初恋と陶酔・会然TREK 2K20▼04
馬骨になってすぐのことだったと思う
平沢進のワンマンライブの開催が告知された
何としても行きたい
しかしあのフジロック大盛況のあとのこと、
あんなステージを見せられたら
私のように何としても行きたいと思う人は大勢いるだろう
チケット争奪戦が熾烈を極めることは決まりきっていた
母と婚約者に頼み込み、
3人名義で3月のZepp Tokyo公演のチケットの先行に申し込んだが
案の定外れ、
無理だと思っていたとはいえライブへの道が閉ざされ落胆した
その矢先、発表されたのが
4月のN◾️Kホール 追加公演だった
ここから私と会然TREK 2K20▼04の長い長い日々が始まる
もはや放っておいても時間の問題だったが
追加公演のチケット先行予約が後押しし、ファンクラブGREEN NERVEに入隊した
この時が一番幸せだった
ケイオスユニオンから来た入会完了メールの末尾には
「それでは、これからも何卒末永く
グリーンナーブをよろしくお願いいたします。」
と書かれていた
こちらこそ、ふつつかな娘ですが…と妙に甘い気持ちを噛みしめながらの入隊
グリーンナーブ先行の倍率も半端じゃないことはもちろんわかっていたが
あぁ、これでライブに行けるかも…と浮かれる心を抑えられず
母親に当日は何を着ていこうかと相談したりしていた
しかし現実はそう甘くなかった
抽選結果発表日、ケイオスユニオンから届いたメールには
チケットをご用意することができませんでした。
大変申し訳ございませんが、何卒ご了承くださいませ。
と書かれていた
そうですか……
ショックが大きいと、そうですか…しか言えなくなってしまう
そっか…そうですか…とつぶやきながら家中をうろうろして自分を納得させた
母親からも気の毒すぎてかける言葉もない、と言われる始末
私のようなチケット先行きっかけで入隊したことが見え見えの新参馬骨よりも
当たるべきグリーンナーブ会員の方はきっとたくさんいる
そりゃそうだ…
ケイオスユニオンからの結婚のご挨拶のような文面は
末永く、お布施をよろしくお願いしますね
という意味だったのではないか
私はグリーンナーブ入隊1ヶ月で
浮かれたふつつかな馬骨から分をわきまえた敬虔な馬骨へと転身した
どうぞお布施をお納めください、私の心はそれで満たされますので
グリーンナーブ先行に敗れた者は主催者先行に挑まざるを得ない
一般販売でチケットを取れたことなんかなかったので、
この先行が最後のチャンスだと思い決死の覚悟で臨んだ
初回は母親、婚約者と友人7名にお願いした
こんなにたくさんの人にチケットを頼んだのは初めてだった
が、結果は全滅
ナメていた、これはまだ決死の覚悟とは呼べない
まだまだ本気を出せる
いよいよ本当のラストチャンス
これを外せばもう追加公演には行けない
親族、婚約者、友人の枠を広げ
さらにプラスして会社の人を含む20人近くに頼み込んだ
会社の人には
少し変わったアーティスト写真なのですが、
私の65歳の推しです
どうか何も考えず、ご協力していただけませんか
と予防線を張った上でお願いした
ああ、その手に乗った螺旋丸のようなものは何なのですか
でも背に腹は変えられなかった
もうなりふり構っていられなかった
これで職場の人に頼まずに1枚もあたらなかったら私は一生後悔すると思った
発表日は出勤だったが発表の時間になると
思わずソワソワしてしまった
結果、2枚当選
とんでもない倍率を思い知ったが
なんとか勝ち取ったチケットだった
発券すると3階席の一番後ろの列だった
首の皮一枚でも繋がれてよかった、上等なオペラグラスを買おう
こうして、私は死ぬ物狂いで会然TREK 2K20▼04のチケットを手に入れた
不思議なもので、そのあとすぐに、
高額転売サイトをうらめしい顔で見続けていた▲03のチケットの譲り先を探している方をTwitterで見つけ
深夜2時という非常識な時間の連絡をお詫びしつつすぐにリプライを飛ばした
するとすぐに返信をしてくださり、とてもスムーズかつ丁寧に話が進み
3時になる頃にはやりとりが完了した
布団に潜りながら感謝と幸運で打ち震えた(Twitterで見ていても馬骨のみなさんは本当に夜行性の方が多く
私のように深夜2時-3時にならないと眠れない人間はTLを見て何気ない安心を得たりしている)
私はたった1日でチケットを持たざる馬骨から東京公演全通馬骨へと転身した
しかし、▲03ライブレポにも書いた通り
忌まわしきコロナウイルスの影響は日を追うごとにライブの開催を絶望的にしてきた
しかも相手はあのN◾️K、開催を許すわけがない
3月下旬、会然TREK▼04は6月への延期が発表された
わたしは延期を少しも残念に思わず、
それよりも中止にならなくてよかった、と心の底から思っていた
中止になるくらいならもう何年先でもいい、何回延期してもいい
▼04を生かしておいてほしかった、それを糧に生きていける
しかし、5月末、延命措置が取られた▼04の容体が急変した
公演内容変更、
会然TREK 2K20▼04は
無観客ライブ「会然TREK 2K20▼04 GHOST VENUE」となった
そうですか…
▼02公演のセットリストをそのまま生で観られるなんて、とずっと楽しみにしてきた
行けない覚悟はしていたが6月7日は仕事のシフトも休み希望を出していた
覚悟をしていたつもりだったがショックなものはショックだった
ただ、何年先でも、何回延期されてもいいと言ったが
平沢進の中には本来なら既に突入していたはずの次のフェーズがあるはずで、
馬骨のくせに、そのためには早く会然TREKには蹴りをつけた方がいいのだろうとか思っていた
幸い、出勤日ではあるものの遅番ではない
定時退社をすれば間に合う
観られなかったかもしれない公演が
確実に観られることになった僥倖を噛み締めよう
ここまでの長かった日々に想いを馳せた
チケットが取れなくて途方に暮れながらも、
どこかでもはやこのままチケットが取れなくても
それはそれで私にとっての平沢進という存在にはお似合いなのでは…?と思ったりもした
だって、私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの…
千年女優の宇宙服を着た千代子のキラキラした瞳が思い浮かぶ
チケットが取れなかった日々も含めて本当に楽しかった
初見であんなに奇妙に思ったレーザーハープ、テスラコイルを見ても今や驚かなくなってしまった
知るということは不可逆変化だ、知らなかった頃には戻れない
初めての感動は、思い出せてももう二度と味わえない
悲しいけれどそういうものだ
初恋よりも初恋らしいこの初期衝動と熱狂
会然TREK 2K20▼04にまつわるこの日々を忘れない
このあと6月20日に開催された
会然TREK 2K20▼04 GHOST VENUEはとんでもないライブとなり
私の人生に降り立った謎、平沢進が新たな幕を切った話はまた別で書き残したい。
最後に、会然TREK 2K20▼04があったら着て行こうと思っていた一張羅をここで供養する
レースギャザーフリルをあしらったヴィンテージ風ブラウスに黒のセットアップ
服装自由の仕事をしているが故に
フォーマルな服を一切持っていない私が持つ中で一番優美なデザインの服だ
次ライブに行ける時には別の一張羅が存在するかもしれないが、
またとっておきの服を着てライブに行ける日を夢みる馬骨でいよう