【起業日記⑧】布おむつについた汚れをラクに落とす、洗剤開発のスタート
前回のお話はこちら。
NY移住から3年後の2016年3月、私は子どもたちを連れて日本に帰りました。布おむつについた汚れを手間をかけずにごっそり落とす「洗剤」を作るためです。知人から紹介された原料屋さんと、洗剤の開発を始めることにしました。
「私、ウンチを落としたいんです」
「初対面で『私、ウンチを落としたいんです』なんて言うたやつは初めてやわ。」
原料会社の社長からは、今だにこの時のエピソードを持ち出されます(笑)。
「布おむつのウンチな。落とせるわ。」
運良く出会った原料屋さんは、クリーニング屋さんのようなプロ向けの洗剤を作る会社でした。原料のブレンドはもちろん、原料そのものも作っている会社です。
布おむつのウンチ汚れも確実に落とせると社長に言われ、早速やってみようと二人三脚での洗剤開発がスタートしました。
プロ向け洗剤の思わぬ誤算
最初に社長から渡された洗剤には「AとBとCを混ぜて使うように」という指示がついていました。この時点で私の頭は「???」でいっぱいでした。そんなややこしいことを毎日はできません。
そもそもプロのクリーニング店は、汚れを落とすアプローチがまるで違います。クリーニング店には洗剤をブレンドする機械があるのです。汚れを落とす直前に、A材●%、B材●%、C材●%…と言った具合に必要な割合で洗剤をブレンドして出してくれます。社長はこの「ブレンドする」前提に立っていました。
料理でも工程が3つ以上あると大変なのに、洗剤を指定のスプーンで計量して混ぜて使うなんて、私からするとあまりにも非現実的でした。
「忙しい主婦が3つの洗剤を混ぜて使うなんて無理です。」と伝えました。
主婦が手間なく簡単に使える洗剤を目指して
「わかった。じゃあAとBの2種類にしたるわ。Aは大さじのスプーン、Bは小さじのスプーン。2種類ならいけるやろ。これでどうだ?」
「2種類も無理です!1種類にしてください!」
「じゃあAをまず熱湯に溶かして…」
「熱湯なんて無理です!水道から熱湯は出ないし、その工程でやけどしてしまうかもしれません。安心、安全、簡単な洗剤にしたいです。」
「これも無理なんか…」
お互いがお互いの常識に驚くやりとりを何度したかわかりません(笑)。こちらの要望を出しつつ開発を続けました。そして幾度のやりとりを通して、洗剤そのものの開発と同じくらい大切なのが「洗剤の工程開発」だということに気がつき、同時進行で工程の実験も進めていきました。
次回へ続く。