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人の気持ちを動かす文章

 お世話になっているボランティア団体には、とある素敵企画があるのだが、「同じボランティアの方々に、その企画の楽しさ・良さを広く知っていただくべく、企画経験者の視点から文章を寄せて欲しい」という依頼が、団体の運営側(とはいえその方もボランティア)からあった。その企画はとてもいいし、是非多くの人にやってみて欲しいと前々から思っていたので、よし!と気合を入れて文章を作成した。

 私が担った企画の流れを具体的に示しつつ、いろいろな方がいるので多くのフックをつけて、複数人に依頼しているから、私の特に言いたいことは明確にして…とあれこれ考えて作文した。締め切りもきちんと守ろう!と思ったので、私にしては非常に珍しく余裕を持って入稿した。

 書いた内容と早めの提出という点ではとても良かったのだが、何度読んでも文章が気に入らない。文体というのか、手直しはしたのだが、直しても直しても文章があか抜けない感じ。書き換えると細かい描写が変わってしまうし、削ると伝えたい要素も削られるしで、納得はいかないが、内容が伝わらない訳ではないので、まあいいかと思ってあきらめた。
 読んだ方が「自分もやってみようかな」と思う文章を書きたいという熱意と、細部を正直に描写したいという拘りを、このときは塩梅良く融合できなかったのが、上手く書けなかった原因かと思う。自分が上手い文章が書けないのはそのとおりなので、そこは構わないのだけど、読み手の顔が想像できる場合は、文章のダサさがどうにも心残り。

 ここに書いている文章は、読み手が具体的にいるとは思っているが、ボランティアの他のメンバーよりは遠い存在だし、読み手に影響を及ぼしたいという意思がないので、上手く書けないなぁということがあっても、先の文章の心残りとは少し違う。要は、メンバーにはちょっとカッコつけたいのです。

 仕事で、いわゆる「ご理解ください」文章をときどき作成する。結果はともかく「納得していただく」ための文章なので、先の素敵企画同様、あれこれ考えて書く。
 あれこれというのは、何が知りたいのか、書いていなくても知りたそうなことはどんなことか、こちらに問うてるポイントはどこか等々。

 仕事上の作文は、大抵はただ事実を書くことが求められるのだが、それでも相手のあることなので「どう書くかなあ」と迷う。同じ要求で書く作文でも、私と隣席の人では違う文章になる。
 こんなこともAIの助けを借りればいいんだろうと思うが、今日現在の職場ではAIの助けを借りる仕組みになっていないし、助けてもらっても、あれこれ考えるポイントが無くなるわけではない(と思う)。「ご理解ください」には、仕事相応の熱意を込める。

 人の気持ちに訴える、あわよくば動かす文章は、凄く難しいと思うけど、抑も人の気持ちを動かすことは難しい。相手を思い遣ることも大事だし、こちらの主張に嘘があってもいけない。
 人の気持ちを動かすのは、全てがそうでは無いが、それでもかなりの部分は結局伝えたい熱意でしょ、と雑な掴みでそう思う。先の素敵企画文章は、熱意が「正確にその時のことを伝えたい」になって、妙に拘った結果、上手く書けなかった気がする。

 熱意はこもってるので、私の文章がダサくても、誰か「自分もやってみようかな」と思ってくれたらいいな、と思う。