年末調整素人の労務担当がはじめての実務を乗り越えた話
1月も中旬になり、やっと年末調整業務を一巡できましたので、年末調整で自分が経験した流れを書きます。
1年後、実務の流れや何を考えて手を動かしたか覚えている自信がないので、未来の自分へのメモも兼ねたnoteでもありますが、
今後年末調整を担当することになるバックオフィスの方の参考になると嬉しいです。
経緯
年末調整。社会人になって働き始めてから毎年申請してるけど、何をやっているかは分からない。
そんな状態からのスタートでした。
年末調整を担当する部門は会社によって異なります。だいたい財務・経理・総務・労務あたりでしょうか。だから、8月に今の職場に転職して3ヶ月後、急に年末調整の実務を1人で任されることになったときは正直凍りつきました。「これはまずいぞ」と。
なにせ自分自身、今までの社会人生活の中で毎年何も考えずに言われるがまま申告していたし、社労士の勉強範囲に1ミリもかすっていない。まさに知識ゼロ、経験ゼロ。
「はい、やってみます!」
と、とりあえず大きな声だけ出してみたものの内心はパニック状態でした。
年末調整は期限がキッチリ固まっているし、従業員みんなの大切なお金に関わるもの。間違えたら大変なことになる。プレッシャーでキュゥ、と内臓が締め付けられる思いでした。
でも、私の気持ちに関係なく期日は迫ってくるわけです。粛々と、でも心の中ではアワアワしながら手続きを進めていきました。
年末調整の実務の大まかな流れをまとめると以下のようなイメージです。
1)前年の状況をヒアリング(11月初旬)
いわゆる引き継ぎです。
前任の先輩があらかじめTODOをまとめてくださり、基本はその通りの流れで行うはずだったのですが、昨年と今年で使うツールの仕様が変わっていたり認識が曖昧でやりきれていない部分があることが発覚したので自分で調べて補填する必要もありました。また、細かい計算部分は顧問税理士の先生に毎年委託していたのでこの機にはじめてご挨拶させていただきました。
2)基礎知識&ツールマニュアルのインプット(11月初旬〜11月中旬)
まずここから始めないと何もできない、ということでまずは初心者向けの税金関連の書籍を読みました。年末調整の内容に特化した本はなかなかないので、税金の初歩的な知識が網羅されている本の中で年末調整についてなるべく易しく記載されている本を選びました。
今回選んだのは『図解 わかる税金 2022-2023年版』です。
また、使用するツールの年末調整機能のマニュアルもざっくり一読しました。当社では今回SmartHR・マネーフォワード年末調整・マネーフォワード給与を連携させて実務を行ったのですが、それぞれの工程ごとにどのツールで何をするのかを頭の中で組み立てて理解する必要があり結構苦労しました。でも、各社様すごく細かくマニュアルを用意してくださっているので相当ありがたかったです。
ちなみにここまでインプットした時点で初めて知ったのですが、毎月給与から控除されている源泉所得税は厳密な金額ではないのだそう。まずは大まかな金額で徴収しておき、年末調整で実際の1年分の給与の合計額と考慮すべき事情(たとえば扶養家族がいる、生命保険に入っている、住宅ローンを払っている等)を勘案し過不足を調整する、というのが年末調整の仕組みなのだそうです。
社会人歴10年以上だけど全然知らなかった。言われるがままにデータ入れて申告していただけだった…
3)TODOの洗い出し・スケジュールの決定(11月初旬)
顧問税理士に最終的な申請データ提出のデッドラインを確認し、この時点を基準としていつまでに何を終わらせるのかを逆算してスケジュールを立てました。ちなみに今回のデッドラインは12月10日前後でした。当社の給与支払いは当月末締め当月払いなので、このタイミングまでに全従業員の申告が終わっている状態で且つ給与計算を終わらせる必要がありました。
個人的な経験や昨年の状況をもとに推測すると、この12/10ギリギリに従業員向け提出期日を設定してしまうとほぼ必ず間に合わない者が出てきてしまう恐れがあるので、11月末までに申告期日を設定しバッファをもたせました。案の定11月末時点では数名間に合っていませんでしたが、デッドラインのタイミングでは全員の申請がクリアになっている状態にできました。
4)従業員への周知・申告内容の入力と書類提出依頼(11月中旬~下旬)
ここが一番の山場。
まず、従業員に必要な書類(生命保険証明書やidecoの証明書、源泉徴収票など)を集めておいてもらう必要があったので、スケジュールが決まり次第速やかに全社に共有し、必要書類の確保をお願いしておきました。
並行して、まずは実務担当者である私がツールの使い方や申告方法を理解している必要があったので、マニュアルを読みながら自分で申告を進め、さらに想定される質問を自分の中で解消した状態にしておきました。
