【ミュージカル】『Les Misérables』2021年版を観てきました
無事、幕が上がるのかハラハラしておりましたが、予定通り開幕した『Les Misérables』東京公演。
トリプルキャスト、クワトロキャストによるシャッフルキャストでの公演で、マニアの方は、公演期間中に、何度も脚を運ぶのが当たり前の、ミュージカルの金字塔と呼ばれる作品です。
何度も脚を運ぶので、自分が今年初めて観る公演を「マイ初日」、最後の公演を「マイ(千穐)楽」と呼んだりする。
もはや、『Les Misérables』は、祭りです。
数年に一度、数ヶ月間の祭り。
祭りに参加する事を、代表曲「民衆の歌」の歌詞から「列に入る」と言います。
列に入れよ 我らの味方に
砦の向こうに 憧れの世界
ええ、ええ、劇場の扉の向こうには、本当に金字塔にふさわしい世界が広がっておりました。
通常、公演期間中にネタバレを書くのは、あまりしないのですが、「祭り」は例外。ネットを徘徊すれば、『Les Misérables』に関するレビュー記事、楽曲解説、などなどは、実に多くの方が書いてくださっています。
今更、たいしたマニアでもない私がなにか書いても、ただの自己満足に過ぎないのですが、2021年版を観たよ、という備忘録として、心に残った事を書き残しておこうと思いますが、まずは私のレミゼ史から紐解いて行こうと思います。
マイ「レミゼ」史
何度も言いますが、私は「レミゼマニア」ではありません。
でも、ミュージカル好きとして、初演から何度も観ております。毎回観ているわけではないのですが、何回観たかは把握しておりません。
「レミゼマニア」じゃないから、数える趣味がないのです。
「レミゼマニア」じゃないから、パンフレットも、毎回買うわけじゃないのだけど、実家に置きっぱなしのモノを含めても5-6冊はあるから、少なくとも10回くらいは観ているのかなぁと思っております。
人生で観たミュージカルの回数で言うと、2番目に多い作品だろうと思います(1番目は『ライオンキング』)。
中でも、記憶に鮮明に残っている観劇は、
日本初演(1987年)
BW(1991年)
新演出版の初演(2013年)
この3回でしょうか。
初演時は、父に連行されての観劇。
フランス文学を愛する父は、原作のファンで、それがミュージカルになったと聞き、興味を持ったようです。
予習として、日本語訳された「ああ無情」を読めと言われ、読んだのですが、辛気臭いし、救いはないし、神様なんかいないし、みんな死んじゃうし、なにより長い!!!
こんなのミュージカルにして、何が面白いの?
と、不貞腐れて、どうせつまらないから観なくていい!とぶつくさ言いながら、お供したので、よく覚えています。
でも劇場で観たら!!!!
