「文章を書く人」の憧れのまほうつかい・さくらももこ
漫画家・作家のさくらももこさんが2018年8月15日にご逝去し、ちょうど3年が経ちました。代表作『ちびまる子ちゃん』は今年原作35周年を迎え、今もなおその作品は愛され続けています。
そんな彼女の作品で個人的に思い入れがあるのが、1998年に発売された書籍『憧れのまほうつかい』。大切な人の死を知ったとき、自分のなすべきことは何か。悲しみを受け止めた先にある、切なくも温かな気持ちをくれるエッセイです。
『憧れのまほうつかい』あらすじ
高校二年生の冬、さくらさんは本屋でエロール・ル・カインというイギリス人絵本作家の作品に出会います。繊細で力強く、高い完成度を誇る彼の作風にひと目で恋してしまったさくらさん。絵本の収集だけでは飽き足らず、「ル・カインの弟子になりたい」とまで思いを募らせますが、当時の彼女は静岡の田舎娘。そんな度胸はあるわけもなく、ましてや英語も話せません。
地道な投稿活動の甲斐あって無事漫画家になることができましたが、「いつか仕事を通じてル・カインに会えたらいいな〜」と思いながらも、漫画家の仕事に忙殺されつつ日々は過ぎていったそうです。
本屋でル・カインの死を知ったのは、そんなある日のこと。「憧れのあの人は、もうこの世にいない」。悲しみに打ちひしがれながら彼女が悟った使命は、ル・カインの作品がこのまま埋もれてしまわないように、多くの人にその素晴らしさを伝えることでした。
そして、ついにル・カインの思い出を訪ねて、イギリスへと足を踏み入れます。
編集者になるきっかけをくれた人
私がさくらももこさんのエッセイに初めて出会ったのは小学生の頃。本屋で『さるのこしかけ』を買ってもらったことがきっかけでした。『ちびまる子ちゃん』のコミックスは全巻持っていましたが、エッセイを書いていたことはそのとき初めて知りました。
漫画のようにサクサク読めて、挿絵が無いのに情景が想像できて、思わず声を出して笑ってしまう。「文章っておもしろい」。すっかり魅了された私は、彼女のマネをしてエッセイや脚本(もどき)をノートに書きながら、「いつか文章を書く仕事に就きたい」と夢見るようになりました。
そして、それから十数年後、私は編集者になりました。
といっても主に観光ガイドブックをつくる仕事で、大手出版社とは何の縁もありません。それでも、いつか仕事をご一緒できる日を夢見ながら、毎日奮闘していました。
さくらさんの訃報を知ったときの心境は、エロール・ル・カインの死を知ったときの彼女の心境と全く一緒だったのではないかと思います。
「いつか会える」の「いつか」はもう二度とやってこない。それでも、自分に何かできることがあるなら何でもしたい。
そう思いながら3年の月日が流れてしまいましたが、これを機に、自分の想いを形にしたくて、noteを始めました。今さら私が説明しなくても彼女の作品の素晴らしさは多くの人が知っていることでしょうが、ファン目線で、そしてさくらももこDNAを(勝手に)受け継ぐ文筆業者として、つらつらと思うところを書いていけたらよいなと思います。
ちなみに、トップの写真は私が送ったおたよりが採用されたときにもらったサイン入りイラスト。
最後に、さくらももこさんへ。
あなたに出会えたから、今の仕事に就くことができました。少しでも世の中の人がハッピーになれるように、良いものをつくり続けていけたらと思っています。
天国で見守っていてくださいね。