水星の使い方〜「盗み」と「嘘」は悪である〜
この本を読んで、「悪」とは何か、考えさせられました。
この本の中では、「盗み」と「嘘」が悪とされているようです。
確かに「盗み」も「嘘」も悪だとは思うものの、他にも悪と言えるものはありそうで、悪とはこれである、と定義するのは実はけっこう難しいことなのかもしれません。
さて、この本が悪とするところの「盗み」と「嘘」。主人公はこれを連ねるように生きるのですが、そのやり口が法を犯さないギリギリのところを攻めていたり、いつでも被害者として憐れみを買えるようなストーリーが随所に織り込まれていたりして、事実だけ見れば、確かに周りを欺き盗みを働いた悪女だと思うものの、はてさて、それが意図したものだったのか、結果そうなっただけなのか…。悪女に魅了され「彼女は清廉潔白なはず…いやでも本当の顔はどちらなのだろう?」と心揺れる取り巻きの人々と同じように、私も、悪女の真相、真実の顔、内心や本音が気になって仕方がない。まさしく悪女の思う壺!!というより、有吉佐和子の思う壺!でした。
というわけで、最初の話に戻るのですが、悪を「盗み」と「嘘」とするならば、実はこの両方を得意とするのがギリシャ神話のヘルメス。占星術でいうところの水星なのですよね。
水星は知性、情報、流通、コミュニケーションを司る天体です。この水星をうまく使うことで、日々のタスクを要領よくこなすことができたり、仕事上の成果を上げたりすることができるので、水星に対して、悪いイメージを抱いている人はあまりいないのではないかと思うのですが、実は水星の知性というのは、計算高さであり、いかに労力をかけずに欲しいものを手にするかを考えるような、ずる賢さでもあります。
ヘルメスといえば、生まれて間もないうちにアポロンが飼っていた牛を盗んで、その牛の皮で竪琴を作ったという神話が有名ですね。アポロンはそれを知って激怒したものの、ヘルメスの作った竪琴があまりにも見事だったため、牛と竪琴を交換することでヘルメスを許しました。
ヘルメスは「盗み」と「嘘」を働いて牛という資産を手にするのですが、相手にとってより魅力的なもの(竪琴)を交渉材料に使い、巧みな話術で、相手を納得・満足させてしまいます。
ヘルメスって…ちょっとずるいな、怖いな、なんか騙されそう…という感じがしませんか?水星の知恵というのは、こんな調子で、ちょっとどこか悪知恵のような側面があるんですね。
水星は悪い使い方をしてしまうと、私たちがヘルメスに抱くような「ちょっとずるくない?」という感覚を周囲の人たちに感じさせてしまうことがあります。とりあえずその場を凌ごうとか、簡単に利益を上げたいという気持ちが見え透いてしまうのです。
水星に対してハードアスペクトがある方や、時期的に水星にハードアスペクトができているタイミングでは、行きすぎた効率重視・自己の利益重視、手抜きやちょっとした嘘などにはよく気をつけましょう。水星の持つネガティブな面が強く刺激されて、周囲の人たちの信用を低下させることがあります。