あんなつまらない小説を(失礼!)、こんなにワンダフルなエンターテイメントに昇華させられるのか!と感動。
ミュージカルという表現形式の無限大の可能性に、ガーンと頭をぶん殴られた作品でした。
それまでも、もちろんストレートプレイも含め観劇は好きでしたが、とりわけミュージカル観劇を、自覚的にライフワークにしようと思ったのが、このレミゼ観劇だったように思います。そういう意味では、人生を決定づけた作品です。
で、ミュージカル観劇がライフワークになった私は、勢い余ってブロードウェイにミュージカルを観に行った最初が1991年。
リュックひとつの貧乏旅行。日々の食費や宿泊代を切り詰めて、ミュージカルを観て歩きました。
チケット代にいくらつぎ込んだか計算しておりませんが、NYで食べた最高に贅沢な食べ物が、具なしの「どさんこラーメン」だった(笑
高かったんですよ。ラーメン。
1日の食費がラーメン一杯で消えましたから。
そこまでして観に行ったBW版レミゼでしたが、全編ほぼ歌の作品で、ほとんど聴き取れない。
絵面が美しい作品というわけでもないので、全然楽しめませんでした。。。
本場で楽しむには、修行して出直さなければ!と、新たな宿題をもらったBW版のレミゼ観劇でした。
その後、宿題遂行として(笑)何回か観ているうちに、日本では、2013年に新演出になりました。
たまたま友人からお誘い頂き、まさかの最前列ドセンでの観劇。
ピットから楽器のマイク越しではない生音が聴こえて来て、ど迫力の中での新演出版。
慣れ親しんだレミゼではない、新たな舞台。
この少し前あたりからだと思いますが、キャストの平均年齢が徐々に若返る傾向がありまして、その意味でもチャレンジし続けるレミゼカンパニーに畏敬の念すら覚えました。
また、最前列はやはりすごい。文句なしにすごい。
帝劇は、ピットが大きくて、最前列でもステージまで遠いのだけど、それでもステージが迫ってくる感覚は、ピットなしのステージと変わりませんでした。
作品のパワーが違うんだろうと改めて思いました。
最近は、チケットの取りにくさNo.1ミュージカルのレミゼ。加えて、空前のミュージカルブームで、上演作品の数が多いため、観たい作品が多く、お財布事情的に、レミゼは間隔が空き気味。でも、上演されるたびに、観たいなと毎回気にはなります。
「チケット取るのが大変だから」と言ってる時点で、熱意が足りないわけで、「チケット取りにくいから燃える!」くらいでないと、レミゼファンとは言えないなぁとつくづく思います。
だから、私はレミゼマニアどころか、レミゼファンですらないな、と思っているのです。
でもね。
観に行くと満足度が異様に高いのが『Les Misérables』。
ああ、追いチケしたくなる。
というわけで、今回も、観てから、やっぱり、チケット探しております。
だったら、初めから何回分か取れよ、自分!
これぞまさにLes Misérables!←大袈裟w
2021年版の注目ポイント〜シュガーさん
今回、チケットを取るにあたり、唯一のこだわりは、シュガーバルジャンを観る!という事でした。
通称「シュガーさん」こと、佐藤隆紀さんはこんな方。
いや、ビジュアル紹介してどうする!
シュガーさん、とても美しい高音のテナーシンガーなのです。レミゼには、前回の19年版から登場しました。
当時はまだ30代前半。
バルジャンの史上最年少は、吉原光夫さんだそうですが、おそらくその次くらいの若さでしょうか。
バルジャンって、プロローグの時点で40代半ば、物語の終わりは60代半ばの設定なので、30代の俳優さんが演じるにはものすごい老け役なのです。
なのに、ここ10年くらい、どんどん若手が投入されている。40代で初お目見えは、まずない。
海外のクリエイティブチームの意向だと聞いておりますが、ただでも若く見える日本人なのに、なんの必要があって?と不思議になります。
しかも、シュガーさんこのビジュアル。
どう見ても、学生役の世代に見える!
と、19年版のキャストが発表された時にびっくりしたのです。キャストの若返り、ついにここまできたか!、と。
19年版は、残念ながら観ることが叶わず、そんな事はすっかり忘れた昨年、『Chess!』を観に行ったら、なんか、凄く素敵な日本人が、1人だけプリンシパルキャストで出てる。すごく素敵な声。英語のセリフ、ベラベラ喋ってる。滑舌も抜群にいい。
しかも、国籍不明なイケメーン♡
私とした事が、シュガーさんをノーマークのまま、『Chess!』観に行っておりました。
幕間にプログラム見て、レミゼに出てたと知り、「あ!」と思い出した。
話し声も含めて、ツヤツヤのお声に一目惚れ、いや「一聴惚れ?」しまして。
ちょうど観に行った公演は、終演後にトークセッションがあり、シュガーさんも登壇されましたが、謙虚で、お人柄が良さそうなオーラが出まくっていらっしゃる。完全にやられました。
ちょ、ちょ、なにこの方!
