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【Live Report】 Travis@心斎橋クラブクアトロ(1999年9月27日)

はじめに

久々にTravisのライブを見に行ったので、これまでに見たライブのレポートを書いてみます。これまでに見たTravisのライブは、フェスティバルを入れて、以下の8回で、初めて見てから23年。そりゃ、フランも俺も頭が薄くなるわけだ。

1999年9月27日 心斎橋クラブクアトロ(この記事はこのときのレポートです
2001年7月27日 フジロックフェスティバル'01 Green Stage
2003年8月3日  サマーソニック'03  Osaka Indoor Stage
2008年7月25日 フジロックフェスティバル'08 Green Stage
2009年2月24日    Zepp Osaka
2013年6月9日  Hostess Club Weelender
2017年2月13日  Zepp Divercity
2022年10月15日  EX THEATER ROPPONGI

上記以外にも2007年にサマーソニック、2014年に単独公演、2016年にフジロックフェスティバルに出演しているので結構来日してますが、フルセットを聞ける単独公演になると1999年、2009年、2014年、2017年、2022年の5回。この中で、手元にレポートの原稿がある1999年、2008年、2009年のライブレポートを順次公開して行きます。内容はエディトリアルな修正をした程度で、ほぼ当時公開したそのままなので、今読んでみると色々と言いたくなることもあるでしょうが、その当時は「こんな感じだったんだ」ということでご容赦下さい。なお、今年(2022年)のレポートもその内公開しようとは思ってます。

この記事は1999年9月27日の初来日のレポートです。ちなみに、Wikipediaのトラヴィスの項目の日本公演のところには、1998年が初来日になっていますが、これは多分間違いです。

ライブレポート

どんなライブになるか予想できなかった。1stアルバムでは、瑞々しい音楽に対する初期衝動を余すことなく外へ発信していたが、2ndアルバムではグッと音を整理して、最小限の音で自分たちの作り出す音を再現して見せた。どちらも、彼らの持つ音楽を、ある角度から捉えた姿ではあるが、こうしたベクトルの違いがライブでどのように表現されるのかが全く予想できなかった。元々は、ライブをOasisのNoel が見て気に入って、彼らのライブのオープニングアクトに起用したという話もあり、そうした逸話と彼らの新作"The Man Who"の音が直接リンクできなかった。もちろん、それが一つの見所である訳だが。

本国イギリスでは5月にリリースされた新作"The Man Who"が依然として売れ続けており、絶好のタイミングでの来日だ。本国での知名度を考えると非常にキャパが小さなクラブクアトロはオーディエンスで埋め尽くされていた。年齢層はかなり広く、最近のライブにしては男性の比率が高かった。

開演時刻を10分ほど過ぎてフロアの照明が落ちる。メンバーが普通に、本当に普通にステージに現れる。みんなニコニコしてる。アルバムジャケットから受けるクールな印象とは全く違い、非常にフレンドリーだ。1曲目から静かに大きく、しかし止まることない不思議なグルーヴが会場に放たれる。バンドの形態は、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムと一般的なものだが、セカンドアルバムの曲においてはキーボードが曲の雰囲気を作り出すのに大きな役割を果たしていた。サウンドの要はギター2本と、ボーカルであることには間違いがないが、キーボードがあることで、ギターの音が効果的に浮かび上がっていた。そして、歌がうまい。少しThom Yorkeに似ているような気もするが、低音から高音まで無理なく歌い、感情移入が非常に自然で、聴いているととにかく引き込まれていく。さらには、曲によっては12弦ギターを使ったりして、予想以上に分厚い音を出してくるところにも驚いた。

オーディエンスグイグイ煽って引っ張っていくタイプのライブではなく、オーディエンスの周りを緩やかにうねっているグルーヴにオーディエンスが手を伸ばし、それに捕まって揺られるような、ゆったりとした感覚。それは、抑え気味のトーンのアルバムの音だけを聞いていては想像できなかった彼らの音楽の魅力だ。オーディエンスとのコミュニケーションを非常に丁寧に取ろうとしていたところにも好感が持てた。知っている日本語を披露するのはお約束としても、丁寧できれいな発音で日本人にも分かりやすく話かけてくるところは、「ああ、良い兄ちゃん達なんだろうなあ」と思わせるのに充分だった。

「次はイギリスでのニューシングルになっている曲だ。この曲は願いの曲なんだ。誰でも、流れ星を見たらお願い事をして、誰にも話さないよね。そんな願い事の曲なんだ」というMCと共に始まった"Turn"はアルバムの中でも繊細でそれでいて力強い佳曲だったが、ライブでも過多な感情移入をすることなく、この曲の持ち味を完璧に再現したあたりは彼らの底力を見たような気がした。

「次の曲は3枚目のアルバムに入れる予定の曲だ」と言って演奏した"Coming around"は非常にかわいらしい曲で、バブルガムミュージックとの境界スレスレで踏みとどまったような曲調に非常に惹かれる。とにかく、良いメロディーを作ることができる能力というのは、ミュージシャンにとって圧倒的な力であることを再認識させられるライブだった。

アンコールではアコースティックギターだけで、「うまく弾けなかったらみんな助けてね」と茶目っ気たっぷりに演奏し、難しい部分になると苦笑いしながら必死にギターを弾く様子が何ともいえず人間ぽかった。不要な背伸びを排除し、等身大の自分自身を表現したライブはアルバム同様に直接心に響いてきた。もっともっと、大きくなれるバンドだということを確信できたライブだった。

(1999年9月30日執筆)

セットリスト

  1. Funny Thing

  2. All I Want to Do Is Rock

  3. Good Feeling

  4. Writing to Reach You

  5. As You Are

  6. Why Does It Always Rain on Me?

  7. Village Man

  8. Good Day to Die

  9. More Than Us

  10. Driftwood

  11. Turn

  12. Slide Show

  13. Coming Around

Encore

  1. Happy

  2. 20

  3. Blue Flashing Light

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