【音楽遍歴】2004年に聴いていた音楽とベスト3アルバム
はじめに
今回は2004年1月から2004年12月に聴いていた音楽とベストアルバムについて書こうと思います。
この年は2000年代で唯一、Fuji Rock FestivalにもSummer Sonicにも行かず、単独公演のライブも8本と少なめ。CDの購入枚数も、この数年よりも減っていて、リスト自体もちょっと地味目なものになっています。
今回は、そんな時期、今からちょうど20年前に購入したアルバムとベストアルバムについて書いてみたいと思います。
2004年に購入したアルバム
ビッグネームとしてはU2くらいで、あとは渋めの中堅バンドの新作が多い印象。特に、Franz Ferdinand、Kasabian、Keane、The Killers、The Zutonsといったその後大きくブレイクするバンドのデビューアルバムが多くリリースされていることもあって、世代交代を予感させるリストになっています。
Meltdown(Ash)
One Plus One Is One(Badly Drawn Boy)
Jukebox(Bent Fabric)
Heroes To Zeros(The Beta Band)
Little Thoughts - EP(Bloc Party)
All Watched Over By Machines Of Loving Grace(Brave Captain)
Digital Ash In A Digital Urn(Bright Eyes)
Up At The Lake(The Charlatans)
Louden Up Now(!!!)
Winchester Cathedral(Clinic)
Nightfreak & The Sons Of Becker(The Coral)
The Cure(The Cure)
Satan's Circus(Death in Vegas)
Universal Audio(The Delgados)
Remixes 81...04(Depeche Mode)
Absent Friends(The Divine Comedy)
Please Describe Yourself(Dogs Die in Hot Cars)
From A Basement On The Hill(Elliott Smith)
Out Of Nothing(Embrace)
Palookaville(Fatboy Slim)
Franz Ferdinand(Franz Ferdinand)
Salute Your Soul(Future Pilot AKA)
Split The Difference(Gomez)
Happiness in Magazines(Graham Coxon)
Yr Atal Genhedlaeth(Gruff Rhys)
All For A Reason(Haven)
Mississauga Goddam(The Hidden Cameras)
Tyrannosaurus Hives(The Hives)
The Lost Riots(Hope of the States)
Solarized(Ian Brown)
Antics(Interpol)
Back To Bedlam(James Blunt)
Just Beyond the River(James Yorkston and the Athletes)
Kasabian(Kasabian)
Hopes and Fears(Keane)
Somewhere Only We Know(Keane)
Hot Fuss(The Killers)
Aha Shake Heartbreak(Kings of Leon)
The Libertines(The Libertines)
Rendezvous(Luna)
Lifeblood(Manic Street Preachers)
Kleptomania(Mansun)
You Are The Quarry(Morrissey)
This Is Hope(Mull Historical Society)
Welcome To The North(The Music)
Spotlight(Mutemath)
Destroy Rock & Roll(Mylo)
Panda Park(90 Day Men)
Over The Counter Culture(The Ordinary Boys)
Uh Huh Her(PJ Harvey)
Together We're Heavy(The Polyphonic Spree)
Monsoon(Preston School of Industry)
Around The Sun(R.E.M.)
Stealing Of A Nation(Radio 4)
Up All Night(Razorlight)
Scissor Sisters(Scissor Sisters)
Lay Of The Land(Seachange)
Now Here Is Nowhere(The Secret Machines)
Left Luggage At The Peveril Hotel(Six. By Seven)
Sixbyseven:04(Six. By Seven)
Final Straw(Snow Patrol)
Suburban Rock 'n' Roll(Space)
The Complete Works Volume Two(Spiritualized)
All Years Leaving(The Stands)
Everybody Loves A Happy Ending(Tears for Fears)
The Invitation(Thirteen Senses)
Let's Bottle Bohemia(The Thrills)
How To Dismantle An Atomic Bomb(U2)
U.S.E(United State of Electronica)
Winning Days(The Vines)
OK Cowboy(Vitalic)
A Ghost Is Born(Wilco)
Who Killed The Zutons?(The Zutons)
Curve509(Curve509)
Da・Da・Da(Curve509)
アンテナ(くるり)
Chronology(Grapevine)
猿の記憶(Science Ministry)
色色衣(スピッツ)
シフクノオト(Mr.Children)
Brand-New Motor Works(Motorworks)
Below the Radio(Various Artists)
2004年に聴いたベスト3アルバム
3枚に絞り込むのが結構難しいので、まず追加で何枚かを簡単に紹介します。
最初は、Franz Ferdinandのデビューアルバム"Franz Ferdinand"。2世代くらい前のテイストをベースにしながら、今の空気を取り入れたポップセンスが絶妙なサウンドは、チープさの中に音の分厚さをキッチリと表現。シンプルな楽曲とプリミティブなアレンジの食い合わせも良く、ちょっとまとまり過ぎた感じがありますが、ヒネたポップさは個人的には好きです。