なぜ、今までまったくノーマークだったの?
と、自問自答しました。猛省しました。
からの、21年版レミゼ。
普段はキャストで公演を選ばない私も、今回ばかりはシュガーさん一択です。
さて、シュガーさんのバルジャン、若いバルジャンでしたね。
もちろん、歩き方や所作など、工夫はしてらっしゃる。カツラやメイクで、見た目は老けていて。台詞回しも、年齢とともに微妙に変えていらっしゃいました。
でも、歌うとお声がツヤツヤ。
「Bring him home」などは、もう見事で。
足がぶらぶらの状態で座って、猫背のままで、どうやったらあの声が出るのでしょう。
ホントにあの声はgiftedだなぁと思いました。
実はバルジャンは役としてあまり好きじゃないので、これまで注目して観たことがなかったのですが、今回はバルジャンばかり観てました。
そんな新しい見方ができたのも、シュガーさんのおかげ。
ほぼ全ての役が、複数キャストで、シャッフルキャストが売りのレミゼ。ひとつの役を、いろんな役者さんが引き継いで、座組が変化するからこその楽しみ方だなと思います。
若い頃から、何度も観て来たレミゼですが、気づけばバルジャンが同世代になり、注目するようになるなんて、私も歳とったな。。。と思ったのは内緒。
2021年版の注目ポイント〜マリウスかアンジョルラスか
レミゼファンの女性たちにとって、どんなに論争しても平行線で答えがでない問題があります。
いわゆる、マリウスVSアンジョルラス問題です。
世の中には、2種類の女性がいまして、マリウス派かアンジョルラス派かに分かれます。
体感的には、アンジョルラス派が多い気がします。
私は判官贔屓なので、マリウス派です。
と立場を明らかにしておいて。
今回は、バルジャンに注目しながら観る、というコンセプトだったから、マリウス推しは、一旦封印しておりました。
だって、マリウスはタダでもややこしいバルジャンの人生に、さらにお困りごとを持ち込むトラブルメーカーなのです。
シュガーさん困らせる奴は、敵です(笑
というのは冗談ですが、実は今回はスケジュールの都合で、マリウスは第一希望のキャストさんではなく、アンジョルラスは第一希望のキャストさんだったのです。
これはですね。いくら役としてマリウスが好きでも、比較するのは不公平というものです。
そもそも、マリウスのどこが好きかというと、革命を主導する立場にありながら、知的な人だからです。
実際は、革命の最中、色ボケになってて、役立たずぶりを発揮してますけども。
おそらく、アンジョルラス派の方は、マリウスのそういうところが、お気に障るのでは?と思います。
でも、色ボケじゃなくて、正常な判断をできる状況なら、カフェが空っぽになるほどの犠牲を出さずに、撤退するなどの決断もできる、冷静で勇気あるリーダーだったのではないか、と妄想したりします。
そもそもですね。
マリウスはいいとこの坊ちゃんなんですよ。本読んで、静かにお勉強してたい人なんです。
それが、革命にひっぱり出されて、ちょっと困ってる。
女をとるか、仲間をとるかなんて聞くのは、野暮です。
勢いで、皆と戦うと言ってしまうのだけど、本心はコゼットと駆け落ちする事しか考えてない世間知らずのボンボンなんですよ。しかも、エポニーヌの思いには全く鈍感なKYボーイ。
まあ、恋人や夫にするには、かなーり微妙なタイプですが、自分に正直で、人間臭くて、現実味のあるキャラクターで、私は大好きなんです。
屈折してます。我ながら(笑
って言うのが、新演出になってから、全く描かれてないのです(涙
あれじゃ、ますますマリウス推しが減る。
マリウスのいいところ、ひとつも描かれてないじゃないか。。。
ここ数年、私の周りに増殖するアンジョルラス派。
おそらく、新演出の効果が出てる証拠だと思います。
ちなみに。
21年版のアンジョルラス、カッコよかったです。
めっちゃ、カッコよかった。
脳みそ筋肉系リーダーですけれど、皆の士気を高めるカリスマ性が際立ち、マリウスの情けない感じとのコントラストがより鮮明になっていました。
危うく、アンジョルラス派の列に入ってしまいそうになりました。いやいや、マリウス頑張れ!
