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#28 オーダーメイド=こだわり!ってわけではないのかもしれない

店主と学ぼうシリーズの途中ではございますが、ふと気づくことがあったので閑話休題。

先日、Rigelではエンゲージリングとマリッジリングの納品をさせていただきました。
お客様は静岡県に住むカップルで、結婚後はお仕事の都合で長野県へ移られるとのこと。そんなわけで甲府にご縁はなかったそうですが、お知り合いのツテを辿って、Rigelの作家にご相談があり、2回ほどのお打ち合わせを経て、つつがなく3点のリングを納めさせていただきました。

エンゲージリング|0.2ctのダイヤの両脇にピンクオパールをあしらいました
マリッジリング|女性のほうはピンクゴールド色 肌なじみのいいキレイな色です

さて、世の中にはたくさんの有名ブランドがあり、甲府市内には専門店もあるなか、今回のカップルはなぜわざわざRigelまで来てくださったのでしょう?

よほど他のお店では見つけられないような個性的なデザインを求めていたのか?
素材や機能にこだわりでもあったのか?
予算や納期に特別な条件でもあったのか?
…と思いきや、そういうわけでもなく、比較的オーソドックスなデザイン、一般的な予算感、特にあれこれ細かい制約もなくスムーズに納品に至りました。

作家いわく、これまで長く業界で仕事をしてきて、個人的なツテでブライダルリングを相談されることは何度もあったが、こと細かなリクエストがあることは実は少ないとのこと。もちろん下絵を描くところから始まる完全オーダーメイドもあるけれど、既製のデザインの中から決まることも多いし、正直に言ってしまうと、オーダーメイドとはいえ既製品で同じようなものがあるだろうな…と思うこともしばしばだといいます。

それなのになぜ、ツテを辿ってまで、無名の個人や店に相談が来るのか?
お客様とのお打ち合わせ風景を横で聞いていて、気づくことがいくつかありました。

1)そもそもジュエリーに興味がない人は多い

多くの女性は、多少なりとも宝石の世界への関心があり、ブライダルリングをハイブランドで買うことに憧れがある…と思われがちですが、現実にはジュエリーというものに全く食指が動かない女性もかなりいます。ぼんやりとティファニーやカルティエの名前くらいは知っていても、その違いもよくわからないし、わざわざ見に行ったとて何が何やらわからずキラキラした店員さんに圧倒されて結局何も決められないだろう、と想像してしまう。

それならそれで、一生無縁でもよかったのでしょうけど、結婚指輪という風習までを否定する人はそれはそれで超レアで、結婚するとなれば一連の儀式としての結婚指輪にはそれなりに憧れというか“当たり前“という感覚はある。なので、なにかしら決めなければいけないけど…という状況におかれる人は、実はかなりいるんじゃないでしょうか。

2)適切で納得のいく買い物がしたい

こだわりがないとはいっても、マリッジリングだけでもペアで十数万円、高ければ3ケタ万円にもなり得る商品ですから、多くの人にとって適当に済ませられる買い物ではありません。しかも誰にとっても初めてのお買い物(2度目3度目があってもいいんですが)。車のような機能の違いもほぼなく、いわゆるファッションリングと比べてもデザインもオーソドックスで、使われる素材、石、デザインの幅も同じようなものなのに、「なんでこっちは◯万円で、こっちは◯十万円!?」と感じることはあると思います。

そんなおぼつかない状態でお店に行ってしまえば、なんだかんだ乗せられて高いものを買わされるんじゃないか?逆に、安物を買ってあとで後悔するんじゃないか?などなど。不安を感じるのは道理です。

それこそ車や家なら男性の研究心に火がついてあれこれ調べてくれることも期待できますが、残念ながらジュエリーとなるとそこは期待薄。「キミが気にいるものでいいよ」なんていいつつも懐具合も鑑みて、ゼクシイの「失敗しない結婚指輪選び」なんて記事にも翻弄されつつ、カップル揃ってぐるぐる🌀😵‍💫なんて人もいるのでは。

