【初心者必見】半導体業界をざっくり解説していくよ(執筆:2019年)
いきなりですが、
「半導体ってよく分からなくないですか??」
だって、生きている中で半導体を意識することって、あまり無くないですか?
あるとしても、新聞やネットニュースで、「IoT」「AI 」などという単語を見るくらい・・・。
株や為替をやっている人はまだしも、就活を控えた学生なんかは絶対に馴染みのない世界だと思うんですよね。
新聞読んでも専門知識のオンパレードで「なるほど、分からん!!」で終わっていると思います。笑
この記事では、どんな方が読んでも理解できることを心掛け、出来るだけ簡単に解説していきたいと思います。
そのため、関連企業のホームページに載っているような高度な内容は割愛させて頂きます。
半導体業界は、携わっている方とそうでない方とで、知識レベルがはっきりと分かれるハイテク業界です。知っている人からしたら、私の解説なんて「常識の範囲内」です。笑
しかし、この半導体業界は日本人全員が絶対に知っておいた方がいい業界だと私は考えています!
IoT、AI、自動運転、スマホ、PC、医療機器…。半導体が無ければ今のハイテクな時代は訪れていません。
また、これからがその半導体の全盛期であり、半導体業界について知らないのは、世界経済について何も知らないのと同じです。
日経平均やダウが高水準で推移してきたのも半導体の影響ですし、米中貿易戦争の主役もこの半導体です。
2018年冬のボーナスのトップ3には、東京エレクトロンやディスコと言った「半導体製造装置メーカー」がランクインしています。それほどに半導体業界は今沸騰している業界なんです。
今後の世界経済を見通す上でも絶対に必見の業界ですから、この記事含めた数回の連載を読んで頂き、勉強して頂ければと思います。
それでは一緒に勉強していきましょう!!
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そもそも半導体って何?
色んなコンテンツで、色んなことが言われておりますが、一言でいうと、
「デジタル分野の脳みそ」
この理解で十分だと思います。
ここで、脳みその役割をいくつか洗い出しますと、
①計算する部分
②記憶する部分
③思考する部分
など、脳みそと言っても、色々な役割がありますよね。
半導体(=ICチップ)も同じで、①~③のような色々な役割のチップがあります。(他にも沢山ある)
あなたが今イメージしているチップは、その中の1種類にしか過ぎません。
「インテル入ってる」以外の企業はどこ?
皆さんご存知「インテル入ってる」
アメリカのインテルは、世界有数の半導体メーカーです。
PCの中に入っているCPUという種類の半導体チップを作るのが得意で、インテルが不調だと、めちゃくちゃ多くの企業が不調になります。
もちろん、日本経済も不調になります。
但し、上の画像を見ると「え、インテル1位じゃないのかw」と思う人がいると思います。
そうです、韓国のサムスン電子。この企業が世界最強企業となっているのです。
サムスンが得意なのは、「記憶するチップ」。
スマホで言うと、「保存容量」などに値します。
ほら、今の世の中ってスマホ全盛期じゃないですか?
今や世界中どこでもスマホ。
貧困国でもスマホ。
つまり、「人類はインターネットでめちゃくちゃ多くのモノを保存(記憶)している」んです。
だから、「記憶するチップ」が得意なサムスンは、インテルを超えるほどに伸びたのです。
「え、日本メーカーが東芝しかいない????」
おい、その話はやめるんだ!!!
