あまりスマートではないコントラクト
注意⚠ 3/6/2022更新
2022年3月6日をもって原文執筆者Andre Cronje氏は仮想通貨引退を宣言し、Twitterなども消えているようです。以下の文章は見方によっては彼の遺言のような意味を持ちました。
なお、この段落以降はRICが二月頭に書いた文章で、敢えて訂正は加えておりません。そのままの風味で残してあります。
当たり前のように使っているUniswapのスワップ機能、何気なく流動性提供しているDeFiプロトコル。クリプト世界に散りばめられた分散型金融サービスはすべて根幹にスマートコントラクトが存在します。
1994年に提唱されたこの概念は以下のように説明されています。
話を戻しましょう。
このnoteは、Andre Cronje氏
(南アフリカ・ケープタウンの出身で、Yearn Financeの創業者であり、ファントム財団で役員も務めたクリプト界の古参)
が書き下ろした、ある事件をきっかけにスマートコントラクトについて再考した記録です。テクニカルな話題ではないが人間と機械の関係、そしてWeb3がもたらしうる未来について詩的な雰囲気を織り交ぜた味のある文章になっているので、是非読んで頂きたいです。
帰国して強制隔離施設の中で緑茶を一本飲み干しながら書き上げたので、読みながらちょうどコーヒー一杯を飲みきるのに十分な文字数になっています。
なお、ニュアンスが伝わるよう多くの意訳を挟んでいるので、原文も読みたいという方はAndre氏のMedium記事を読んでみてください☟
本文
既に24時間が経過し、私は困惑している。手に入ったすべての情報をまだ消化できておらず、生じた事件について明確に説明できる結論を用意できない。それでも、スマートコントラクトとこの業界における役割について考えさせられた。
スマートコントラクトにには奇妙な二面性が存在する。彼らは淡々と仕事をこなす、変更も加えられない不変の労働者である。初めは理解しづらいが、彼らの役割は人間の存在を不要にすることだ。人間によってのみ引き起こされる人的ミスをなくすということだ。これは私の推測ではなく、偶然でもある。
今日私が死んだとしても、私がDefiに書き込んだプログラムはいつも通り稼働し続ける。私は彼らに必要ない。
この事実は人間に対する脅威だという人もいる。私にとっては、このことこそがスマートコントラクトの醍醐味だ。不変性という個性だ。
いつでも自分たちを抹消できる監視者たる「人間」の存在に怯えるプログラミング言語は、与えられた仕事を問題なくこなすことができない。
常に自分たちの創造者である人間に従属するしかない。
昔は私もこのような、頼りないWeb2コードを批判していた。
自分自身の面倒を見れるスマートコントラクトはこの恐怖を感じることはない。しかしこれはリスクでもある。スマートコントラクトも同様に人間に従順であるべきだ。
だから私たちはリスク軽減ツールを使用する。ユーザーが十分にコードを吟味する時間を与えるためににタイムロック(特定の条件下でしか作動しない防護柵として機能する)を加え、たった一つのノードがボトルネックとならないようにマルチシグ(複数ノードの署名を必要とするセキュリティ技術)を追加する。
このような小細工はすべて、冷血で無慈悲なスマートコントラクトに対しても人間が支配権を握るためのものだ。
私たちはどこで道を誤ったのであろうか。
過去にも言及したが、ここでもう一度書き記しておく。クリプトの世界では、自分の資本で投資することが意思表示になる。一過性のスキャム、億り人確定の絆コイン、そして低クオリティのプロジェクトに投資し続けると、それ以上のものは生まれない。仮想通貨のプロダクト設計は非常に難しく、人々が思うより遥かに時間がかかる。人間の干渉が一切ないプラットフォームを構築するなら尚更だ。
しかし、クリプトコミュニティという文化として、私たちは人間が直接的にプロトコルを管理し、EOA(Externally Owned Account 人間が秘密鍵でアクセスできるアカウント)を使って資金を動かし回っている。スマートコントラクトが本領を発揮できている部分は数少ない。
こうなってしまったのは私にも責任がある。私も本来の理想から道を踏み外してしまった。
私はよく、人間が介在しないプロトコルとプロトコル、機械と機械という文脈で話をする。私たちが作っているものは人間のためではなく、コードそのもののための新しい通貨であると信じ切っていた。昔は。
人類の歴史が幕を閉じた遥か未来に、全能のロボットたちが取引をするメカニズムを構築していると。
私は今でもこの未来を夢見ているが、今の状況には絶望を感じるようになってしまった。
私は受け入れられたいと思うようになった。コミュニティへ仲間意識を求めた。所属感が欲しかった。人間は孤独を感じるし、独りでは生きていけない。私たちはスマートコントラクトではないのだから。
スマートコントラクトの概念と分散型金融の関係性について造詣の深い技術的な会話をできるような友人は片手で数えるほどしかいない。そのうちのほとんどは引退したか、あまりにも現状に希望を失いクリプトに見向きもしなくなった。
私は初心に戻らなければならない。私のモチベーションは道を逸れたが、私の書いたコードを読む限り、本来のゴールに対する希望はまだあるみたいだ。
私のコードにはプロキシはなく、人間的要素もなく、管理人権限もない。DAOによる支配、タイムロック、そしてマルチシグもない。恐ろしいほど純粋な実行文だ。実物を読んで確認したい人はSolidlyから閲覧できる。
スマートコントラクトの不変性と、人間を必要としない性質はバグではないしエラーでもない。個性だ。
私たちはよく信頼について話すが、コードに信頼なんてない。信頼を必要とするのは人間だけだ。
だから私は機械的な絶対的存在の誕生した未来に向かって歩み続ける。コードを書き続ける。
私の貢献を見て、もしかしたらペットとしてくらいなら飼ってくれるかもしれない。
by Andre Cronje, Jan 29, 2022
いかがだったでしょうか。
今一度クリプト業界のあり方について考えさせられる文章であったように思います。果たしてAndre氏がイメージする未来が人間にとって善いのか悪いのかはわからないですが、Andre氏のTwitterをフォローすることはスマートコントラクトでなくてもできます。
是非覗いてみてください。
Web3に飛び込むきっかけとなった背景はそれぞれですが、こうやって巡り合ったことに何か意味を感じて頂ければ幸いです。
人間としてスマートコントラクトとの関係を考えるきっかけになればと思います。
Twitterも置いておくので、興味があれば見ていってください。
そして最後に、noteを読んでくださってありがとうございました。
ではまたどこかでお会いしましょう!
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