7歳のエリザベス
何も気にしないでいられた小さい頃に戻りたいな、と思う事が時々ない?
思った事をすぐ全身で表現して、ずーっと話していても、うんうん、と聞いてくれる相手がいて、興味の対象がコロコロ変わって。
様々な移民がうごめくここシドニーでは、アジア人の子どもはより静かでおとなしくて両親の言うことを「YES」と良く聞いて、西洋人の子どもはもっと活発で、両親の言った事に対して「NO」と言うように育てられる気がする。
私はアジア人にも関わらず、色んな大人に向かってNO!と言い放って、野山をかけずり回って秘密基地を作っているような女の子だったけど...笑
毎週火曜日にフルートを教えている7歳の女の子がいる。
彼女の名前はエリザベス。両親とも西洋人の英語がネイティブ、バレエに水泳に..と習い事もたくさんしている、小さくて元気な女の子だ。
おしゃべりが大好きで、ちっとも私の話なんか聞いてやしない。
30分イスに座っていたことなんてなくて、ちょっと目を離して振り返ると逆立ちしていたりして、こっちがびっくり仰天する。
でも、ちょっとどこか似てるのだ。肌の色も目の色も違うけど、小さい頃の私に。
ある日彼女に「先生はどこの出身なの?」と聞かれたので、ジャパンだよ、と答えると、「わぁ!わたしジャパニーズフード、だぁーいすき!」と目と輝かせるエリザベス。
だぁーーーい、と言いながら両手いっぱい広げてみせてくれる。
何が好きなの?味噌汁?枝豆?照り焼きチキン?それとも寿司?刺身?
と聞いたら、彼女は手に持っているフルートをほっぽりだしてひっくり返ってしまった。
フルートも乱暴にほっぽりだすもんじゃないし、彼女に何かおきたのかと思って慌てたけど、エリザベスはピンピンしていて、
「全部すきー...あなたのせいでお腹が減っちゃったじゃない!」と、何故かぷんぷん怒っていた。
なんで私が怒られてるんだ?先生どっちだっけ?変なの〜。
フルートを教えるのは初めてだった。英語で教えるのも初めて。小さい子は私の英語の発音に容赦ない。
でも、おしゃべりしている時間も含めてとっても楽しいのだ。小さい頃の自分にフルートを教えているようで、何か、救われる気がするのはどうしてだろう。
教えているつもりで、教えてもらっていることってよくある。
彼女とフルートを吹きながら、こんな風だった小さい頃に戻りたいな、と思う一方で、でも小さい頃の自分に出会えるような、今の年齢の自分も結構良いよね、とも思うんだから。