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あふれたコップ 着目するのは最後の一滴?それとも中身?
3月に入りましたね。春、別れの季節。そして、私にとっては辛い辛い花粉の季節の到来。くしゃみが止まらず、目の周りは真っ赤っか。目と鼻を取り外して洗いたいくらいの、小学校教務主任のリッケンです。
子どもたちが行動を変えたり、行動を起こしたりした時のことは、よくあふれ出たコップに例えられます。
子どもたちが行動を起こしたとき、私たちは、きっかけとなった最後の言葉かけや出来事に注目しがちです。もちろんきっかけとなった言葉や出来事を読み解くことも大切ですが、もっと大切なのはその子の心のコップの中身を意識することです。
子どもたちの行動は、あることをきっかけに突然変わったように見えます。でも実は、長い長い心の変化を経て、行動として顕在化したということがよくあります。
今日はそんなあふれ出た心のコップについて、エピーソードを交えながら考えていきます。
掃除をしない男の子の話
ある先生が1年生を担任していたときのことです。何度声をかけても掃除をしない男の子がいました。
私なら、「いやいや、掃除はみんなでやるものでしょ。あなただけやらないとかないから。はい、〇〇くん、一緒にやるよー!」と強めの声かけをしてしまうところ。
その先生は、無理にやらせるということをせず、「〇〇くん、掃除の時間。掃除するよ」と声かけを続けながら気長に待ちました。
2学期の終わり、12月に入ったころ、男の子にこう声をかけたそうです。
T「○○君、もうそろそろ掃除やろうか」
S「うん。そうだね」
何とこの言葉がなんとハマったのです。
その日以降、その男の子は毎日掃除をするようになったそうです。コップからあふれ出た瞬間です。
大切なのは?
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大切なのは、コップの中身です。行動としては掃除をしない状態でも、その子のコップの中に少しずつたまっていっていると意識することが大切です。
「次の声かけでコップからあふれ出すかもしれない」そう信じて声かけを続けたからこその結果です。
最後の一滴の言葉に着目して、再現すればうまくいくのかというとそうではありません。5月に、「もうそろそろ掃除やろうか」と声をかけてもうまくいかなかったでしょう。半年以上の声かけと気長に信じて待つ時間があったからこその最後の一滴です。
これはうまくいったときの最後の一滴の話です。では、トラブルの最後の一滴はどうでしょうか。
友達の言葉に泣いた男の子
あるクラスで、男の子が周りの子に嫌なことを言われて泣きました。
最後の一滴に着目すれば、相手の子の言葉について取り上げ、「相手の嫌がることをしちゃダメでしょ」と今後同じことがないように指導をして終わりです。
ところが、その指導ではうまくいかないことがままあります。原因はコップの中身にあります。コップの中身に着目すると違ったものが見えてきます。
コップの中身に着目すると?
担任の先生は、これは、いつもの様子と違うと感じ、その男の子に「最近何か困っていることがあるんじゃない?」と聞いてくださいました。すると、
「みんながいつもぼくのことバカにしたり、きつい言い方をしたりしてくるんだ」
とこたえてくれました。最後の言葉は引き金になっただけで、悲しい気持ちがコップの中にたくさんたまっていたのです。
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担任の先生は自分たちが話した言葉で、相手を悲しい気持ちにさせていないか考えるようにクラス全体に指導してくださいました。
その後、きつい言い方をする子がいると、「その言い方はきついんじゃない?」とお互いの言葉を気にするようになったそうです。
その男の子は、また、元気に学校へ通えるようになりました。
まとめ
よいことは、少しずつコップの中身が溜まっていっていることを意識します。次が最後の一滴になるかもしれないと信じて続けましょう。
トラブルは、コップの中身に着目してその子の物語を読み解くようにしましょう。
どちらもコップの中身に着目することがスタート地点です。
ぜひ意識してみてください。
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