【あらふぉ~半生を振り返る】初めてのアルバイト
初めてのバイトはとても思い出深い。
高校生になって私が最初に選んだアルバイトは、近所のスーパーの中に設置された、小さなクリーニング屋だった。
クリーニング屋での仕事は、お客様から商品を預かってタグ付けし、台帳に記載し、工場に送る準備をする。
工場から上がってきた商品をお客様にお渡しし、代金を頂戴する。という単純な内容ではあった。
今は全てパソコン管理だろうが、その時代にパソコンなどなく、すべて手書きだった。
膨大な情報管理の為の分厚い台帳が、カウンターにどんっ、と鎮座していた。
その日、サラリーマン風の男性がワイシャツを取りに来店した。
ところが、その商品が見当たらない。
工場に問い合わせしようとしたが、その日は工場がお休みだった。
今の私なら状況を説明し、その後の対応の提案をし、相手の不安を和らげる努力が出来たと思う。
が、初めてのバイトである。
本人に社会性など皆無だった。
「商品はありません。工場は休みで今日は対応出来ません。」
とだけ伝えたと思う。
その男性は突然、目の前にあった分厚い台帳で私の頭を殴った。
そしてそのまま無言で帰ってしまったのだ。
残された私は
「ぽかん」
としてしまった。
店内は一瞬ザワついたが、誰も声はかけてこなかった。
私は初めてのバイトで、いきなり社会の洗礼を浴びたのだった。
次の日、一緒に働くパートさんにそのことを話すと、
「対応が不味かったのではないか」
と言われた。
しかし、その時の私には、まったく理解できなかった。
怒りが湧いたのか悲しみが湧いたのか、あまりよく覚えていないが、
残念ながらその出来事は「学び」にはならなかったようだ。
今思い返すと、
「相手の立場になってものを考える」
ということは置いておいて、
「いきなり人の頭を殴っちゃいけません!」に尽きる、
思い出深いエピソードだ。
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