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母の日note:出産を1週間後に控える立場で考えるスタートアップ経営

こんにちは。EventHub代表の山本です。

本日(5/12)は母の日ですね。
いきなり私ごとの共有ですが、現在私は妊娠39週目、1週間後に母になる予定です👶

先日、自分が参加できる最後の会社総会で、これから徐々に休みに入ります、という改めてのアナウンスとともに、妊娠・出産準備をする上で会社経営を考える中で改めて見えたこと、少し視点が変わったからこその皆へのメッセージを共有しました。

嬉しいことに、その内容が「よかった」「共感した」とメンバーから言ってもらえたことと、今後弊社に入社してほしいメンバーへのメッセージにも通ずると思ったので、noteにまとめてみました。

一部、社内へのメッセージも含むため読みづらい部分もあるかもしれませんが、自分自身が妊婦として経営する中であまりにも同じ立場の人の情報発信が少ないことに悩みましたし、そういう人のためにもなると良いなぁ、と思い、書きます。ぜひご笑覧ください。

Happy mother's day!
母は偉大だ、という世の中のお母さんたちへの尊敬の念とともに。


自己紹介

まず背景を共有するために、簡単に自己紹介を。

日本国内のシェアNo.1のイベント・ウェビナーマーケティングプラットフォームEventHubを提供するスタートアップを経営しています。メンバー数はフルタイム業務委託やアルバイトも含めて50名程度、経営陣は自分と共同創業者・CTOの2名体制です。

自分の管轄は①プロダクトマネジメント ②営業(レベニュー)統括 ③管理部門(採用人事含む)、と、狭くはない。後でも記載するのですが、「現場に出たがり」「色々やりすぎ」傾向の代表であるという反省が、今回の出産準備では苦戦する、そして逆に成長できると思えるポイントとなりました。

おそらく、会社経営と一言でいっても、50名・500名・1000名の会社なのかによって見える景色や育休・産休のインパクトが違うと思います。本noteはこれぐらいの規模でSeries A/B前後のスタートアップの場合、という前提で読んでいただければと思いますが、フェーズに関係なく共通する部分も少なからずあるとは思います。

国は女性役員を増やしたいというけれど・・・産休育休取得の悩み

まず、妊娠して改めて衝撃を受けたのが、いかに女性経営者が(注:フリーランスも同じ)休みが取りづらいかということ。

本記事では労務の詳細は割愛しますが、先日拝読したこちらの記事らにわかりやすくまとめられています。(まだまだ女性 x 取締役 x産休育休 x かつ、スタートアップの発信は世の中に少ないですが、出会えると非常に勉強になるので、ありがたい限りです。)

要は、産休の手当は女性取締役も適用されますが、産んだ後の育休は雇用されている従業員という立場ではないため、取得ができない。

自分の場合産むまでは休まないつもりだったので、産休は取得していません。

産んだ後に休みを取りたいとおもったら、国から特に補助は出ないので、休みの間完全に無給にするか、働いていないのに会社から役員報酬を受け取る(減給も可)、の2択。このような状況で従業員の立場と同じく1年間育休を取るというのはしづらいな、と自分は思いました。

実際、自分の周りの数少ない女性経営者の友人・知人に「どれぐらいで復帰した?」と聞くと、

「2週間」「1ヶ月」「2ヶ月」というパワフルな数字が帰ってきます笑。一方で、この数字は世の中の多くの人からすると、ありえないぐらい短い、と思われるでしょう。

今回自分の場合は、3ヶ月ほど育休を取得する予定です。周りに周知する中で、(女性経営者以外からは)なぜもっと取らないの?と言われ、その都度背景事情として本件を説明していますが、意外とこの事実が世の中に知られていないということを痛感しました。

「そんなんじゃぁ役員になりたくないという女性もいそうだよね」と言われたこともありますが、自分も女性役員をもっと増やしたいのであれば、もっと手当があれば良いのに、と思います。

逆ロールモデルになってはならないという葛藤

妊娠報告をすると、「会社経営しながら妊娠・出産というイベントは女性従業員にとっても良いロールモデルだね!」と周りから嬉しい言葉をいただくこともあります。

私は、この「ロールモデル」って結構トリッキーだと思っており、自分のような働きすぎマンこそ「逆ロールモデルにならないように」という意識が意外と大事だと思っています。