でも日本は半導体業界でまだ存在感あるよ
あのランキングに一切入っていなかった日本企業。
日本は半導体大国から華麗に没落したんですよね。
この画像の通りです・・・。
トップ10にこれだけの日本企業が入っていたんですが、今は完敗ですね。
それでも、「日本はサムスンと相討ち出来ます!!笑」
今ならまだ、世界経済を大混乱に陥れるくらいの影響力はあるんですよ。
その理由は、「半導体製造装置メーカー」が強いから、です。
そもそも、半導体のチップって、あなたが思っている以上に微細なんですよ。
10万分の1ミリとか、そういう次元の話。
「錆び付いたボロボロの機械じゃICチップは作れない」
のです。
超ハイテクな装置じゃないと作れないんです。
そんなわけで、日本は、「ICチップを作るための装置」が凄いんです。
つまり、インテルやサムスンは、日本の装置が無いとICチップを完成させられないんです。
商流を意識しよう
日本の半導体ICチップは世界で敗北を喫していますが、チップを作るための装置業界ではまだ存在感があるという話をしてきました。
半導体を作るための製造装置にも色々な種類があって、必ずしもトップ3の海外企業だけではICチップは作ることが出来ません。
(画像は2021年5月に差し込んでいます)
15位までにひしめく日本企業の装置が無ければ、今のハイテクなチップは完成しないのです。
ここまでの話を踏まえると、インテルやサムスン、TSMCに装置を販売しているのが、東京エレクトロンやアドバンテストのような日本の装置メーカーということが分かりました。
アメリカと中国
なぜ、日本経済はアメリカ経済の後を辿るのかというと、
インテルが儲からなくなったら、日本の装置メーカーは装置を売れなくなるという構図があるからなんですね。
スマホやPCが普及し過ぎて売れなくなった(アメリカ)
→チップメーカーが売れなくなる(アメリカ)
→装置メーカーが売れなくなる(日本)
こんな感じ。
てか、半導体のチップメーカーってアメリカ多いんですよね。
この半導体全盛期の中で、これだけの大手チップメーカーがいるアメリカのダウやSP500は強いに決まってます。
しかも、製造装置メーカーのトップも実はアメリカ(アプライドマテリアルズ「AMAT」とも呼ばれます)。
アメリカ経済は、アップルやAmazonだけでなく、こういった川中・川上の業界でもお化け企業がいるのです。
今回はまったく出てきませんでしたが、こういったアメリカの牙城を中国が崩しにかかっています。
中国はお金なら大量に持ってますから、「金の力で解決」しようと必死です。高い年収でのヘッドハンティングもバンバン行っています。
米中の貿易戦争はこういった半導体業界の構図から来ています。
トランプ大統領は徹底的に「出る杭」を打つことでしょう。
半導体の作り方
半導体チップってどうやって作られているかご存知ですか??
一般社団法人日本半導体製造装置協会の資料が1番分かりやすいと思います。それでも、プロセスが多過ぎて覚えきれないかと思います。
https://www.seaj.or.jp/file/process01.pdf
前回の記事の通り、ここでは「半導体製造装置メーカー」の出番です。日本産の超ハイテクな装置が無いとインテルやサムスンはチップを作れないのです。
まず、覚えておきたいのは半導体の作り方は、前半と後半の2つに分けられます。
①前工程:ウエハーの上に回路を形成する
②後工程:出来たチップに配線をして、パッケージングする
こう呼ばれていますね。
どちらも高度な技術が必要なのですが、基本的には前工程がメインですし、前工程だけで全体の70~80%を占めていると思います。
でもって、前工程で何をするかというと、「ウエハーと呼ばれる素材の上に、目に見えないレベルの極細の回路を形成する」のです。
ウエハーの製造で最強の会社は日本にあります。①信越化学工業②SUMCOの2社です。化学メーカーで最強と言えば、間違いなく信越化学です。何で学生の間で不人気なのか理解が出来ない。知名度が低い割に日本最高の競争力を持っている超隠れ優良企業です。
そんな会社が製造している「ウエハー(シリコン)」の上に、回路(脳みそ)を描いていきます。
描くと言っても、鉛筆や筆で描いていくわけではありません。半導体の回路は目に見えないレベルで細かい為、実際には「光」を駆使して描いていきます。
原理的には、ネガフィルムを使用した写真です。
「フォトマスク」と呼ばれる下書きを作り、そこからレンズと光の屈折を用いて、ウエハーの上に転写していきます。
実際には、「露光装置」というハイテク装置を用います。カメラでお馴染みの、ニコンやキヤノンが強いです。
数ある半導体製造装置で最も高額な装置になります。
微細化の歴史=脳みそのシワが増えている
半導体の回路はどんどん微細化しています。
簡単に言うと、「脳みその大きさは変わってないけど、脳みそのシワが増えて賢くなっている!」
だからこそ、ガラケーからスマホにシフトしてきましたし、iPhoneやiPadが登場し、インターネットが全世界に普及。
