【短編】灯の国 -鬼灯(ほおずき)の町-【架空の町3】
なだらかな丘陵地帯、西にある二番に大きな丘の上。
大きな岩の周辺を覆うように未密集しているウバメガシ。ここが鬼灯の町。
町の名前はウバメガシの根元にはえる鬼灯からとられたもので、町の門には鬼灯で作られた大きなランタンが掲げられています。
この町は耳が少し尖った小さい人々の町なので、体の大きい人々は町の外で野営をしなければなりません。しっかりと準備をすることをお勧めします。
夜に町を外からみると、枝や木の根元にある家々の小さな光で、木々に光が灯ったように見えます。
11月1日に鬼灯の虫かごに入れた雪虫を、一斉に空に放す祭りが行われます。この日から、町をあげての冬支度が始まります。
町の至る所に鬼灯で作ったランタンが吊るされ、祭りから冬至の翌日まで、日没から日の出まで明かりを灯します。
鬼灯の袋を破かぬように実をくり抜き、その中に火を灯すので赤く柔らかい光が街を包みます。
茸の香草炒めが名物で、パイ生地に刻んだハムと一緒に詰めた物が街の屋台で買う事が出来ます。
サクリとした食感とバターの香り、茸とハムの絶妙な味わいが何ともいえず美味です。
冬至を過ぎると、小さな人々は大きな岩に作られた”蔵”に籠り越冬するため、蕗の薹が顔を出す頃までは訪れても無人となっています。
-終-