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第8話 郷愁のRオジサンたち

もしあなたが離婚したら、友だちに報告しますか?

これ、悩ましいですよね。結婚の報告だったらめでたいからSNSとかで「結婚しました!」って無邪気に上げてもいいと思うんですが、離婚はことさらに「離婚しました!」って報告するようなものでもないし。

かといって「なんで言ってくれなかったんだよ、水臭い」というのま嫌だし、誰にも話していないのに気づいたらみんな知っている、というのも気持ち悪い。

僕は元妻と娘が新幹線で九州に向かうときのホームでの様子を、娘と撮った写真と一緒にFacebookに上げた。その中で簡単に離婚について触れた。

それが僕の離婚報告だった。

その反響は大きかった。Facebookでたまに上げる投稿につく「いいね」はせいぜい数十個。しかしその投稿には「いいね」などのリアクションが400件近くあった。

温かいコメントもたくさん頂いた。

こんなにたくさんの人が気にかけてくれているんだな、こんな人までリアクションしてくれるんだ、とありがたい気持ちになった。

もちろんDMも届いた。その中にはかなり久しぶりの人、もう何年も連絡をとっていない部活の先輩もいた。

「ご無沙汰。
 メシ行こう!
 俺も人生色々あり。
 なんか、語り合いたいなと思ったんで連絡した!」

先輩といっても、学年は4つ離れていたのでOB会で知己を得ていただけの関係。どういうことだろう?と思いながらも、誘ってくださったのだからありがたくお会いしよう、と約束をした。

約束の当日、時間になってもなかなか約束のカフェにいらっしゃらないのでLINEすると、完全にスケジュールが飛んでいた様子。後から「スケジューラーに日にち入力し間違えてた。本当にごめんなさい」とのメッセージ。

まあ、こういうことはよくある。というか、僕がよくやる。もちろんそんなことで人様を責められるような立場じゃない。

気にしないでください。また仕切り直しましょう。
とメッセージを送ると

「正直話すと、妻と離婚して、この一ヶ月くらい、本当に毎日色々あって、やっと吹っ切れて、、、 ということもあり、りこたろうとスゴく会いたかったんだよ」

とカミングアウト。なるほど。これで納得。

実はこの先輩の他にも二人ほど「実はオレも離婚して」というDMを頂いていた。

娘を見送りにいったFacebookの投稿はできるだけ湿っぽくならないようにしたけど、それでもずっと娘と離れ離れになるんだからそれなりに感傷的な趣もある。自らも離婚を経験したRオジサン(離婚したオジサン)にはズシンとくるものがあったのだろう。

というわけで、年末年始の僕のスケジュールはRオジサンたちと飲みで埋まったいく。皆、さまざまな思いが胸中に去来しているのだろう。僕の方がR歴は短いだろうけど、「お前と語りたい」というオジサンたちの方が痛手を負っているかも知れない。

すくなくともキャバクラにいって「オレ、エロい」なんて喜んでいそうにない。

Rオジサンたにどんな店で飲みますか、と尋ねると年相応の店ではなく、映りのよくないテレビから八代亜紀が流れてそうな寂れた焼き鳥屋とかを好んで選んでくる。

日本の中高年の離婚は増えている(1985年の倍以上!)。特に結婚20年以上の夫婦の離婚は全体の19%以上を占めていて、なお増加傾向だ(うちは18年だった)。

これからもRオジサンたちは増えていくだろう。「最近、あの人の背中にちょっと郷愁を感じるよね」というオジサンは、実は離婚をしたのかも知れない。

多分これは仕方のない流れなのだと思う。でもそのことによってRオジサンたちに背中を丸めて欲しくない。

たまたま結婚という一つの期間が終わっただけで、人生は続いていく。次に娘と会えるのがいつになるかがわからなくても、会ったときに

「パパ、意外とイケてるじゃない」

と思って欲しい。そう、男はどんな可愛いキャバ嬢よりも自分の娘にカッコいいと思ってもらいたいんだ。

だから僕は年末年始、Rオジサンたちの姿勢を正すという使命感をもって赤ちょうちん巡業に出ていく。
(つづく)


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