Done is better than perfect 〜創業3期目を迎えて〜
こんにちは。データインサイトCOOの山元です。
ちょうど 2年前の今日に、この会社を創業しました。
スタートアップ企業ならではのスピード感、役員ならではの日々の責任感/緊張感、自分で生み出した事業ならではの事業への愛など、この 2年間で数々の新しい体験をさせてもらいました。
振り返れば、わずか 2年で 8事業ほど立ち上げ、中には早期に撤退したものもありますが、マネタイズ出来ている/勝ち筋が見えている事業を生み出すこともできました。スタートアップ企業といえば、キラキラしているイメージも強いかと思いますが、その裏には色んな努力、覚悟、決別などなどが入り混じっています。
というわけで、この2年間の学びを書き記し、個々人がどう働くべきか、どう組織を作っていくべきかなど、これから起業する方/スタートアップ企業で働く方に届けばいいなと思います。(自戒の念も込めて…)
完璧を目指すよりも、まずは終わらせる
今回の記事のタイトルにした「Done is better than perfect」という言葉。
Mark Zuckerberg が残した言葉として有名ですが、孫氏にも「巧遅は拙速に如かず」という似たような意味合いの言葉があります。
簡単に言うと、時間をかけて完璧を目指すよりも、とにかく早くやってみてやり遂げてしまおう、といった意味合いですが、スタートアップ界隈でのビジネスの取り回しにおいては非常に重要な考え方になります。
ほぉ〜ん、適当にやってもええってことなん?😁
そうではありません。もう少し解像度を上げてみましょう。
もちろん、何事も完璧を目指したほうが良いのですが仕事を多角的に見た時に、出来上がったプロダクトのUIUX/機能などの品質だけでは仕事は語りきれません。仕事にかけた工数、やり切るスピード、精神的ストレス、社会的価値など色んな観点があります。
QCD を意識して、ゴールに向かう
1900年代初頭、科学的管理法の延長線上で提唱された「QCD」という概念、Quality (高品質) / Cost (低コスト) / Delivery (適時納期) の頭文字を取ったもので、プロジェクトマネジメントの文脈で前職のIBMでは良く使われていた言葉でした。要は、状況に応じて(目指すゴールに応じて)、品質とコストと納期のバランスをどう設計しプロジェクトの完遂に向かうかを管理する考え方。特に ITビジネスは鮮度が命なので、頻繁に QCD の最適解に対する意思決定に迫られます。
また、プロダクト開発を伴うスタートアップ界隈では、
・競合サービスに先を越される前に早くやんなきゃ 😥
・事業と世の中の興味関心がマッチしている間に突き進もう 😋
・とりあえずユーザーに使ってもらわんとわからんやん 😩
・いやなんか、今やらないといけない気がするから急ごう 😤 😠
などの理由で急いで新機能をリリースしないといけない場面が多いです。
経営者はその瞬間の最適解を出し続けているので、今日決めたことが明日に変わることもポジティブな意味で全然あります。
そして基本そういう時って、普通に考えたら QCD の何かを犠牲にすることになります。(ここでウルトラCなやり方で、何も犠牲にせずに突き進むのも経営者に求められることなのかもしれません。ご厚意で助けてくれる仲間を見つけるなど)
この状況だと納期はマスト、でもスタートアップはお金も無ければ人もいない。そうなるとこのバランスにおいて比較的削りやすいのは品質になります。というのも、納期やコストは調整し難いですが、品質は要素分解しやすいからです。
MVP(Minimum Viable Product)を勘違いしないこと
この絵は MVP を語るときによく使われる絵ですが、時速60kmで運転できる移動手段を作る過程において、「車を作ろう!まずは車輪から!はいどうぞ!」と販売したところで移動手段としては価値がありません。「じゃあ車輪を2つにしたらどうや?」と売っても変わりません。「このー!ボディもつけたるで!」と言ってもハンドルが無いので運転出来ません。最終的にはハンドルをつけてようやく価値あるものに進化したわけですが、このプロダクト開発の手法では生産までに時間を要するため、その間に市場ニーズや事業の方向性が変わった場合、サンクコストとなりイマイチな事業として進めるか、撤退することになり得ます。
そこで、ニーズを分解して「まぁ60kmも出えへんけど、歩くよりは早く移動できるで!」とスケボーを売ると、そこにはわずかながら価値が生まれます。スケボーが電動じゃない LUUP みたいなやつになり、自転車になり、バイクになり、スーパーカーになる。前の価値を維持しつつ、進化させていく考え方になるので、無駄撃ちにはならず、ユーザーからフィードバックを得ることも可能です。
さて、QCD の品質の話に戻ると、「要素分解しやすい」の意味が伝わりましたでしょうか?もう少しリアルなケースだと、例えば不動産物件を探すアプリがあったとして、まずは東京だけといったエリアの観点で分解できますし、まずは色んな条件で検索出来なくても一番使われそうな家賃で検索できる機能だけといった機能の観点でも分解できます。
