【短短編】まほうしょうじょ
私は魔法少女ミルキー。この世界に突如として出現したアンデット達を、魔法の宝玉に封印するのが役目なの。
何でいきなりゾンビやスケルトンなんて奴らが出てきたのかしら?おかげで、私の住んでる街は滅茶苦茶になっちゃった。
私に魔法少女の力をくれた妖精のベルンは、私の力は悪い物を封印する力で、ゾンビをやっつけられる訳じゃないんだって。だから、ゾンビたちに噛まれてゾンビ化しちゃった人たちを元に戻すことは出来ないの。
とっても悔しいし悲しいけど、被害を広げない為に頑張って封印しないと!
お父さんやお母さんも宝玉の中に居るわ。ゾンビたちがあらわれたあの日、ちゃんとゴメンナサイって謝れば良かった…。
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戦い始めてから1年、やっと最後のアンデット、リッチーキングを封印出来たわ!!これでこの世界から、アンデットの脅威は無くなった!!
「ミルキー!やったベル!!これでこの世界は救われたよ!!」
妖精のベルンが嬉しそうに飛び回っている。
「やっと終わったのね。でもベルン、この宝玉はどうするの?」
「この宝玉はこのままブラックホールに棄てるんだ!落として割れちゃったらまたアンデットが出てきちゃうからね」
「まぁ!大変!!じゃあすぐに捨てに行きましょう!」
私とベルンは地球を離れて、何百光年も離れているブラックホールへ向かって飛び出した。
月の横を通過している時、いきなり私たちは眩しい光に飲み込まれた。
「きゃぁ!!何!!」
「いったい何が起こってるベルー!?」
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「やったぞ!!奴らを厄介払い出来た!!」
「異界人一人を一人召喚するだけで、あいつらを異界に送れたんだ、俺たち英雄だぞ!!」
眩しい光の中で、誰かの声がしている。
(異界…?奴らを送れた…??)
ミルキーには何を言っているのかわからない。
目が慣れてくると、目の前には白いローブを着た人たちが沢山いた。
「ここは…どこ?」
「ううう…ミルキー、どうやら僕たちは異世界に召喚されちゃったみたいだベル…」
部屋の真ん中で座り込んだミルキーとベルンに、一人の男が話しかけてきた。
「ようこそ、異界の少女よ。君のおかげでこの世界は救われたよ」
「えっと、どういうことですか?」
「ミルキー!!こいつら、ミルキーの世界にアンデットを送り付けてきたやつらだベル!!かすかに同じ匂いがするベル!!」
「何ですって!?」
ベルンの言葉に私は驚いた。
(でもさっき、異界に奴らを送れたって言っていたわね…)
ミルキーは瞬時に理解した。目の前に居るこいつらが、自分の世界ではどうしようも出来なくなったアンデットを、誰かを召喚する代わりに、呼ばれた人間がいる世界へ送り付けたのだ。と。
「あんたたちが、私の大切な地球に…私の大切な街に…アンデットを送り付けたのね!!」
「ッチ!!こいつら、俺たちのやった事を知ってるぞ!!殺してしまえ!!」
男たちがミルキーたちに襲い掛かる。
「そんなへなちょこな攻撃、魔法少女に当たると思ってるの!!」
私は魔法の結界を発動させると、建物の天井をぶち抜いて空に浮かんだ。
「ねえ、あなた達に良いものをあげるわ。この宝玉の中にはね、あなたたちが地球に送って来たアンデットと、被害にあってアンデット化しちゃった地球の人たちが封印されているの」
ミルキーはにっこりと笑う。
何をしようとしているのか気が付いた男たちは、青ざめた顔で叫びだす。
「まさか!!おい!!やめろ!!やめてくれ!!」
「私のお父さんとお母さんもね、ゾンビになっちゃったの。友達も、先生も、みんな、みんな…あんたたちが勝手に寄越したアンデットのせいで」
「お願いだ!!やめてくれ!!」
「あやまったって無理よ。みんなは帰ってこないんだもの。あなたたちが勝手に滅びれば良かったのよ。でも、いいわ。このアンデット達、あなたたちに返すね」
ミルキーは手に持った宝玉を、思い切り地面にたたきつけた。
バリン!!
宝玉が割れると同時に、中から黒いモヤが噴き出してきた。
のそりのそり、ガシャリガシャリと色々なアンデット達が湧いて出てきた。
「うわぁぁぁ!!!」
「だ…だずげでぇ!!」
ミルキーの眼下では、白いローブの男たちが沢山のアンデット達に食いちぎられていた。
「…いい気味だわ。人に押し付けた罰よ」
「ミルキー…泣かないでベル…」
「ベルン…泣いてなんかいないわ、ただの汗よ…」
「…そうベルか…」
ミルキーは目ををぐしぐしと拭うと、ピンと背筋を伸ばした。
「そうよ。さぁ、地球へ帰りましょう!」
「任せるベル!!空間移動ならお任せベルよ!!」
こうして魔法少女ミルキーは普通の少女へと戻り、居なくなってしまった人達の事を、胸に大切に刻み平和な時代を暮らしたのだった。
そして、他の世界にアンデットを押し付けた世界は、見事リッチーキングの収める死の世界となったのであった。
めでたしめでたし。