おじいちゃんのお醤油おにぎりのお話
千葉県にある祖父母の家
私は9歳の夏まで、東京の東の端っこに住んでいました。
父方の祖父母の家は、千葉県の成田空港の先にありました。
子供の頃の長期休みにはおじいちゃんが車で2時間ほどかけてうちに迎えに来て、妹と2人で祖父母の家にお泊まりに行くのが、物心ついた時からの恒例行事でした。
おじいちゃんの車はマニュアルの軽自動車ワンボックスで、おじいちゃんしか知らないような農道の下道をいつも走っていました。
車酔いしやすかった私は、気持ち悪いと言ってよく途中の道端で吐いていました。
それでも私はおじいちゃんとおばあちゃんが大好きだったので、いつも家に泊まりに行くのをとても楽しみにしていました。
勉強しなさいって言われない
家にいるといつも母に勉強しなさい、公文やりなさいと怒られていたので、私はずっと遊んでいられる優しい祖父母の家が大好きでした。
祖父母の家から帰宅した日の夜は、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたいといつもベッドでこっそり泣いていたものです。
祖父母は兼業農家で、おいしいお米と野菜を作っていました。
おじいちゃんは植木職人を定年退職、おばあちゃんは油揚げ工場に勤務。
なので平日は、おじいちゃんがいつもどこかへ遊びに連れて行ってくれました。
たいてい行くのは車で10分ほどの大きな公園で、自転車を車に積んでいきました。おじいちゃんは私と妹が自転車やアスレチックで何時間も遊んでいても、嫌な顔ひとつせず付き合ってくれました。
そして夕方におばあちゃんが働く工場までお迎えに行って、みんなで帰る毎日でした。
禁断のお醤油ご飯
いつもはおばあちゃんがお昼ごはん用におかずを作っておいてくれるのですが、ある日おじいちゃんが「今日はおにぎりを作って持っていこう」と言いました。
おじいちゃんはまったく料理ができません。
どんなおにぎりを作るんだろう?と見ていると、おじいちゃんはお茶碗によそったごはんにお醤油をまわしかけました。
それをよく混ぜて、ラップで包んで三角に握って、海苔も何も巻かずにできあがり。
たったそれだけ。
当時6歳くらいだった私は、ごはんにお醤油をかけるのを初めて見てびっくりしました。
でも、食べてみたらとってもおいしい!
具も何も入っていないのにおいしい。
こんな食べ方あったんだ。
家に帰って母にお醤油おにぎりが食べたい、おじいちゃんが作ってくれたの。と話したら、母は「お行儀悪い!」と怒って作ってくれることはありませんでした。
そういうわけで、お醤油をごはんにかけることはおいしいけどどうやらいけないことらしい、と知った子供時代の私でした。
でも今思えば、焼きおにぎりの焼いてないバージョンみたいなもんですね?
ちなみに祖父母は今も健在で、今年で90歳になります。
おじいちゃんとうちの飼い犬ちょこの、お気に入りの写真