リッチではなくてもユーザーが価値を感じられるコア機能を定義して、どう進化させていくかを考える進め方が「Done is better than perfect」な働き方に繋がります。最終的に目指すゴールにおける品質を下げるわけではなく、取組みのスパンを小刻みにして、各クールでとにかく早くやりきり、PDCA を回して改善しつづけるスキームが重要というわけです。
理論と実態は違う。スピードを求めることで起こる負のスパイラル
論理的というか機械的に見た時、QCDのバランスが取れていれば、上手く行きそうな気がします。しかし、自分自身を含めて人を動かすことはそう簡単ではありません。仕事には「感情」という最もコントロールが難しい かつ QCD に影響する要素があります。
ビジネスシーンであるあるなのが、
「この状態ではまだ見せたくない。この時点で共有したら抜け漏れがあって上司に怒られそう。本来の実力で作ったものを見て、認めてほしい」「怒られるとか他人にどう思われるとかは別に恐れてないけど、シンプルにまだ自分の中で納得いってないから見せたくない」といった感情が働きます。
そして「見せたくない」の感情により、レビューするタイミングが遅れて、全体の納期が遅れます。そして次に、遅れた分だけ品質でリカバリーすることを求められます。そしてそして、日を重ねるごとにどんどん新しい要件が追加されて、当初想定のゴールよりも遥かに遠いゴールが待っています。事業も上手く伸びず、マネージャーも怒り心頭、メンバーのストレスはマックスという最悪の結果に繋がる可能性があります。
自分も他人も不完全であることを認める
こうならないためには、「自分も他人も不完全であることを認める(アドラー的な)」ことで素直な気持ちになれますので、ネガティブな情報があればすぐにチームに共有することが重要です。そうすれば、自分自身で抱え込まずにチームとして困難を切り開くことができます。
(とはいえ、この感情のコントロールはかなり意識しないと定着しません。そして根本的な人間性にも左右されます)
ほな、この負のスパイラルから抜けるためには、どうすればええんや?🤔
とにかくそのフェーズを乗り切ること。やり切れば、一旦ふりだしに戻れます。
前職も合わせて何十個とプロジェクトに入っていますが、大体のプロジェクトで「Done is better than perfect」な働き方をもって今いるフェーズをやる切ることで、チームの士気は格段に上がった経験があります。辛いプロジェクトであればあるほど、生まれ変わったような気持ちになれます。そしてそれは一つの成功体験になり、チームは強くなります。成長には、成功体験と達成したことの喜びが欠かせません。
「Done is better than perfect」 な組織を作るために、経営者/マネージャーが配慮すべきこと
上述の通り、個々人の意識改革は前提として必要になりますが、組織がそれを阻害しないような文化づくりが重要です。
この文化づくりについてはもはや哲学の世界になり明確な答えはないと思うので、個人的な考えになりますが、
① 「自分は不完全である」「もっと素直になろう」と認める努力をしているメンバーに対して、心を閉ざすようなフィードバックをしないこと(感情に任せて怒ったり、全く期待しない等をしないこと)
② 人としてお互いに「居心地がいい」と思いあえる関係になること
で、自主的かつオープンな文化が作れると思っています。
やっぱりどこまでいっても人間なので、冷徹に効率だけを求める働き方は今の時代からは受容されがたい空気を感じます。
怒りたい気持ちをコントロール出来ないのは怒る側の弱さ (もしくは自己満足) であり、その逆境に対しての最適解を考えて臨機応変に対応するのが、今の時代に求められるマネジメントなのではないでしょうか。
そして、信用と同じで人として嫌われたらそう簡単には好きと思われる状態まで取り戻せないとも思います。「居心地がいい」と思いあえることで、自主的でクリエイティブな発言が増しますし、何より楽しく仕事が出来ますよね。
経営者は嫌われる勇気が大事と言われていますが、それは事業と自分自身の視点のみに立った時の話で、やむを得ない結果を正当化しただけだと思っています。だって、嫌われないほうが良いに決まってますよね。世に言うあるべき経営者の虚像に踊らされずに、自分が見てきた人たちの背中から学んだことを素直に取り入れ、そして何よりも自分自身のスタンスを信じ抜くことが経営において不可欠だと感じます。
コンフォートゾーンを抜けることが成長への近道であると言われてますが、快適さと成長性が天秤にかけられる固定観念を潰して、コンフォートでありながら成長できる組織を作っていきたいと思います。
さいごに
最後までお読みいただきありがとうございました!
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