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Best Metal Ballads - Part3 (00年代)

 「メタルバラードとは何か?」「今回のセレクションの視点」みたいなことは下記の序論にまとめてますので、未読の方はこちらをどうぞ。

 今回は、00年代の「ベスト・メタルバラード」10曲です。主に米国系バンドが牽引していたヘヴィネス&グルーヴ重視の「乾いた音」の流行がひと段落して、欧州を中心に、メロディックデスメタル、シンフォニックメタル、ゴシックメタルなど、メタルの持つドラマ性や叙情性にフォーカスした「湿り気を帯びた音」のバンドが台頭してきた時期。今回選んだ10曲も、メタルらしいドラマティックな展開や濃厚な泣きのフレーズが導入された、非常に「湿度の高いバラード」が揃っています。Evanescence のエイミーと、イングヴェイのマーク・ボールズ以外は、ハイトーンボーカルの圧倒的な音域・歌唱力で盛り上げるタイプではありませんが、その分情感豊かなボーカルの歌い回しやメロディラインの妙味(特に歌し出しのヴァースメロディから心を掴む楽曲が多い)を味わえる楽曲が多いかと思います。

Amorphis - Black River

物憂げで哀愁溢れる楽曲満載のAmorphis。名バラード多数と思いきや、静かに始まってヘヴィに展開していく楽曲が多く、メタルバラードの定義に当てはまる曲は意外と少ないんですよね。この曲は、陰影に富んだピアノの主旋律の訴求力が強烈で、そこから重厚なバンドアンサンブル&力強い歌に流れていくAmorphisらしいドラマティックなナンバーです。(”SILENT WATERS” 10曲目|2007年)

Avenged Sevenfold - I Won't See You Tonight (Part 1)

徹底的にギターが泣きまくる9分近い大曲バラード。厳かなピアノからスタートし、重厚なバンドサウンドへと展開。その後ピアノソロで一旦落ち着くものの、オーケストレーションが入ってからは再び盛り上がりを見せ、本曲のハイライトである絶唱パートへ。そこで終わらず曲は更なる展開を見せ、最後は哀愁のコーラスで幕を閉じるという何とも濃密なナンバー。(”WALKING THE FALLEN” 9曲目|2007年)

Evanescence - My Immoration (Band Version)

Evanescence を代表する名バラード。アルバムバージョンはピアノとヴァイオリンだけですが、ここでは後半メタルらしい盛り上がりを見せるバンドバージョンを。宇多田ヒカルを彷彿とさせる、少しハスキー成分を含んだ声が魅力的なエイミー・リー。声質自体が醸し出す哀愁感を上手く活かしながら、盛り上がる場面では圧倒的な声量で突き抜けていく、その情感豊かな歌唱が本当に素晴らしい。(”FALLEN” 4曲目|2003年 <Single>)

Opeth - Harvest

古典プログレッシブロックとデスメタルの融合を極めた”BLACKWATER PARK”収録のアコースティックバラード。一見ミカエルのセクシーな歌声を活かした切なく美しいバラードに聴こえますが、所々で表れる不穏なコード、奇妙な転調、やたら主張するベース、ブルージーかつジャジーなギターソロなど、メロディアスなのに細部に変な仕掛け満載という、Opethらしいプログレッシヴバラードに仕上がっています。(”BLACKWATER PARK” 3曲目|2001年)

Rammstein - Mutter

ティム・リンデルマンのセクシーなバリトンボイスの魅力が凝縮された名バラード。繊細なギターのアルペジオ、そしてクリーンなメロディのボーカルで始まり、コーラスではティムが低音で”Mutter, Mutter"と連呼する中、リヒャルト・クルスペのため息が出るくらい荘厳なギターフレーズが炸裂。歌詞は彼等らしくエグい内容ですが、曲は壮大で神秘的。(”MUTTER” 6曲目|2001年)

Sentenced - Guilt and Regret

悲哀を表現させたらメタル界随一のSentenced。「罪悪感と後悔」という曲名通りの絶望感に満ちたイントロのピアノから早くも心を鷲掴み。情感溢れる歌い回しから、重厚なバンドサウンドに展開していく前半だけでも十分ドラマ性が高いのに、後半、泣きのギターソロ~ブリッジ~アコギソロ~哀愁のツインギター炸裂と、更なる怒涛のメランコリックワールドが展開していく様は圧巻のひと言。(”THE COLD WHITE LIGHT” 9曲目|2002年)

Stratovarious - Mother Gaia

8分の大曲バラード。物悲しいピアノのイントロから、ティモ・コティペルトの繊細なボーカル、そして悲壮感溢れる壮大なサビへ。途中で挿入されるティモ・トルキのクリーントーンのフレーズが絶品。中盤オペラティックに展開してからの後半インストパートでは、ギターの強烈な泣きメロがゆったりと流れ、最後は壮大なキーボードのフレーズで締め括る展開。溜息が出るほど美しくドラマティック。(”INFINITE” 3曲目|2000年)

System of a Down - Lonely Day

「人生で最も孤独な日」と歌うメロディアスバラード。ギターのダロンがリードボーカルで、リードボーカルのサージはサブ。楽曲のテーマ通りの物悲しい曲ではあるんですが、他で紹介しているバラードとはコードの使い方が違うからか、悲壮感や絶望感はあまり感じられず、全体的にアンニュイな雰囲気が漂っていますね。フラメンコギターっぽい細かな速弾きが出てくるギターソロも特徴的。(”HYPNOTIZE” 11曲目|2005年)

Type O Negative - September Sun (Single Version)

最終作”DEAD AGAIN”収録曲(10分の大作)を4分半に再編集したシングルバージョン。穏やかなピアノと囁くような低音ボイスに心が洗われる感覚になるもののサビで雰囲気が一転。感情溢れるシャウトスタイルへと切り替わり一気に激情型バラードに。更に楽曲後半では、中期The Beatles的サイケとゴスが融合したかのようなポップで色彩感豊かな音世界が堪能出来ます。(”DEAD AGAIN” 4曲目|2008年)

Yngwie J Malmsteen’s Rising Force - Miracle of Life

名バラード多数のインギーですが、どうしても超人マーク・ボールズが歌うバラードを選びたく、全盛期ではない”WAR TO END ALL WARS”からこの曲を。イントロのアコギだけで彼の曲だと分かるクラシカルで情熱的なバラードマークのどこまでも伸びる澄んだ歌声が本当に素晴らしい。音質が悪かろうがメロディーメイカーとしてのインギーの天賦の才がよく分かる隠れた名曲。(”WAR TO END ALL WARS” 7曲目|2000年)


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