また、行った申告をもとに従業員向けの手順書を作成し、従業員側も実務側も準備が整ったタイミングで申告依頼を周知しました。
この期間にポツポツと従業員から年末調整に関わる質問が個別に飛んできます。この質問と回答をFAQにまとめて社内に展開し、同じことで困っている人がいないように対策しました。
また、忙しいことなどを理由になかなか提出ができない従業員も一定数います。その場合は後から自身で確定申告することもできるので「期日を過ぎたら問答無用で受け付けない」という対応もできなくはありませんでした。
しかし、年末調整と同じ手続きを個人が確定申告で行うのは想像以上に手間が生じるとのこと。
手続きを行わないことで損をするのは従業員本人なので、できるだけ申請させてあげたい…という想いがあり、おせっかいながらも結構しつこくリマインドしていました。
しかし、それでもなかなか着手できない人や忘れてしまう人もいます。そこで、期日のリマインドだけにとどまらず会社側から積極的に申告する時間を提供するのが良い、という話になりました。
そこで、申告期日直前のオンライン全社会議の際に30分ほど時間を追加でもらい「年末調整大会」を行いました。
年末調整大会では、申告を行っていない人を対象に事前に配布した手順書を口頭で説明し、ツールを一緒に触りながら申告してもらう。質問があればその場で受け付ける。ということを行いました。
年末調整大会は私のオリジナルではなく、前任者の方からの受け売り施策でした。前年参加している人はほとんど先に申告を済ませていたため、今年実際に参加した従業員は全社の1/3程度でしたが
「自分でなかなか時間を作れないので助かった」
「直接やり方を教えてもらいながら申告できて楽だった」
とお声をいただけたので嬉しかったです。
結果として、デッドライン時点で従業員全体の98%の申告が終わっている状態にできました。
あとの2%はどうしても提出書類を用意できない人や、自分で確定申告するので省略しますと申し出た人たちでした。
5)給与計算・支払い(12月初旬)
普段の給与計算とは異なり、12月分の給与には「年調過不足税額」という項目が給与明細に追加されます。要は年末調整した結果還付される(一部は追加徴収される)お金です。
当社の給与支払は当月締め当月払いのため、金額のデータを取り入れるためにはいつもより早く給与計算を終わらせ、顧問税理士に報告した上で年調過不足税額を確定し、さらに給与データと連携させるという処理がありました。調べながらハラハラしながら作業をしている上に、いつもより期日がタイトでちょっとしんどかった記憶があります。
6)源泉徴収票の配布(12月下旬)
給与支払日に合わせ、Webツール上で源泉徴収票を各従業員に配布しました。実はこの日は朝から会社の忘年会BBQで若干浮かれていたのですが、これだけは忘れてはならぬとシラフのまま1次会で帰って黙々と配布作業を行いました。ツールの仕様で予約機能がなかったのです。仕方なし。
7)書類の保管 12月下旬~1月中旬
保険料控除証明書などの書類は原本で7年保管しなければならないと顧問税理士から助言をいただいたため、申告そのものはWebツール上で完結するものの、各種提出書類の回収と保管はローカルで行う必要がありました。
従業員から提出された各種控除証明書と、顧問税理士が行ってくれた法定調書の申告の控えを社内で保管します。これで一段落。
8)業務マニュアル作成 1月中旬~下旬
前年までのマニュアルが存在せず、また年1回の業務なので次回実施時に困らないように作成します。並行して従業員向けQ&A集も更新。
この記事を書いているのが1月中旬で既に内容を忘れかけているので、早めに着手しないとかなりまずい・・・というのが今の状況です。
年末調整は反復して行う作業があまりないので、本来は実務を進めながらリアルタイムで業務手順を残しておくのがベター。私もメモ書き程度は残せたのですが、きっちりマニュアルに落とし込む余裕はさすがになかった。これから記憶を掘り起こします。note書く前にマニュアル作りなさいよ…というツッコミはさておき。
おわりに
改めて振り返ると年末調整って業務工程が多くて、かつ社内従業員全体で乗り越えなければならない1つのプロジェクトでした。
初めて担当することが決まったときは相当プレッシャーが強かったですが、上長や前任者の先輩、税理士の先生に手厚くサポートいただき、労務関連の座学だけでは身につけることができない領域を経験できたこと、少し税金の知識を得ることができたのですごく良い機会でした。
次は確定申告のタイミングで税金絡みの問い合わせが従業員から届く可能性があるので、スラッと答えられるように予習しておかなければ。
ご覧いただきありがとうございました。
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