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えんぴつのたろう
たろうって、いつの時代設定なん?
自分で自分をツッコんでいる。
先日 帰省して、断捨離のため部屋の中をひっくり返していた長女の話。
「ちょっと面白そうなの出てきた」と持ってきたのは原稿用紙を束ねた冊子。
片付けていたクローゼットの奥深くから掘り出してきたらしい。
表紙には
『えんぴつのたろう』とある。
そして、顔のついた鉛筆の絵。
小学生のときに書いた物語のようだ。
長女はリビングのソファーに腰掛け、読み聞かせを始める。なんだかワクワクする。
えんぴつの「たろう」は、毎日削られて、持ち主のヒロシには乱暴に扱われて、不満を抱えていた。もうイヤだ、と ある日ヒロシのもとから飛び出す。
「ヒロシって誰。なんでヒロシ?」
読みながらも、その都度 自分でツッコミを入れている娘。
その時お気に入りの男子だったかもしれないし、ちびまる子ちゃんの父かもしれない。勝手に想像する母。いや、そこどうでもいい。
娘よ。ツッコミはいいから読み進めてほしい。母は興味津々で耳をかたむけているのだから。
飛び出した たろうは、ちょっとした冒険をする。
アチラコチラ冒険したのち、たろうは疲れて道端にいるところを拾われる。
あれ、これ僕のえんぴつだ。と拾ったのはヒロシだった。
汚れていたので可哀想に思ったヒロシは、えんぴつのたろうを洗う。たろうは気持ちがいい。
「たろう、えんぴつなのに なんでやねん」
またもやツッコミの長女。ツッコミすぎて関西弁になっている。
いいからいいから。と、母。
物語は奇想天外も面白いのだから。
どうやら、たろうは洗われるのがとても気に入ったようである。そうしてヒロシと心を通わせる。
ヒロシはたろうを大切にして、使えなくなるほど短くなっても捨てずに机の引き出しに仕舞っておく。そして、時にはたろうを出してやり 洗ってキレイにしておくのだ。
「まだ洗うんかいっ」
最後の娘のツッコミである。
いや、使えなくなるほど短くなった鉛筆を捨てられずに、机の引き出しにたくさんしまっていたのはキミだ。実体験も含まれているのでは、と思う母。
いつまでも仲良く。で、おしまいとなる。
「変なの。ま、こどもの書くことだし。」
長女は、他人事のように笑っている。
いやいや、最後ほんの少しジーンとしたよ。いやそれは言い過ぎだけど。ヒロシの元へ戻ってよかった。そしてヒロシはものの大切さを知ったんだね。
親ばかなもんで、寛大な解釈をする母。
「小学生が そこまで考えて書いてないって」
冷静な娘。
だからいいのかもしれない。
ピュアな発想。
こどもが書いたものは面白い。
授業で書いたもののようだから、クラスの全員が書いたのだろう。それぞれの物語を。
皆、クリエイターということだ。
こどもって可能性の宝庫。
そして誰もがこどもだった。其れゆえ、我々は皆クリエイターなのだと。
そんなことを改めて思う。
娘の部屋には他にも埋もれている作文があるようで、すっかり忘れてしまっているからこそ、読み返すと面白い。次に発掘されるのは、どんな話だろう。
いや、まずもう一度 『えんぴつのたろう』をツッコミなしで読みたい。
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