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だってあの子ほめるところがないんだもん 〜 5つの承認レベルの話 〜

前回の記事の更新から2週間ほど空いてしまいました。

インフルエンザ・新型コロナの流行などの影響を受け、お休みの先生のクラスに入ったり、校内研修や学校公開の準備をしたりと文字通り目の回るような忙しさでした。ふ〜ようやく一息です。

今回は、「承認」の話です。

認めるのが大切、ほめるのが大切そんなことがよく話題に上がります。よし!やってみよう!とその気になってがんばってみたことがある人も多いのではないでしょうか。

若いころの私もそうでした。が、しかし、これが続かない。「だってあの子ほめるところがないんだもん」そんな言葉が頭をよぎります。うまくほめられず、次第に思い通りにいかない子どもたちに小言ばかり言うようになっていきました。

一方で、ほんわかあったかくてほめ言葉があふれる女性の先輩のクラスもありました。どうしたらあの安心感が生まれるのだろう?自分だってほめているのにどうしてそんなクラスにならないのだろう?と、あこがれながら不思議に思っていました。

その謎はその先生が退任するときに、2年生の女の子が書いた手紙で解けました。

○○先生、わたし、○○が苦手でした。でも、○○先生がいつも、「だいじょうぶ。○○ちゃんならだいじょうぶよ」っていってくれました。おかげでできるようになりました。わたしは、○○先生の「だいじょうぶ」という言葉が大すきです。今までありがとうございました。

「だいじょうぶ」ああ、なんていい言葉なんだろう。まるごと自分の存在を認めてくれる言葉。それを聞いていた私も、なんだか心がじんわりと温かくなりました。

そういえば、この先生は、転校する子がいると「転校してもあなたならだいじょうぶよ。離れていても応援しているよ」という思いを込めて『だいじょうぶだいじょうぶ』という絵本をプレゼントもされていました。この言葉をとても大切にされていたことが伝わってきます。


若いころの私がやろうとしていた「ほめる」という承認と、この存在を丸ごとを認める「だいじょうぶ」という承認には、ずいぶんと違いがありそうです。今日はこの承認について紐解いていきます。

5つの承認レベル

承認には次の5つの段階があるといわれています。

①結果承認
②プロセス承認
③行動承認
④意識承認
⑤存在承認

それでは一つ一つ詳しく見ていきましょう。

①結果承認

・100点とれてすごい!
・逆上がりができるようになったね!
・試合に勝てたね。すごい!

結果を承認します。一般的に行われている「ほめる」がこれにあたります。

②プロセス承認

・(100点とれてすごい!)宿題だけじゃなくて、毎日自主学習に取り組んでいたからだね。
・(逆上がりができるようになったね!)いろんな子にできるようになるコツを聞いて練習していたもんね。
・(試合には負けてしまった)でも、毎日練習が終わった後、自主練にも取り組んでいたよね。確実にうまくなっているよ。

結果に関わらず、過程を承認します。


③行動承認

・ゴミを拾ってくれてありがとう。
・気持ちのよいあいさつだね。
・集中して取り組んでいるね。
・気持ちのよい手の挙げ方ですね。

結果と関連しない行動に対しても承認します。継続的な行動ではなく、その場限り、一時の行動であっても承認します。

④意識承認

・今、教科書を出そうとしていたね。えらい!
・(教科書が出ているね。)一生懸命授業に取り組もうとする気持ちがうれしいです。
・今度のテストでがんばろうと思っているんだね。応援しているよ。

まだ行動していないが、しようとした気持ちを承認します。


⑤存在承認

・あなたがいてくれると、ありがたい。
・あなたならだいじょうぶよ。
・今日もあなたに会えてうれしいよ。

存在自体を承認します。


若い頃のわたしがしていたのは?

若いころの私がやっていたのは①の結果承認、よくて②のプロセス承認でした。この女性の先生がされていたのは、⑤の存在承認でした。


一番チャンスの多い承認は?

①~⑤の承認の中で、一番チャンスの多い承認、逆に少ない承認はどれでしょうか?

下の図のような頻度になるはずです。

①結果承認、②プロセス承認、③行動承認、④意識承認、⑤存在承認の順に承認のチャンスが増えていくはずです。

つまり、⑤の存在承認をしていたその先生は、①~⑤までの承認をかなりの頻度で行っていたということです。

一方で、当時の私はいつも①結果承認、よくて②のプロセス承認といった具合でした。常に結果を出す子ばかりなら大丈夫ですが、そんなことはあり得ません。つまり、承認の数が全然足りていなかったということです。うまくいくはずがないと今ならわかります。


子ども視点で見てみると

子どもの立場になって5つの承認を見て見ましょう。

①結果承認
結果が出たときだけ承認してくれる先生

②プロセス承認
がんばり続けたときだけ承認してくれる先生

➂行動承認
行動したときだけ承認してくれる先生

④意識承認
やろうと思ったときだけ承認してくれる先生

⑤存在承認
どんなときでも承認してくれる先生

子どもたちはどんな承認をしてくれる先生が好きでしょうか?言わずもがな、⑤の存在承認です。存在承認がありながら、その時々のがんばりに合わせて認めれくれる先生が理想ではないかと思います。


より承認が必要な子ってどんな子?

そう考えると、上の方の承認だけで止まっていることの問題点が見えてきます。

全ての承認が誰しもに必要という前提で話します。

クラスの子どもたちを思い浮かべてください。より承認が必要な子はどんな子でしょうか。

結果を出せている子でしょうか。そうではないはずです。努力しているけれど結果の出ない子、努力しても続けられない子、努力しようと思っても行動に移せない子などではないでしょうか。

そんな子どもたちに対して、結果承認だけしていても、承認される機会がなく、がんばる力が湧いてきません。

「だってあの子ほめるところがないんだもん」は結果承認だけをしていた若いころの自分の残念な言葉です。

承認のレベルをどんどん下げて、⑤の存在承認まで意識できるようになれば、教室内に承認があふれます。きっと、温かい教室になっていくはずです。「承認のレベルを下げる」を意識してみてください。


5つの承認レベルについては、鴨頭さんの下の動画が参考になりました。

上司 → 担任の先生
部下 → 子ども

と読み替えながら動画を見ていただくとより学びが深まると思います。よろしければご覧ください。


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