そんなときに、いわゆる「保険の窓口」のような、どこかのブランドに肩入れせずに客観的にアドバイスをしてくれる存在というのは頼もしいもの。できれば多少の手数料を払っても、その人が勧める自分に最適と思える商品を買えれば、それが最も安心感と納得感がある買い物になるんじゃないか、と考えるようになる人も多いかもしれません。

3)一生モノだもの…ストーリーがほしい

もうひとつのブライダルリングの特徴は、「一生身につける」ということです。(いや、まぁ結果的にそうならない人もたくさんいますけど。それもまたよし。)となると、決断するにはなにか品質とか予算とかを超えた、情緒的な理由がほしいものです。

最近は「自分達でつくる」なんて選択肢も増えてるようで、仕上がりの良さとか品質はどうなの?という意見もあると思いますが、特別な意味を込めるにはとてもわかりやすいですよね。

そういうなかで、「知り合いの作家さんにオーダーする」「ジュエリーの産地でオーダーする」というのは情緒的な動機になり得るのかもしれません。つまり、”オーダーメイド”といっても、あれこれデザインへの理想やリクエストがあるわけではなく、なにか決め手になるストーリーを探した結果、「知り合いがジュエリー作家をやっている」「知り合いの知り合いが甲府で制作してくれるらしい」といった情報をたどって、わざわざRigelを訪ねてくださるのでは、と思い至りました。

以前ウェディングドレスのアクセサリーをオーダーしてくれた友人も、せっかくだから縁のあるところでお願いしたい、とわざわざ東京から来てくれました。

人生で最高難易度かもしれない買い物を納得のいくものに

ただし、今回あげた1)2)3)のどれかひとつだけだったら、必ずしもRigelには辿りつかないし、ましてご成約には至らないと思います。実際、最寄りの百貨店で勧められるがままに買う人もいるだろうし、友人と同じだから、有名なブランドだから、という程度で決める人も多いと思います。

今回、Rigelの作家の接客を聞いていて、とても丁寧な説明が印象に残りました。

・そもそもリングの価格はどのような理由で決まるのか
・ファッションジュエリーとはどこが違うのか
・ダイヤモンドや金属の選び方と予算とのバランス
・意外に見落としがちな注意点
・既製品の紹介とオーダーできる範囲

など。売る側のはずの私が思わずメモを取ってしまったくらい。

普段はリングもほぼ身につけないし、他のブランドにも全く足を運んでないとおっしゃっていたおふたりにとっては、1)2)3)の条件がすんなりと揃って「このまま注文したい」という決定に繋がったのではないかと想像します。もちろんご本人たちは無意識だと思いますが。

ブライダルリングとは、何度も書いたように、商品そのものに機能性、デザイン性の差が少なく、それまで選んだこともなければ考えたこともない人がほとんど。その一方で、高額で、「愛の証」「死ぬまで毎日身につける」という重い任務を背負うのですから、考えれば考えるほど特殊な買い物だなぁと思います。せっかくの幸せを象徴するハレの買い物に、不安やモヤモヤを抱えてしまうのはとてつもなくもったいない。そんな時はぜひRigelにご相談いただけたら、まずはわかりやすく基礎知識をレクチャーできます(結果的に他のブランドで買うことになってもOK!)

そして、ブライダルリングに限らず、同じような悩みはファッションリングやアクセサリー全般にも当てはまるのかもしれません。ある程度歳をとって、それなりの価格帯の“本物の“ジュエリーを身につけたいと思うけど、どこでどのように選んだらいいかわからない、という声は時々耳にします。私自身もRigelとの縁がなかったら、同じことを言っていたと思います。

これだけ情報が蔓延する世の中でも、“御用聞き“のように相談できて、客観的なアドバイスをくれる存在というのは心強いものです。Rigelはそんな存在になれたらいいのかもしれないなぁ、、、と思う出来事でした。

おふたりが身につけたところ お幸せに!

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