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第6話 うれしたのしオジサンの一人暮らし
離婚した。
一人になった。
元々住んでいたのは賃貸の一軒家だった。
一人でそこに住み続けるには高すぎるし、広すぎる。
当然引っ越しということになります。
引っ越し先としてみつけた物件は約30平米の2K物件。
立地はいいし、内装もリノベされていていいのだけれども、外装は「昭和か!」と突っ込みたくなるようなボロアパート。
とはいえ寝泊まりができて、仕事(Zoomでの打ち合わせとか)ができれば十分。
間取りは、4畳半の寝室と6畳の部屋、そして小さなキッチン、バス、トイレ、という感じ。
ボロアパートなので、周囲の音がバリアフリーということを除けば別段なんの不満もない、そう思っていた。
しかし実際に住んでみると不満どころの騒ぎじゃない。
こりゃ超快適だ!
6畳の部屋にはちょっと大きめのデスクと棚で仕事作業スペースを設け、残りの狭い空間をちょっとした応接空間というか、居間的な空間にしている。
僕に限らず働くオジサンのほとんどは日中のほとんどを仕事に使っていると思う。だから仕事空間が快適だというのはとても大切。
この間取り、そういう意味でとにかく快適。
仕事をする。疲れたらすぐにちょっと横になれる。
お腹が空いたらすぐになにかを作って食べられる。
なんなら隣はセブンイレブンだし。
これまでもホームオフィスでやってきたので、似た環境といえば似た環境なんだけど、やはり同居人がいるのといないのとではまったく違う。
同居人がいれば食事の時間だって合わせるし、掃除洗濯だってきちんと決まったタイミングでやらないと共同生活は機能しない。
しかも小心者の僕は、ちょっと疲れて横になるだけでも元妻にサボっていると思われるのではないかとビクビクしていたりして。
そして引っ越すときは「もう少し広い方がいいかな」と思っていたけど、広さもジャストサイズ!
手を伸ばせば必要なののがすべて手が届くし、広すぎないので掃除も楽。
結婚していたときは「ちゃんと掃除して」とよく怒られていたけど、今は一日2回は掃除機をかける。
僕は生来、整理整頓、後片付けが苦手な方で、独身時代(結婚する前の)は部屋はそこそこ散らかっていた。友だちをうちに呼ぶことが多かったので、そのために一所懸命掃除をする、といった感じだった。
しかし結婚した元妻はとにかく部屋が整っていてキレイな人だった。そんな彼女にとって僕と住むことはストレスだっただろうけど、彼女のスタンダードを求められるこちらもストレス。
それでも18年間も結婚をしていると、少しずつは鍛えられていく。引っ越しをして一ヶ月以上経つけど、部屋は比較的キレイさを保っている。ピカピカというわけにはいかないけど、男の一人暮らし感はあまりないんじゃないかな。少なくとも人は呼んでもびっくりされないと思う(外観のボロさを除けば)。
というわけで52歳から20年ぶりに始めた一人暮らしはあまりにも快適だ。
僕自身の仕事と生活に完全に最適化されている。
そこで新しい問題が出てくる。
こんな快適生活に馴れてしまったら、二度と誰かと一緒に住むことはできないだろうという気がしている。
まだ離婚して一人暮らしをはじめて一月程度しか経っていなくても、お袋に電話をすると「もうガールフレンドはできた?」と聞いてくる。
まあ、彼女ができたら楽しいだろうけど(なんてったって僕はエロいからね)、とりあえず今のところは誰とも結婚する気はない。
しかしいつか気が変わらないとは限らない。でもいざそういう状況になっても、こんな快適な生活に馴れてしまったら、もう二度と誰かと共同生活をすることなんてできないんだろうな。
マンションの隣同士の部屋を借りるとか、通い婚とかじゃないと無理だろうな。
と、そんな空想に耽る前に、きちんと仕事して稼がないと。なんてたって離婚はするときも、その後も結構お金かかるからね。
(つづく)