処理スピードも、記憶容量も増えてきました。
これは全部、「脳みそのシワが増えて、半導体が賢くなってきたから」です。
半導体の作り方的に言うと、
①より細い光線で、同じ面積のウエハーに対してより沢山の回路を描けるようになった
②回路を何層にも重ねて作ることが出来るようになった
この2点が最近の開発のポイントですね。
①は、EUV(極紫外線)と呼ばれる、今までの光よりもさらに細い波長の光で露光する技術です。人類は、今まで扱えなかった紫外線(に近い光)を自在に操れるようになってきています。
「露光装置ということは、ニコンやキヤノンが強いのかな?」と思うかもしれませんが、残念。
これはオランダのASMLしか出来ない装置なんです。ニコンやキヤノンはASMLに完全敗北を喫しているのです。
ちなみに、最近はオランダの株価が日系平均の先行指標になっているらしいんですけど、私はこのASMLなどの世界最先端の技術を持っている半導体関連企業が関係しているんじゃないかなって仮説を立てています。(オランダの年金基金は有名で、株価に影響しやすいということも言われていますね。)
②は、3DNAND型フラッシュメモリという、日本の東芝が最初に研究した大容量記憶チップです。
原理は簡単。「今まで1層だった回路を何層にも重ねただけ」です。言うのは簡単なんですけど、作るのは難しかったんです。
東芝が最初ですが、今やサムスンの方が上で、サムスンが大量生産しています。もちろん、スマホに大量に採用されているのはサムスン製。笑
本当に、日本はただ装置を作るだけの国に落ちぶれてしまって残念です。
この業界は資金力と技術力がモノを言います。どちらも今の日本では落ち目と言わざるを得ません…。
日本の半導体製造装置メーカーは何が凄いの?
ここまで大雑把に書いてきましたが、肝心の部分はすべて省略しています。
特に、日本は半導体製造装置メーカーが強い、という部分にあまり触れていません。
それを説明するには、さらに技術的なことを書いていかないといけないんですよね。
ここから先が、色んな隠れ優良企業が出てきたり、世界経済における影響力の強い企業が登場してくるのですが、これは何か別のところでご紹介出来ればと思います。
ちなみにボーナスというのは業績によって上下するものですが、東京エレクトロンやディスコは業績が絶好調なこともあり、ボーナスが恐ろしいほど高いです。
あまり余計なこと書けない事情もありますので。
私のTwitterではたまにポロっと、そういうツイートしていますので、興味がある方はフォロー宜しくお願いします。
半導体と株価
日経平均株価のほうが投機目的としても使用されるためにボラティリティがありますが、基本的には実体経済寄りの半導体指数と、日経平均は相関関係があります。
今の日本の企業では、製造業だと自動車と半導体が間違いなく2トップです。
どちらも部品メーカーまで裾野が広いため、この2つの業界の好不調は日経平均に大きな影響を及ぼします。
本業で、製造業界をウォッチしていた私の感覚(+各企業の売上推移)だと、2017年の12~3月が最も忙しかった時期です。これは私だけの意見ではなく、会社員でメーカー勤務の方であれば、多くの方が同意して頂けると思います。
そして、2018年の10月を過ぎたころから、一気に半導体関連は落ち込みました。これも多くの方が同意するであろう事実です。
その事実と、日経平均の推移は連動しているんですよね。実体経済と日経平均は多少なりとも連動しており、特に半導体業界の影響は強く受けていることが分かります。
トレードにファンダメンタルズは必要なく、勝っている方は全員テクニカル分析と言われております。
株価は投機目的で売買されることもありますが、実体経済を一切含んでいないかと言えば、それは間違いです。実体経済+投機目的の2面性があるというのが正解だと思っています。故に値動きは、長期的に見れば実需と連動しやすい。
ファンダメンタル分析を実際にトレードには使わないにしろ、世界経済に興味がある方は覚えておいても良い事柄だと思います。
おわりに
今回は、ざっくりと半導体の作り方や微細化の歴史についてお伝えしてきました。
しかし、「どんな企業があって、どんな技術を持っているのか」などは一切書けていません。
この辺りの部分は、本当に興味のある方だけを集めて、そこでお伝えしていった方が良いのかなと考えています。
2019年の上期は調整局面と言われている半導体業界ですが、IoTや自動運転などまだまだハイテク分野は伸びていきます。
若い世代は、オンラインサロンだとかB to Cビジネスに必死になっていますが、こういった製造業のB to Bにも興味を持って頂ける方が増えてくれることを願っています。
優秀な若手が製造業に参入してくれたら、まだ日本は経済大国としての地位を守っていけるんじゃないかなと思っています。今は若い人がいなさ過ぎて、私はどこの集まりに行っても20代ただ1人でおじさんの中に割って入ってる現状です。それでも私は待ち続けますけどね。