調判定できるようになりたい!【第9回・借用和音①】
今回から何回かに分けて借用和音をテーマに取り上げたいと思います。今日は導入です。
ちなみに、こちらのテーマはリクエストにお応えして書いています。
皆さんもリクエスト記事があったらコメントで気軽にお知らせくださいね!
さて、
今までの記事を読んだ方はもう気づいていると思いますが、
転調している部分というのは、臨時記号が付く!
(調号が変わっていなければ)
そういえば、ドに♯ばかりつくようになったな…
急にシに♮ばかりついているな…
となったら派生音の場所を調べて、調号順に並べなおす作業をやって調を判定する、という方法で調判定します。
ここで突然ですが、
♪♪やってみよう♪♪
下の譜例の調判定をしなさい。
譜例1)
(Mozart: Fantasie KV475; Henle)
調号は無し。
臨時記号はファとドに毎回♯がつくのでD durです。
ではこちらの楽譜の場合だといかがでしょう?
譜例2)
(同上曲)
調号なし。
シは幹音、ミとラが♭
あとファが♯
旋律は隣り合っている音が多く、しかも半音で動いていたりするので、どれが音階固有音なんだろう、と悩ましいところです。
ここでよく間違ってしまうのが、
♭の中に入った唯一の♯を導音と思い込んでしまうこと!
この場合、♯ファを導音と考え、g mollと答えを出してしまう人がよくいます。
でも、ちょっと待って。
仮にg mollとしてもう一度見直してみると、
g mollだったらシに毎回♭が付かなくてはいけないし、
ラに♭が付いているのもおかしい。
確かに、♭調で♯の音が混在していると、♯のついた音が導音の可能性が高いのですが、必ず調を仮定したら、もう一度見直すクセをつけましょう。
この場合は、シミラ、と♭の順に並ばず、空いた(♭が付かなかった)♮シの音が導音の短調になります。
従って、答えはc moll
では、何度も♯の付いたファの音は・・??
続いてこちらも見てみましょう。
譜例3)
上段、下段で調が違います↓
(同上曲)
これも調号がありません。
上の段は、ファに毎回♯が付いています。他に派生音はないので、
上段はG dur
下の段になったら、急に♯がつきはじめました!
こういう時は転調を疑います。
♯がついているのが、
ファ・毎回
ド・毎回
ソ・左の小節は付いていない、右の小節は付いている
レ・×
ラ・毎回(1か所以外全て)
ミ・左の小節は付いている、右の小節は付いていない
となっています。
調号の順にきれいに並んだとしたら、Durなので、
この場合、レが確実に♯がつかないのに、次のラは毎回♯、調号の順に穴が空いてしまっているのでmollと考えます。
普通、♯調のmollは、調号順に並べた時に、穴あきの後の♯が導音になります。 ※これについては今後。
よって、♯ラが導音で、答えはh moll
でも、何度もついていたミやソの♯は何だろう?
と疑問がわいてきませんか?
実は…
譜例2)の♯ファ、譜例3)の♯ミ、♯ソは、他の調から借用された和音の中の音なのです!
どちらもドッペルドミナントという和音が付きます。
(きっと聞いたことあるはず!)
ドッペルドミナントは借用和音の中でもかなり頻繁に使われます。
なので、知らないとこの臨時記号を音階固有音だと勘違いして調判定を誤ることになりかねません。
このように、細かい部分まで調がわかるためには、
一時的に他の調の和音を使っている場所を見極めることが必要になってきます。
【借用和音とは】
先ほどもチラッと出てきましたが、
他の調から借りてきた和音のことを、借用和音と言います。
これを用いることで、一時的な転調ができます。
よく、借用和音と転調との違いを聞かれるのですが、借用和音も転調の一部であり、一時的か一時的ではないか、の違いについては、
・少なくとも1フレーズ
・数小節にわたる
ものを完全な転調とするのが基本です。
借用和音には大きく分けて次の3種類があります。
①副次固有和音:各音度の調からの借用(〇度調の属七など、二階建て記号で書くもの)
②準固有和音:同主短調からの借用(長調の場合のみ!)
③短調の時に発生する、ナポリ、ドリア、ピカルディ等
難しいですね~笑
自分で書いていても、名称が難しくて(漢字ばっかりか、似たようなカタカナ横文字か)
今、なんとなく楽典、理論が嫌われる理由が分かった気がしました(笑)
借用和音は、何度も言うように、「一時的な」転調なので、
同じ色の中にピリッとアクセント、スパイスのような働きをします。
次回は、先ほども出てきた、この中でも一番よく使われる、副次固有和音の中の「ドッペルドミナント」について解説したいと思います。
あー、
難しい^^
質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。