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せわしさもよき四月最終日の朝

あっという間にひと月が終わってしまう。

空へと伸びる枝先に新芽が、道端や庭先に花が、歩いていると目につくようになってきた。
我が家の朝晩は、まだ暖房オンである。
それでも記録的なまでに積み上げられていた大雪は、上がる気温に追い立てられるようになくなって、芽吹きが顔を出し、風景に彩りを増やしてすっかり春だ。

先月職場を去った彼女から、郵送で菓子折りが届いた。理由を知らないスタッフも多いから、添えられた手紙は簡潔な挨拶のみだった。ただ、差出人の住所が「あの町」のものだったから、無事に引越しは済んだのだろう、と思いを巡らせた。ロッカーに一ヶ月半も入ったままだった例の紅茶を、ようやく決心して持ち帰ってきた。

四月の風は、新しい風を運ぶ。
そう思いながら、気づくともう最終日。
日々のアレコレに追われながら時は足早に過ぎてゆく。

そんな中でも、雪解けのあと春の訪れを一番に知らせてくれる小さいながらも存在感のあるクロッカス。今年も変わらず咲き始めていたのを見逃すことなく写真におさめていた。

真ん中にひとつだけ白色の花が自己主張していて、思い浮かんだ詩を書いて投稿したり、その素材を歌へと昇華できないかなと考えたり。
季節の移ろいや身体だけではなく思考もなかなかせわしい春。でも、それが楽しい。

昨日は父のところへ行ってきたのだけれど、その道中、たくさんの鯉のぼりを見かけた。もうそんな時期なのかと思いながらハンドルを握っていると、河をまたぐようにロープを張って泳いでいたり、クレーン車のてっぺんから地面を底辺にして三角に二本のロープが伸ばされていてそこに何匹も泳いでいたり。
「わあ、すごい」とチラ見しつつも、運転中なので緊張感は途切れず、ゆっくり見ることも写真に残すこともできなくて、ああ私の日常はこんな感じ。まるで運転中のようなのだ、と感じたりした。
たちどまれない時間とたちどまるべき瞬間のバランスを考えながらハンドルを握る。
やっぱり思考は忙しい。

今年は桜前線も急いていてGWを待たずにやってきた。
今年も娘からいち早くLINEで写真が届いた。
いつも同じ市内でも時差があるけれど、我が家付近の通勤経路にも、ちらほらと見かけるピンク色。ここは停車する時間がほしいところ。GWの連休はないけれど、散る前に近くの桜並木までお散歩くらいは行きたい。

娘からの写真は青空だけど強風だったそう



父が、諦めたのか受け入れたのか、それでも一歩、堂々巡りのなかから抜け出した。こんなにやるべき手続きがあるのかと辟易しそうになりながらも、心は少し軽くなっている。
この春は父と随分いろんなことを話した。これからのことはもちろん、私がまだ子どもの頃、父が今の私より若かった頃の想いとか。ほとんど家に居なくて仕事人間だと思っていたけれど、そのがむしゃらに働いていた時期に何を考えて、どんな気持ちでいたかとか、思いもよらないことを知ることができたのは大きな出来事。私と父ではなくて、第三者が入ることで得られたことでもある。私も医療者のはしくれとして、ご家族とそんな関わりができるといいなと感じた。

四月は新しい風を運ぶ。
せわしさの中で、季節も、職場環境も、親との関係も、そしてやりたいことも、確実に前へと進んだ。これでいい、と思えることが多かった。
だから今しばらくは、せわしくても平気。体が疲れても日々充実感があるのは、心は桜や足元の花たちのように、温かくなってゆく風を受けとめて咲く準備をしているところだから。夏は苦手だけれど、それも上手に越えるための蓄えだと思って、今日もとりあえず笑顔をつくろう。
皆様もよい季節を。


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