高速1号系統の存廃議論と対案
実は……回覧板で
実は私もこの件初めて知ったのは3月1日で、ちょうど回覧板が届いたのでなんだろうと思ってみたら、上のようなものが中に入っていた。書面の右には「令和4年2月1日」の記述があり、数ヶ月前からこの問題が「検討」されていたのではないかと伺わせる。高速1号系統の廃止の検討に関して中日新聞市民版で発表されたのも同日。
さて、理由として赤字が原因と言われている。特に2020年はコロナ禍の影響で市中心部への外出を控えた関係で営業係数が大幅に落ち込んでいる(詳細は「バスのアーケオロジー」様が記載)。
また、敬老パスの名古屋市内の各社鉄道利用が開始される点も「高速1号系統廃止検討」に踏み切った理由ともされる。
また、通勤や買い物等行動形態が栄方面から名古屋駅方面にシフトしたこと、昨今のコロナ禍におけるテレワーク勤務による通勤移動の減少、また関連して定番ではあるが、通勤の多様化やモータリゼーション云々も理由だろうと思われるが、一応(追記)。
もう一つの理由として、名古屋高速の料金体系の見直しも「高速1号系統廃止検討」に踏み切った理由なのではないかとも思われる。
市交通局は路線再編や従来系統の増便で「対処」しようとしている。ただ、新聞の内容からするとメイン利用者である「有松エリア〜栄近辺」の導線とは関係ない鳴海駅へも増便が検討されている(おそらく緑区役所周辺のエリアか)。
また、栄〜緑区南部区間を結ぶ路線であり、円上→有松町口無池(森の里団地行き)および有松町口無池→東郊通3丁目(栄行き)は名古屋高速を使うものの、少なくとも栄〜上前津〜鶴舞公園前〜東郊通3丁目の間は一般道を使うため、沿線利用者にとっては重要な路線なのかもしれないが、そこへの補填はない模様。
市交通局は新設路線として最近開通した桶狭間勅使線を経由し、南大高駅を起終点とした路線を設定する模様。ただし、有松町口無池を起点とするか高速1ルートの一部の活用もしくは清水山経由の循環対応にするかは不明。
高速1号系統の問題点
では、なぜ名古屋市交通局は高速1号系統を「廃止」しようと「検討」しているのか。おそらくだけど、片輸送的な傾向であり運賃が割安で長距離な点があげられるのではないか。
まず片輸送であるが、利用者の多くは朝有松エリアから「出勤」し夜有松エリアに「帰宅」する流れとなっている。ただ、その逆方向が空気輸送になりがちということが指摘されたのではないのか。
次に運賃面だが、現状の名古屋市バスの運賃は均一制で210円(小学生までの子供100円)。さらに高速料金は10円。運賃面ではあまりに乗り得な路線となっている。
最後に距離の長さは約25kmとかなり長く、名古屋市交通局のなかで距離最長の路線となっている。
路線バスなのになぜ高速道路を走れる 名古屋市バス最長路線、均一運賃にプラス10円で(乗りものニュース様)
改善点はたくさんあるのでは?
では、この路線の改善する点を済ませた上で廃止に踏み切ったのか?というと全くそうは思えない。無論路線長の問題は改善が難しいが、少なくとも運賃と輸送効率の改善は全くされていないまま廃止を行っている点で問題とされる。
まず運賃だが、高速料金の安さを問題視する人が多い。これまで料金の段階的値上げを行った形跡は一度もないし、それに対する議論が表立ったかと言えばそうでもない。段階的値上げを行ったうえでの廃止は仕方がないと諦めるが、行った形跡もなく廃止というのは暴論すぎないか?少なくとも大人100円で子供50円の設定で様子を見た方が良かったのではとも思える。
次に輸送効率の改善になる。基幹バスとの関連になるが、現状でも基幹1号系統との混成運用がなされている。ただ、不十分な部分も多い。基幹2号系統は複数の営業所管轄で運用されているが、基幹1号系統は鳴尾単独というのも効率的な運用の阻害になっている。近辺の営業所の連携だけではなく栄系統ということもあるので浄心営業所との連携も考えても良かったのではと思う次第(浄心営業所自体が三重交通に委託した営業所なので連携が難しい部分もあるかもしれないが)。
また、栄付近の休憩施設への回送(那古野転回場への回送もしくは浄心営業所への休憩回送)や栄周辺の利用者(栄〜上前津〜鶴舞公園前〜東郊通3丁目)の補填路線の設定(仮に【栄28】栄〜上前津〜鶴舞公園前〜東郊通3丁目〜金山)によって高速1号系統との「混成」を行うことで、高速1号系統の本数を片運用に対応できるぐらいに「抑える」ことが出来るのではないか(出入庫は基幹1号系統を活用)。
(下↓)左京山バス停の栄行き「対案」改定後の「モデル」時刻表(一部手直し)
(下↓)栄バス停の森の里団地行き「対案」改定後の「モデル」時刻表(一部手直し)
(精度を高めるため、度々の手直しご了承ください)
この「時刻表」は少し甘めの設定になっている(土休日の「観光」利用者や昼以降の「出発」を前提とした森の里団地発を少し設定している点、「帰宅」を前提として栄発を少し早めの始発設定にしている点、朝夕の本数をやや多目にしてる点など)。注目すべきは左京山発の栄行き「終バス」の異様な早さと森の里団地行きの「始バス」の異様な遅さ。
現状では森の里団地発の終バスは20時台(土休日は19時台)、栄発の始バスは朝7時台と早い。それを栄発13時台始発(土休日は「観光」利用者考慮のため10時台設定)で森の里団地発の終バスは13時台(「土休日観光」利用者考慮のため14時台設定)。土休日に関しては「観光利用者」の扱い次第でバスの増減が変わるが、今回は特に片輸送傾向になりがちな平日の部分を「対案」として手直してみた。
削られた時間帯のうち、栄〜上前津〜鶴舞公園前〜東郊通3丁目区間は【栄28系統(仮)】で補完して毎時1〜2本を設定(朝の一部を御器所副担当)。東郊通3丁目より先は金山26号系統区間を増便する形で補完する案と高辻経由の案があるが、基幹バスはあるもののこの界隈の栄への一般バスの直通路線はほとんどないので、ある程度の利用は考えられる(出入庫は基幹1で対応)。
また、有松町口無池〜森の里団地間に緑区役所関連路線の設定を朝9時〜夕方5時に走らせて(森・口系統)、主に高速1号系統が走っている時間は重複するので避けるもの。
発表が遅すぎる?
それにしても、バス路線の存廃を決めるのに公表が遅すぎた件は批判に値する。鉄道同様バスにも運用があるため、その割り当てを決める作業とかあると思われるのだが、あまりに遅い発表ゆえに「廃止ありきの発表」では?と疑念すら感じる。おそらく、公表が早いと地元から反対意見が多数出るから遅くしたようにも捉えかねない。少なくとも値上げか廃止かの選択は与えるべきではなかったのか?その点は強く感じる。