見出し画像

旅のマイルール〜乗り物・食べ物・買い物〜 

 「旅に出て何をするか」は人それぞれだけれど、どうせなら当地に行かないとわからないことを知ることができる旅にしたい。そんな考えのもと、私は以下の3つをマイルールとして設定している。時間がなかったりお金がなかったりでいつも適用できるとは限らないけれど、最大限努力はしたい。

1.乗り物:クルマは最小限、公共交通を活用

 地方を移動する場合、近くの空港か駅まで行ってレンタカーという人も多いし、数百km以内なら自家用車で行ってしまうという人も多い。しかしクルマは閉鎖的な空間ゆえ自宅の延長となってしまいやすい。グループならクルマ代を割り勘するとお得というメリットはあるが、ひとり旅だと「時間に縛られず移動できる」以外のメリットがないし、乗り物の需要も分かりづらい。
 そこで、私はできるだけ公共交通機関での移動を心掛けている。ローカル路線バスやローカル線は「使えない」「本数が少ない」というイメージが付きまとうが、実際に路線図と時刻表を見ずして使えないと断じるのは早計である。逆に本数が少ないのでダイヤに合わせて訪問時刻を決めてしまい、それに合わせて飛行機や新幹線・宿を押さえるというのでもよいのではないだろうか。
 この時ネックになるのが「そもそもバスが走っているかどうかがわからない」というケースである。鉄道は地図を見ればどこを走っていて駅から目的地までどれくらい離れているかがわかりやすい。一方バスは道路地図に書かれていることはあるが、改廃が激しく、書かれていないこともある。
 そこで私が使っているのが「バスルート」というWebサイトである。
バスルート - 全国バス停・路線マップ (bus-routes.net)
 ここで右側の「交通」タブから「バス2022」を選ぶと2022年時点で運行されているバス路線・バス停の一覧が表示される。
 しかしこれではまだ不十分だ。2022年以降に路線が廃止になったり、できたりした路線は載っていない。またこの地図は高速バスは掲載されていないので、高速バスは別途調べる必要がある。
 そこで今度は事業者のHPを調べる。バスルートの黄色の〇は民間バス事業者、黄緑色が公営バス事業者、水色がコミュニティバスのバス停である。目的地周辺を拡大し、民間か公営のバス事業者があればそこにどんなバス会社が走っているのかを検索する。もっとも、公営バス事業者はかなり数を減らしていて、日本国内では青森市、八戸市、仙台市、東京都、八丈町、三宅村、川崎市、横浜市、南アルプス市、伊那市、名古屋市、京都市、高槻市、神戸市、伊丹市、松江市、宇部市、徳島市、北九州市、佐賀市、長崎県、鹿児島市、沖永良部島の23箇所しか残っていない。(バスルートにはこれ以外の自治体でも黄緑色の〇があるが、コミュニティバスか白ナンバーの市町村運営有償バスである)基本的には近くのバス事業者のHPを見ておけばよいだろう。
 ここでまず路線図を見てバスルートと比較し、廃止された路線・新設された路線がないか調べる。
 しかし、これだけでは片手落ちである。自治体の委託によって運行されている「コミュニティバス」が入っていないからだ。コミュニティバスは基本的には「目的地の所在する自治体名+バス」で検索して自治体の公共交通紹介のページから確認する。もしふつうの検索で出てこなければ、自治体のHPに移動してサイト内検索で探す。それでも出てこない場合はないものと判断する。
 コミュニティバスすら走っていない場所はデマンド交通が対応している場合がある。デマンド交通はバス路線図には当然載っておらず、自治体のHPに載っている路線図に運行範囲が記載されているのみというケースも珍しくない。もし利用できるひとが地域住民に限定されていなければ、電話などで予約して利用するのも手だ。場合によってはタクシーすらなく、下記のように自治体がタクシーの代わりとなるものを用意している場合もある。
「えがお」のご利用について/紀北町 (mie-kihoku.lg.jp)
 それもなければ最後の手段は徒歩となる。どうしても時間に限りがある場合タクシーとなるが、地方だとそもそもタクシーの台数が少なく予約が難しいことがあるので注意が必要だ。そして地方のタクシーはほとんどの場合アプリが使えない。電話こそが生命線だ。

1 .1 旅程の立て方

 ここまで来たところでやっと旅程が立てられる。旅程作成においても、GoogleやYahoo!などの経路検索はあえて使用しない。紙と公式HPの時刻表ですべて完結させる。その理由として、経路検索で出てこない乗り継ぎを見つけたいということが挙げられる。
 例えば広島県安芸高田市に「神楽門前湯治村」という温泉がある。温泉のほか飲食店や宿泊施設もあるのだが、GoogleMapで公共交通を使った検索では経路が表示されない。これは安芸高田市のお太助バスがGoogleMapに登録されていないためで、実際はいくつかのバスが神楽門前湯治村の近くのまち、美土里の市街地まで向かっている。このようなケースが全国にあるため、あえてGoogle検索は使わず、必ず公式HPで時刻を調べながら進めている。また、GoogleMapのバス停位置や時刻が誤っていることも多々あるので、ストリートビューを見るまでは安心できない。
お太助バス時刻表・運賃表 | 安芸高田市 (akitakata.jp)

 また私の場合、旅程を最後まで決めないことが多い。乗り継ぎが失敗したり、観光地やレストランにもう少し長く滞在したいと思ってバスや列車を見送ったりするからだ。その場合、Excelに候補となる旅程をいくつか作っておき「リミット便」(当日中に宿に着ける一番遅い便)だけ覚えておく。思ったより早く終われば早い便に乗ればいいし、リミット便さえ逃さなければ翌日に響くこともない。あとは可能な範囲で安いフリーきっぷなどを探せば旅程の構築は完了である。

