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対話の重要性 映画『プリズン・サークル』

映画『プリズン・サークル』を観た。
2年にわたり刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」の受刑者たちを追ったドキュメンタリー。全国で唯一、受刑者同士の対話で更生を目指す「TC」と呼ばれるプログラムを採用している。TCとはTherapeutic Community(回復/治療共同体)で、TCを受講者した人の再入率はそれ以外の約半分。更生効果が高いとされている。米国アリゾナ州には世界的に有名なTCである「アミティ」という非営利組織がある。本映画の監督は撮影前に実際にその場に足を運び、TCとは何かについて体験したそうだ。

4人の若い受刑者が、対話を通じて自分の過去と向き合い、どうしたら未来を紡いでいけるかをそれぞれが考える。その場面がとても多い。そして4人の過去に共通しているのは「寂しさ」。親から愛されなかった、友達からいじめられていた、いつもひとりだった。また彼らには「自分を全部吐き出せる場所」がなかった。対話でそれが初めて出来たという受刑者もいた。


「加害者は、加害者になる前に被害者だった」
人を傷つけることはダメだ。ダメだから、刑務所に入っている。ただ、受刑者の中には自分の幼少時の過去によって、その影響によって犯罪を犯してしまった人もいることは、心に留めておきたい。

過去と向き合うことは、とても辛いことでもある。私自身、父親から酷い暴力を受け愛情を感じることができなかった。私も20代の頃に何かの拍子に人を傷つけたり、何かを盗んだりして少年院や刑務所に行っていたかもしれない。ただそれは起こらなかった。理由は、母親が私をずっと見守ってくれていたからだと改めて思う。


この作品では受刑者同士の対話に焦点が当てられている。
対話。
最近、皆さんは時間をとってゆっくり対話をしただろうか?
対話したとしたら、誰とどんなことだろう?

先日、東京大学の梶谷真司先生の哲学対話に参加する機会を頂いた。「哲学対話」というと難しいように聞こえるが、誰でもできる。その際のテーマは「なぜ教育はうまくいかないのか?」。15人ほどが円になって、自分の経験に即した想い、考えを話していく。2時間があっという間だった。哲学対話についてまた別の機会に書こうと思う。

日々忙しい時間を過ごしていると、誰かと対話する時間、自分の内なる心と対話する時間というのは取りにくい。

ただ、対話は受刑者や何かに依存している人だけに必要なものではない。
変化のスピードの速い社会でこそ、時間を確保して対話することで自分を省みる機会となり、他者を思いやれる余裕ができる。対話後にモヤモヤが残ること、素晴らしいじゃないか。


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