第9話 気迫のM−1グランプリ観戦
先ほど2024年のM-1観戦が終わりました。
多分ネタバレしちゃいます。それが嫌な方は、申し訳ないですがスキップしげください。
さてそのM-1。離婚前は家族で観ることもあったのですが(といっても娘はあまり興味なく、ほぼ元妻と二人でですが)、近所の立ち呑みバーで一人ケイタイのTVerで観ていた今回は、いつもと違う没入感と気付きがあったのです。
トップバッターは去年に続いて令和ロマン。心のどこかで「2連覇したら凄いよなぁ」と思っていただけに順番的にちょっと残念でしたが、気にせず観始めました。前半の展開があまり好みでなく、「これじゃ2連覇はないな」と思っていると後半尻上がりによくなっていく。ネタもそうだけど、それ以上に周囲を制圧するような気迫が感じられて「すげーな」と思う。だけど、これで2連覇できるのか?
続くヤーレンズと真空ジェシカ。ともにめちゃくちゃ面白い。さすがとしかいいようがない。
そしてマユリカ、ダイタクに続きジョックロックが出てくる。パフォーマンスの後に審査員たちから芸歴の浅いボケのゆうじろーさんに対して「もっと色々できたらよかった」というようなコメントが出ていました。
それに対してゆうじろーさんが前のめりになって審査員のアンタッチャブル柴田さんのコメントに食い気味に「オレが面白くなりますぅ!」と叫んだのです。
これにはちょっとグッと来てしまいました。このコンビは芸歴に7年の差があり、ゆうじろーさんは相方の福本さんより芸歴がかなり短い。もちろん芸は長さだけでは決まらないだろうけど、おそらくゆうじろーさんは、日々自分がもっと面白くならなければ、福本さんを活かしきれないと思っていたのでしょう。だからこそ、審査員にそこを指摘されたときは悔しさと不甲斐なさが入り混じり、思わず叫んだのではないかと思います。
当たり前ですが、この悔しさとか不甲斐なさって真剣に取り組んでないと出てこないものだと思います。ジョックロックのお二人が真剣にこのM-1に臨んでいるからこそ出たコメントだと思ったのです。
そしてそこで気づきました。「あー、僕がM-1が好きだったのはこういうことだったのか」と。もちろん単純に漫才の面白さを楽しんでいるのですが、その裏にあるプロの卓越した技術と、そして命がけの気迫をもって皆さんが臨んでいるところに心掴まれるので、と気づいたのです。
もちろんこれはジョックロックだけではなく、他のすべての出演者の。
それに気づいてさらに続きを見る。
これまでの流れでは経験豊かな実力者の最初の3組が圧倒的に面白い。やはり実力というのは顕著に出てしまうのか、そう思っているところに出てきたのがバッテリィズ。
面白い!単純に面白い。そして最後に極めつけに「生きるのに意味なんていらんねん」という批評性たっぷりの一言で締めくくる(このセリフを自分のものにし切れていなかったのが、残念でもかわいくもあったが)。
いい!面白い!令和ロマンよりもこの人たちに優勝させたい!
令和ロマンはもういいでしょ。十二分に凄いってみんなわかっているんだから。とそんな気持ちになっていったのです。
と思っていると、ママタルトを挟んだ後に出てきたエバースがまたいい!ものスゴく面白い!っていうか僕好み。やっぱりこの人たちに優勝させて上げたいと思う。
しかし残念ながらエバースが1点及ばず決勝行きの権利を逃して、最後はトム・ブラウン。
元々トム・ブラウンのお笑いにはあまり興味がなかった。でも今年は6年ぶりでラストイヤーだというので、どんな感じなのかちょっと気になりながらみる。
出だし、やはりトム・ブラウンっぽい。あまり興味ないかな、と思いながら観ていく。でも段々訳わからなくなっていく。訳わからなくおかしくなっていく。やべー、面白い!っていうかスゴイ!めちゃくちゃ尖っているし、そして何よりも気合入っている。ラストイヤーにかける気迫がひしひしと伝わってくる。
超カッコいい。
決勝へは届かなかったけれども、彼らのM-1最後のパフォーマンスを観ることができてよかったと心から思う。
+++
さて決勝。
令和ロマン、真空ジェシカ、そしてバッテリィズ。
イチオシのエバースなき今、応援したいのはバッテリィズ。
がんばれ!
真空ジェシカのパフォーマンスが終わり、いよいよ令和ロマン。
元々令和ロマンは好きだが、ごめん、今回はバッテリィズ推しでいかせてもらうよ、と独り言ちて観る。
が!ヤバい!!すごすぎる!!!
面白すぎる!
いや、面白さもさることながら、面白さと同時に全編に会場中、そしてテレビの前の視聴者全員を制圧するような気迫が感じられる。カッコよすぎる。
そもそもM-1で2連覇にチャレンジしようなんて酔狂だ。優勝したらめちゃくちゃ忙しくなって賞レースようのネタを磨く時間もなくなってくるだろうし、そもそも優勝してもいいことなんて別にない。仕事もお金も十二分に入っているだろうから、出場することはリスクでしかない。
もちろんこれまでもチャレンジしてきたコンビはある。でもやっぱり手の内もバレているし無理ゲー。
その無理ゲーに臨む。たぶん昨年までのようには時間は取れなかったと思う。でも彼らは他の出場者以上に出ること自体には意味はない。優勝しないとなんの意味もない。
ネタの面白さもさることながら、必勝で臨むその気迫。
カッコよすぎる。感動的でさえある。
翻って、僕はどんな分野でもいいから、令和ロマンに限らず、このM-1の出演者たちほどの気迫で臨んでいることはあるだろうか?
年齢なんて関係ない。錦鯉が優勝したときの長谷川雅紀さんは50歳だった。カーネル・サンダースは65歳のときにKFCをフランチャイズ化したという。
そもそも年齢が高くて問題になるのは、パフォーマンスの問題だ。確かに歳を取るとパフォーマンスが下がる分野というのはある。その結果、思うような成果は出ないかも知れない。
でもそもそも感動を生むのは成果結果そのものではなく、その物事に臨む姿勢、気迫そのものなのだということを僕は今日、トム・ブラウンやジョックロックから学んでいるはずだ。
僕は今年離婚した。守らなければいけないものはもはや何もない。情熱を持っていないとしたら、気迫をもって物ごとに臨めていないとしたら、それはすべて僕自身の問題だ。言い訳は効かない。
M-1を観ながら、気迫をもって人生に臨むことについて突きつけられた。
僕は気迫をもって人生に臨んでいるだろうか?
僕は気迫をもって人生に臨んでいるだろうか?
(つづく)