これは自分が実際従業員の立場だった時に感じたこと。

新卒で入社したコンサルティング会社で、大出世されてバリバリ活躍されていた女性の先輩がいらっしゃったのですが、その方から「育児xキャリアの両立のコツ」として、「ベビーシッターやお手伝いさんの4-5名ぐらいのシフトを組んで、プロジェクトマネジメントして徹底的に外注すれば、全然両立できる!」と鼻息荒く説明された時に、「この会社ではそこまでしないと育児と両立できないのか・・・」と一瞬思ってしまった出来事がありました。

もちろんこれは結構昔の話ですし、たまたまその人の価値観がそうだっただけなので決して女性にとって働きづらい会社だったわけではありません。

ただ、改めて「ロールモデル」には多様なタイプが必要で、偏ったロールモデルが「そこまでしないといけないの・・・」と思わせるような行動だと、受け手にとっては逆効果であるというのを身をもって体感しました。

自分の場合産休はほぼ取らず、3ヶ月育休を取るわけですが、周りからは「短!タフだね」と言われますが、女性経営者たちからは「意外と取るね」と言われます。このギャップが結構全てを語っていると思っているし、特に従業員たちには「これはあくまで女性役員がこういう仕組みだから、こういう理由があって自分の場合はこうしている。決して皆にはおすすめしない、本来はもっともっと取るべき」と言っています。

実際、私よりも前に弊社で産休・育休を取得してる女性従業員たちは、1年以上取得しています。

男性にも絶対育休をとってほしい

今回、会社総会でメンバーに伝えたことは多くありますが、その中でも自分が最も感情を強く伝えたかった内容は、意外にも女性に対するメッセージではなく男性従業員に対するメッセージでした。※

それは、「まじでパパも育休とってくれ・・・」というもの。

今回、自分の夫も私と同じく3ヶ月育休を取得する予定です。これにはもう感謝しかない・・・というより、逆にここで「仕事も忙しいし育休取得しない・できない」と言われたら、

「こちとら会社代表してるのに生物学的に出産するのが自分だから休まないといけないんじゃごらああああああ(# ゚Д゚)」

と家庭内は大戦争になっていたでしょう・・・。

先日とある会食で、妊娠を伝えたら育休の話になり、同席してた役員男性の方がしっかり育休を取得されたということだったので「素晴らしいですね!」と伝えたら、

「知人から、2-3ヶ月の育休は、実は人生の社会人生活の期間の中でわずか0.5%でしかない。ただ、子供の最初の数ヶ月は一生もので二度ともどらないし、そこでいかに育児を共にしたかで人生・家庭が変わると言われて、すごいハッとして、取ることにしました」

・・・と言っていて、首がもげるほど共感しました。

男性が育休を取得すれば、女性が子供を産みやすい社会になる。

まだ女性の取得率と比べると大幅に低いものの、年々上がる男性育休取得率
(出典:令和4年度雇用均等基本調査; 認定NPO法人フローレンス

また、夫にしっかり育休を取らせてくれる夫の会社(注:大企業ではなくスタートアップです)に

「なんていい会社なんだ!長くここで働いてくれ!(´;ω;`)ブワッ」

・・・という感謝の気持ちが湧き出るのも実感したので笑 男性育休取得=家族の理解・感謝UP=きっと男性従業員のリテンションにも良いはず?

・・・ということで、男性もしっかり育休を取りましょう。
(実際、過去に弊社には半年ほど育休を取られた男性従業員もいます。)

※パートナーを男性である、という前提で書くことがPolitically incorrectだなと違和感を感じながら書いてますが、今回は伝えやすさ重視でそう記載しています。

「ご迷惑をおかけします」は絶対に言わない

もう一つ、会社総会であえて社内に伝えることにしたメッセージは

「今回、自分が休みを取ることで多くの仕事をみなさんにお渡しすることになります。そこには感謝の気持ちしかありません。

ただ、絶対ごめんなさい、とかご迷惑をおかけしますという言葉は使わないようにします。」

という内容でした。

正直、仕事を渡されて大変になる立場からしたらイラっとする発言だったかもしれません。

ただ、「ありがとう」はいいけれども、産休育休を取るために謝らないといけない、産休育休にまつわる引き継ぎを「迷惑だ」とラベリングされる会社で働くのって窮屈だと思う。