2021年版の注目ポイント〜リピーターさん向けへのシフト
今回、私にとっては、もう何度目かわからないレミゼだったわけですが、同行した連れは、レミゼ初体験でした。
ジュニア向けに簡素化して書かれた小説は読んだ事があったそうですが、所々、理解が追いついていかず、あとからRickyテキトー解説をレクチャーしました。
で、解説しながら、ふと思ったのです。
解説してる内容は、ほとんど旧演出か、映画版からのTipsで、21年版で抜け落ちてしまっている部分だなと。
すでに書いたように、マリウスのキャラクターの描き方が物足りない事になっていただけでなく、ほかにもいろんな情報が抜け落ちているんだなと。
というわけで、連れには、2014年に公開された映画版を勧めておきました。
レミゼは、リピーターの多い作品です。
群像劇なので、登場人物は多いけど、ストーリーもシンプルだし、すでに周辺知識をお持ちで、コンテキストを理解した上で観劇する観客に、説明的な部分は必要ない。
台詞や歌の歌詞の上で矛盾がおこらなければ、キャラクターのバックグラウンドや、時代背景、時間の流れなどは、言い方は悪いですが、多少雑に描いてもよいのかもしれません。
その分、役者さんの演技や歌で魅せる方により重きを置く演出の方が、顧客満足度が高いのでしょう。
また、子役がラストシーンまで出るレミゼ。労基法の関係で、9時を超えてしまうと、子役は舞台に出て来られません。
21年版は、開演時間は早めていない一方で、休憩時間が長くなっているため、実質的に、これまでより最低でも10分程度削らないといけなかったのではないかと思います。
これは、大変な事です。
そのため、全体的に曲のテンポは早くなり、溜める芝居を減らし、セリフも早口になっていた印象です。
とにかく大忙し。
それで、なんとか9時に間に合って、しかもカテコにも子役たちが一回は出て来られました。
間に合った事に、思わず拍手してしまいました。
そんなわけで、細かい背景情報を削るのは致し方ないのだろうと思います。
ぜひ、リピーターの方は、ご新規さんに補足情報を授けてあげてほしいと思います。
また、web上には、沢山のTipsが溢れていますので、ビギナーさんは、ググるなどして自分でも少し情報を補うと、より楽しめると思います。
そして、ソワレで観劇する場合は、休憩のトイレはお早めに。
帝劇の場合なら、チケット持って、階段をB1かB2まで降りて、劇場の外のトイレまで行くと、比較的空いています。
毎度、劇場内のトイレが混み合って、休憩時間が伸びています。
帝劇のスタッフさんは、比較的のんびりしていて、トイレもあまり急かしたりしません。
めちゃめちゃ急かす劇場も、どことは言いませんがあるんですけど、帝劇はおっとりなのです。
だから、みんな自分で急ぎましょう。
そうしないと、子役抜きのカテコになります。
そんな事も、リピーターさんは、ビギナーさんに伝授してあげて欲しいと思います。
おわりに
再演を重ねるたびに、ブラッシュアップをする『Les Misérables』。
21年版は、諸々の社会状況に対応する演出で、もしかすると次回は元に戻るのかもしれません。さらに進化するのかもしれません。
ぜひ、次回もそれを確かめに行きたいと思います。
それと、次回は最低2回くらいはチケット取ろう(笑
忘れそうだから、ここに記しておこうと思います。
関係者の皆様は、日々『One day more』の心境でしょうが、無事に全公演、完走出来ることを神様に祈っています。
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