2.食べ物:チェーンではない定食屋またはラーメン屋に入る

 旅の食事に関しては様々な宗派があるが、やはり土地のものを食べたいというのが自然な流れである。しかし、「観光地価格」という名前のとおり、観光客向けの店というのはえてして値段が張るものだ。
 しかし、地元民向けに長く愛される定食屋は味が保証され、安く、量もしっかりある。観光客があまり入らないので混雑もない。
 またラーメン屋は、時間かお金がない時に入ることが多い。ラーメンは定食に比べて割安で、かつその店のオリジナリティが発揮されるからだ。上記の定食屋のような割安な店が見つからず、観光客向けの店が多かったとしても、ラーメンなら比較的安くその土地のものを食べられる。
 ちなみに、その土地のものを食べるという目的なら実は最も適しているのは居酒屋(海岸沿いなら寿司屋)である。もともと地酒も郷土料理も、その土地の風土・特産品から生まれたもので、お互いが合うように作られているはずだ。となると、せっかく地のものを食べるなら地酒もセットにしたくなる。
 ただこんなことをやっているとお金がいくらあっても足りないので、あえて「定食屋」と「ラーメン屋」としている。いうなれば妥協の産物である。また海沿いだと魚料理ばかりになりがちで、高級なものに舌が慣れてしまうこともあるので、時々町中華やラーメンで庶民の味覚を取り戻すことにしている。

道の駅流氷街道網走で提供される「オホーツク干貝柱塩ラーメン」

3.買い物:地元スーパーとコンビニに入る

 さて、先ほど食べ物の話で「定食屋かラーメン屋」というマイルールについて説明したが、定食屋やラーメン屋よりもっとコスパよく地元の食材を楽しむ方法がある。それは閉店間際のスーパーに行き、最後に残ったお惣菜を半額(またはそれ以下)で買い、ついでに360mLくらいの地酒を買うというものである。実際かかるお金は多少値の張るお酒を買っても惣菜と合わせて1000円くらいだし、ラーメン1杯や定食1人前と大差ない。
 実は私はスーパー全店巡りが好きで、コープさっぽろやコープあいちなど住んでいた場所の生協を中心にいろいろな場所の店を回った。それ以外にもスーパーカネハチ (静岡県の牧之原周辺に5店舗あるスーパー)や長島ショッピー(三重県南部にあるスーパー。魚の品揃えが非常に豊富で、名古屋など遠方から買い付けにくる人もいる)などローカルスーパーも何店舗か巡っている。こういうお店は多少値段が張っても、惣菜のラインナップが少なくても観光地になってしまう。

長島ショッピー

 しかしいつどこでもスーパーにアクセスできるとは限らない。場所によってはスーパーが遠く離れており、コンビニは近くにあることも。しかしコンビニでも地域限定商品などで、その土地の名物を食べることもできる。

徳島のローソンで買った地域限定のお弁当

 ここまでのマイルールで共通しているのは「そこでしかできないことを楽しむ」ということである。インターネットで検索すれば画像も動画もいくらでも見られるのに、わざわざ安くない交通費をかけて当地まで出かけるのは「そこでしかできないことを楽しむ」ためであると考えている。車を使えば何も考えなくても目的地まで辿り着けるし、チェーン店に入れば郷土料理が食べられるレストランに入るよりずっと早く、安く腹を満たせる。しかしあえてそうしないのは旅の目的のひとつを「楽しむ」ことに設定しているからだ。そして楽しむための手段として頭を使うこと、お金を使うことが存在している。

追伸:楽しむだけではない、執筆のための心掛け

 マイルールとまではいかないが、旅のいきさつをまとめて本にすることを念頭に置いて旅をしている。そのためにはたくさん写真を撮らなければいけない。ただ記事に画像として使うのみならず、画像を拡大して文字を読み取り、そこに書かれている情報を記事に盛り込むことも多々ある。また細かい時刻は写真やツイートのタイムスタンプから拾うこともある。
 自分の本を読んで「見ていて楽しい旅行である」あるいは「真似をしてみたい」「当地のことを学べる」と思ってもらえるようにしたい。そのためどのような本にするか、旅行しながら考えて、帰ってくる頃にはあらすじが出来上がっているという状態にするため、旅行の際には(お遍路・日帰りを除いて)ノートパソコンと充電ケーブルを持ち歩くことにしている。逆に言えばそれを持ち歩くため、衣類などはできるだけ持っていかないようにしている。ただ、GoProなどを使った動画や音声の記録は残していない。これは自分の持っているデバイスの性能の問題であるのと、動画や音声を使ったコンテンツは制作していないこと、そしてプライバシーの問題が理由だ。Webコンテンツと違って同人誌は写真と文章しか載せられない(印刷体でなくデータで出すなら別だが)。
 PCを持っていくのは別の理由もある。行き帰りの列車では電源がある場合執筆作業にあたることも珍しくない。本は一冊書くだけでなく、定期的に書くことが必要なので、ネタがあまり溜まりすぎないうちに形にしてしまうことが必要だ。そうなると、前の旅の原稿が完成しないうちに次の旅に出るということも珍しくなくなるので、旅行中に原稿を書くということも日常になる。慣れてしまえば揺れるバスや列車の中でキーボードを叩くのも案外楽しいものだ。

 以上旅のマイルールと心掛けについてまとめてみた。自分は「旅行記を書くために旅行する」でも全然悪くないと考えている。ただそのためには「ただ行ってみて食事して泊まって温泉入って帰ってきて終わり」ではなく、他の人がやらなさそうなことをしなければならない。他の人がやらなさそうなことにこそ、価値が発生するのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?