演出がなんとも妙である。
渋く、そして重厚なイメージのあるアル・パチーノがまんまと騙されていく様は他の映画ではおまりお目にかかれないのではないだろうか。そしてなんといっても、どこか狂気じみており、見方によっては愛らしく(?)もあるパウロをジャレット・レトーが演じているとは全く分からなかった。個人的には、アルドとパウロを中心にグッチ一家の物語を描いてみても、それはそれで見応えのあるものになったかもしれない。

物語に戻ろう。順風満帆に会社のトップに上り詰めていくパトリッチィアとマウリッツィオ。しかし、マウリッツィオが偉くなっていけば行くほど、2人の関係性に陰りが生じていく。そして物語の中盤で1人の女性、パオラの登場で2人の関係に大きく亀裂が入っていく。そんなこともあり、マウリッツィオに会社を継がせるように説得していたあたりから親交のあった占い師(サルマ・ハエック)にどんどんのめり込んでいくパトリッチィア。占い師の進言に忠実に従ってしまい、最後の最後に大きな悲劇が訪れてしまう。

終盤の展開がやけに淡々と進んでしまった印象はあるが、それでも最後の最後まで見逃せない結末であった。予告編の印象としては、悪女が金持ち一家に入り込み、家族関係を破綻し、壊滅させていくような愛憎たっぷりのヒューマンドラマだと思ったが、実際のところは、金持ち一家の利権争いの為の小競り合いとそこから生じる弊害、欲が欲を生み、強欲の末に喪失、崩壊をもたらす、というグッチ一家というファクターを通して、ブルジョワを揶揄する作品というなんとも明快な映画だったように感じた。


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