少なくとも自分はそういう会社では働きたくない。それであれば尚更自分がそのような言葉を使ってはいけない。

「すみません」「ご迷惑おかけします」ってついつい日本人であれば口癖的に出てしまう言葉だと思うので、何をそこまで敏感にならなくとも・・・と思うかもしれません。

「迷惑」は実際英語の辞書には同義語が存在しません。自分は幼少期から社会人までアメリカで育ったので、日本に来た時にいかに「すみません」「ご迷惑をおかけします」という風潮や口癖が蔓延してるか、を肌をもって感じました。今となっては長年日本にいて慣れすぎて、自分自身相当多用してると思います。

そんなパワフルな同調圧力ワードだからこそ、今回のケースでは使いたくない、という意地があります。

些細なことですしちょっと周りをむっとさせてしまうかもしれませんが、結構自分としては強くこだわりたいポイントでした。

上の言葉遣いも一つの例ですが、今回自分が妊娠(そして今後出産・育児)を経験することによって、育児と仕事を両立をする立場ゆえの後ろめたさや葛藤をより肌で感じれるになりました。今後も、ワーキング・ペアレンツが窮屈な想いをせず、仕事がしやすいカルチャー・環境・制度を作っていきたい。

代表の育休を会社と自分のステップアップ機会にするには

そんな「ごめんなさい」を言わずに行っている引き継ぎ作業ですが、今回3ヶ月休みをいただくために自分の業務を棚卸する中で、改めて代表として反省することが山ほどありました。

自分は2019年から本事業にフルタイムコミットしていますが(大前提毎日結構働いている部類に入ると思います)、過去4-5年間フルスロットルで働いてきており、3ヶ月の休みを取得するというのは一大事イベントです。

実際、自分は相当「現場に出てしまっている」タイプであり、例えば、

  • 自分が出席している、ファシリしてるMTGが多い

  • 要件書を書くなどプロダクトマネジメントの実務は自分オーナー

  • 事業計画策定や経営企画の実務は自分オーナー

  • 直属の部下が常時8-9名以上

  • 営業商談にも出る

・・・と、典型的な手を動かすのが・現場に出るのが好き病の代表です。

頭ではわかっていましたが、今回強制的に全部「剥がす」作業をすることによって、改めて痛感したこと、反省したこと、1-2年前の自分に言ってやりたい・・・と思うことが何個もあります。猛省・・・ 

自分のイニシアチブが、他人のイニシアチブを阻害していた

一つ最も猛省したことを上げるとしたら、自分が仕切ってる・ファシリしてる・拾ってるボールが多すぎるということ。

弊社には「イニシアチブをとろう」というバリューがあるのですが、皮肉にも自分がイニシアチブを取ると、周りのイニシアチブを阻害するんだな、と痛感しました。

例えば、今回自分がファシリしていたミーティングを全部別の人に任せ、自分は最後壁のハエになろう・・・と思った時に、自分が傍観者になってる気がして最初は違和感がありましたが、当たり前ですが他のメンバーの発言量やイニシアチブは増えました

(↑先日たまたま読んだCoral Capitalさんの記事にも、中心メンバーしゃべりすぎ問題+お喋り好きなリーダーの弊害に関して記載がありましたが、弊社にも共通するところがあったかもしれない。)

いかに自分がすぐ課題解決しようと思ってしまうか、自分の発言量が多かったか、をすごく反省した
し、案外自分が何もしないぐらいの方が、周りは動く、というのを頭ではわかっていたものの、肌で感じた瞬間でした。なんで本とかではそのような内容を読むのにいざ自分ごとになると身を持って体験しないとわからないのだろう・・・涙