続いては、Interpolの"Antics"。「柔らかさ」や「優しさ」をキーワードにした人肌の温度感の世界を展開する衝撃的な変化。ただ、単純にポップなだけでなく、不安定な安定感ともいうような新しい面もアピール。一方で、独特のロマンティシズムは健在で、決定力も問題ありません。激しいストロボライトの明滅ではなく、光源の周りだけボンヤリと浮かび上がった音空間の居心地の良さは文句なし。
そして、Wilcoの"A Ghost Is Born"。前作の四方八方から予想外の音が飛んで来る違和感は減り、遊び的要素を持ったギターサウンドへとシフト。とは言っても、以前のオルタナカントリーのポジションにそのまま収まることはなく、過去のキャリアに縛られないリベラルかつ高さ方向の進化を感じさせる内容で、実験的要素と元来持っていたサウンドセンスが融合して、異質のものの衝突の面白さがバンドのDNAレベルに昇華された佳作です。
最後は、Gomezの"Split the Difference"。前作の流れを引き継いで、リズムへの傾倒が更に進み、繊細なイメージの楽曲も筋肉隆々へと変貌。ボーカルは相変わらずヘタレながらも、リズムは太くタイトになり、ギターはしなやかさを増して攻撃的なサウンドアプローチがフィットしていて、発展途上ながら瞬間的に耳を捉えるパワーを得たところは今後が非常に楽しみな1枚です。
そして、ベスト3アルバムは以下です。
Panda Park (90 Day Men)
シカゴの4ピースバンド90 Day Menの3rdアルバムは、ノイズをフィルタリングして美しさを強調したMogwaiのようで、ピアノの表現力の豊かさが印象的。静かな衝動を儚げなピアノと艶やかなボーカル、そして音的には対極にある潰れたドラムスの衝突によって産みだされた緊張感と美しさは格別。
リードトラック"Even Time Ghost Can't Stop Wager"では、ピアノやギターが少数のフレーズを繰り返し演奏し、クラシック的アプローチによるポストロックを表現し、"When Your Luck Runs Out"や"Chronological Disorder"もメロディやフレーズに目新しさはないものの、その衝突によって不安定な緊張感と美しさが生み出され、その巨大なエネルギーで伝わってくるようで、様々なモノを飲み込みながら自己増殖を繰り返すロックに対するポストロックという言葉がピッタリ。
ひょっとしたら、あらゆる格好良いフレーズが出尽くしたとしても、彼らならそれらを元にして全く新いいフレーズや楽曲を産み出せるんじゃないか、そんな気にさせてくれる作品です。
Universal Audio (The Delgados)
グラスゴーの重鎮The Delgadosの約2年ぶりの5thアルバム。彼らは2005年に解散し、2022年に再結成を発表してライブは行ったものの、新しい作品はリリースしていないので、2024年現在ではこのアルバムが彼らの最新作です。
リードトラック"I Fought The Angel"では、ザラッとしたギターによって表現の変化を予感させたかと思えば、"Everybody Come Down"はBelle & Sebastianを彷彿とさせるポップな曲で、キュートなメロディが小気味よく動き回ります。そのBelle & SebastianのStevie Jacksonがハープで参加している"Get Action!"や躍動感に溢れる"Girls of Valour"では展開と共にネコの目のように曲の印象やスケール感が変わります。
サウンドは近2作と比べて分厚い音のレイヤが取り払われ、生々しくもバラエティに富んでいて、曲のクオリティが恐ろしく高く、その楽曲群をリズム隊が支え、ギターが肉付けし、他の楽器が微妙な表情を付けて、ボーカルが主張するというシンプルな方法論との相性も抜群。ベーシックトラックは基本に忠実、細部は理念に忠実というバランス感覚も秀逸で、万人向けの無難な音楽ではなく、万人が楽める刺激を持った音楽として"Universal Audio"を完成させました。
From a Basement on the Hill(Elliott Smith)
2003年10月に亡くなる前の3年間に渡るレコーディングで遺したデモやノートを元に、過去の作品をプロデュースしたRob Schnapfと元ガールフレンドのJoanna Bolmeがミックスを行って完成させたアルバムです。
冬の日差しのようにほのかに暖かいメロディで始まり、美しいギターとピアノの助けを借りて進んでいく"Pretty (Ugly Before)"の物静かな力強さ、注意深く触れないと壊れてしまいそうな脆い"Twilight"や"The Last Hour"、子供の頃の記憶が沸き起こって来る"Little One"などの訴求力など、楽曲の持つ力は絶大。
内向性、外向性の両方の曲と共に非常に繊細で、安定と崩壊の臨界点で何とかバランスを維持しているような危うさの中、アルバムを貫いているのは、作り手と受け手が自然体で対峙し、音楽というメディアでコミュニケーションするという理想的なゴールを目指す姿。「楽曲」という最もプリミティブな要素で実現できる才能に驚嘆すると共に、その喪失は残念でなりません。
おわりに
今回は2004年1月〜12月までに購入したアルバムとベスト3アルバムについて書きました。ちなみに、2004年のイギリスの年間アルバムチャートはこんな感じのようです。
Scissor Sisters(Scissor Sisters)
Hopes and Fears(Keane)
Greatest Hits(Robbie Williams)
Songs about Jane(Maroon 5)
Call off the Search(Katie Melua)
Anastacia(Anastacia)
Confessions(Usher)
Feels Like Home(Norah Jones)
Final Straw(Snow Patrol)
II Divo(II Divo)
この年購入したアルバムで年間チャートの50位までに入っていたのは、1位のScissor Sisters、2位のKeane、9位のSnow Patrol、14位のU2、17位のFranz Ferdinand、41位のThe Killers、45位のRazorlight、46位のThe Zutons、49位のEmbraceの9枚と、珍しくたくさん入ってました。
当時はイギリスのチャートには全く興味がありませんでしたが、Scissor SistersとKeaneが年間チャートのワンツーでRobbie Williamsのベスト盤より上位というのは今さらながら驚きでました。ただ、Robbie Williamsの発売日を調べたら10月ということなので、1ヶ月でこの順位ってのはもっと驚きな訳ですが。。。
当時はScissor Sistersは買っていたのに完全にノーマークで、彼らの凄さを実感したのはFuji Rock Festival '06のホワイトステージでのライブを見たときでした。あのときの2日目ホワイトステージのYeah Yeah YeahsからScissor Sistersの流れはもの凄かったなー。おっと、この話はまた別の機会に。