意思決定の「可逆性」とスピード

よく、自分は意思決定をする時に「それは可逆なのか? 不可逆なのか?」を意識するようにします。

自分が知る限りこれはジェフ・ベゾスが提唱していることで有名なもので、

・可逆 (two-way door decisions) = ほとんどの事業の意思決定はこっち。判断力の高い個人や少人数グループが迅速に行うべき
・不可逆 (one-way door decisions) = 慎重かつ綿密に熟考と協議をする必要がある

意思決定は上記の性質を判断して行うべき、というものです。

下記のインタビューでも言及されてますが、上記を使い分けないまま「意思決定の仕組み」を捉えてしまう会社が多く、結果として不可逆の慎重さにあわせて全体的な意思決定のスピードを遅めてしまっていることがある、とのこと。

確かに、事業を進める上で、資本政策、資金調達、法務、人事評価・報酬決定、などの不可逆(一回決めたら巻き戻しづらい)な意思決定は、軌道修正をする時のコストが膨大であるため、慎重に意思決定をした方が長期目線で効率的なことが多い。

一方で、可逆な意思決定は、「これは60%概ねこっちで良いだろう」と思えたら、個人やチームが即意思決定をして行動に映しながら軌道修正した方が良い

今回の会社総会で、バリュー=「経営者が不在の時に一人一人がどう振る舞うか」であるため、改めてバリューを再認識し行動して欲しい。そして新たなバリューとまでは行かないが、自分の不在期間、可逆な意思決定であれば「今ここで決めよう」が議論の場で口癖になって欲しい、という話をしました。

最終意思決定者がいないからこそ可逆な意思決定はどんどん進めて欲しい

代表がいなくなるということはある意味「最終意思決定者」がいなくなるということ。それで意思決定のスピードが遅くなるのではなく、意思決定の「可逆性」さえ正しく判断し、「今ここで決める」が浸透すれば、逆に自分がいない状態の方が意思決定が速くなる・・・なんてこともありえるのではないか。もしそうなったら今までの自分の行動を猛省する他ないですが、個人的に楽しみにしてる一つでもあります。

不在期間がカオスになるか、会社のパワーアップの期間になるか

これから育休に入るんです、とお伝えすると、(数少ないですが)同じような経験をされた女性経営者の話を直接的・間接的に伺うことがあります。多かれ少なかれ、大変だった、とか少々組織がカオスに陥った、というお話を伺います。途中で予定より早く戻る意思決定をした、という声も。

そのようなお話を伺う中で、もちろん怖さは相当あります。

一方で自分は正直そんなできた人間ではないし、自分が現場に出る+色々やりすぎる代表だったという自負を考えると、これはもう神様に「もういい、もっと剥がせ・振れ」、「周りに優秀なメンバーがいるんだからどんとまかせろ」と言われてるんだなと思うようにしています(笑)。

自分がいなくなったからこそ「意思決定が速くなった」、「皆の自主性・イニシアチブが高まった」・・・戻ってきた時にこのような声を聞けることが(自分の過去の行動をとっても猛省する耳が痛い内容にはなるけれども)この上なく嬉しい、と思いながら、ひっそりとこれからおやすみに入ります。

最後に

妊娠が発覚してから今日に至るまで、色々育休取得や準備に関して調べてきましたが、同じような立場(女性経営者)の方が少なく、情報収集に悩んだことが多々ありました。出産後もおそらくそうなるでしょう。

自分自身、周りの方に相談する中で得られた情報も多かったので、それをどんどん還元していきたいと思っています。同じような立場にいらっしゃる方で同じように悩まれていたり、情報交換したい、という方がいらっしゃたら、ぜひDMもらえると嬉しいです!

業務のご連絡

出産まであと1週間のため、今週から稼働を減らし、8月末まで育休をいただく予定です。

ここから3ヶ月間、ご連絡をいただいても返信ができないか・相当遅くなる期間があるかと思いますが、取引先・関係者の方々は、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

よく、日頃から「EventHubのサービスに関して問い合わせしたい!」等、ありがたく自分に対してDMやメールをいただくことが多いです。自分が休みに入るということでそのようなご連絡を控えられると事業と皆にとっては全く良くないのでどうにか!遠慮なくinfo@eventhub.jp またはウェブのお問い合わせフォームまでご連絡いただければと思います!

それでは、また出産後に会いましょう! 👋


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