【音楽遍歴】2003年に行ったライブ④
はじめに
2002年は見に行ったライブの本数が少なかったのですが、2003年はMagic Rock Out、Fuji Rock Festival、Summer Sonicの3つのフェスなど、合計13本のライブを見に行きました。特に、2回目の単独公演になったSigur Rósのライブは凄まじく、これまでの人生で体験したライブで最高のものでした。
今回はそんな中から、Summer Sonic '03について書きたいと思います。この年は2日間参加したのは確実なのですが、2日目のメモがどこかに行ってしまったので、2日目については何を見たかくらいをサラッと書くのに留めます。
ライブ情報
Manic Street Preachers（2003年1月24日＠Zepp Osaka）
Doves（2003年2月1日＠心斎橋クラブクアトロ）
Magic Rock Out '03（2003年2月8日-9日＠神戸ワールド記念ホール）
Johnny Marr + The Healers（2003年3月3日＠心斎橋クラブクアトロ）
Badly Drawn Boy（2003年3月27日＠心斎橋クラブクアトロ）
The Libertines（2003年4月9日＠心斎橋クラブクアトロ）
Sigur Rós（2003年4月16日＠新大阪メルパルクホール）
The Thrills（2003年5月10日＠心斎橋クラブクアトロ）
Fuji Rock Festival '03（2003年7月25日-27日＠苗場スキー場）
Summer Sonic '03（2003年8月2日-3日＠WTCオープンエアスタジアム）
Mogwai（2003年11月10日＠On Air Osaka）
Super Furry Animals（2003年11月20日＠Big Cat）
delays / British Sea Power（2003年12月16日＠心斎橋クラブクアトロ）
出来事もろもろ
1日目
初年度の出演バンドに惹かれて見に行ったものの、あまりの運営の酷さにうんざりして「二度と行くかい！」と決心したはずなのに、メンツの豪華さにそんな覚悟のない決心は簡単に揺らぎ、フジロックフェスティバル3日間参加の1週間後というキツイ日程にもかかわらず2日間参加。知名度という点ではフジロックフェスティバルの出演バンドには圧勝しているだけに、運営に一抹の不安があるものの、やっぱり気分は高揚してきます。
前回参加したときにはリストバンド交換に長時間がかかったので、最低でも8時頃には並べるように5時半起床、6時半出発。朝早いようですが、苗場と比べると朝飯前です。お盆休みですが、まだ早朝だったので阪神高速はガラガラで、7時30分には南港に着き、会場のオープンエアスタジアム正面の駐車場に車を停めました。ここは、1日700円と安い上、会場から徒歩1分という超便利な立地なこともあって、既にかなりの車で埋まっていました。そして、速攻で前回はガラガラだったインテックス大阪のリストバンド交換所に向かうが、既に行列は500m以上になっていて、行列が動き始めるのをひたすら待ちました。
リストバンド交換は8時から始まりましたが、何故リストバンドの交換ごときでこんなに時間がかかるのかと思うほど時間がかかり、結局交換が終わったのは9時。一応、想定範囲だったので軽いムカツキを感じるくらいで、WTCのマクドナルドで朝食。このカジュアルさがサマソニの魅力です。
空調が効いていて、ヒンヤリした風が吹き抜けるWTCから、太陽が肌を突き刺すようなオープンエアスタジアムの前列へ向かって、The Polyphonic Spree待ち。ステージには不思議なデザインの垂れ幕がかけられ、ハープ（ハーモニカではなく、正真正銘のハープ）を始めとして、楽器やマイクの数は異常な多さ。初日のメインステージ一発目ということもあって、既に多くのオーディエンスが集まっています。開演時刻になると、ステージ横のスクリーンでカウントダウンがの映像が流され、カウントがゼロになった瞬間に大所帯白装束バンドThe Polyphonic Spreeが登場しました。メンバーを数えてみたところ、24人くらい。ということで、これまで見たBelle & SebastianやSpiritualizedを超えて、似たようなスタイルの渋さ知らズオーケストラと同じくらいの規模。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムス、ブラス、ストリングス、パーカッションはまだしも、ハープ、コーラス隊の他に何とテルミン奏者までいます。ステージの袖から次々に登場するメンバーに軽い笑いが起こる中でライブはスタート。The Polyphonic Spreeの作り出す音楽の幸福感はアルバムで表現されていた以上で、オーディエンスのパワー残量100%ということがあったにせよ、会場の熱気をMaxまで引き上げていきます。アルバムでは冷静沈着に音を重ねながら聴き手を高揚させていく印象でしたが、ライブでは熱さと力強さが押し出されていて、覚醒感のあるフレーズが繰り返されるうちにモッシュまで始まりました。髪を振り乱してオーディエンスを煽るボーカル、取り憑かれたように乱舞しながらのコーラス隊が作り出す人間復興的サウンドをベースに様々な楽器が絡み合い、多くのオーディエンスにとって未体験の種類の人力サイケデリア。トップバッターとしての役割を十二分に果たしてライブ終了。分厚い音でアタマがクラクラになりました。全てが最高。
The Raptureを見ようとインテックス大阪に向かったら、メンバーの乗った飛行機の乗客が急病で空港に戻ってしまうというドラマのような出来事のため、出演時間が変更になったということで、早くも死体置き場状態になりつつあるインドアステージ後方で休憩。
ホイミをかけたくらいには体力も戻ってきたので、エレファントカシマシを見るためにオープンエアスタジアムへ。2000年のときとは違って、後ろの方まで人工芝が敷き詰められていて、砂埃は軽減されていたこともあって、暑さを除くと比較的快適。前まで行って見たいというほど興味はなかったので、PAブース後方に座り込んで社会見学状態。タイトで不気味な程に太いバックの音だけでなく、ボーカルの宮本浩次のテンションが尋常ではない高さで、曲を始めたドラムスに対して「突然始めるんじゃねーよ。俺が入れねーだろ。バーカ」と罵倒する等、何だか見てはいけないものを見たような気まずさの中でハイテンションな演奏は続き、ラストの曲が終わると、「暑苦しいな、俺」と言いながら去って行きました。エレファントカシマシで知っている曲と言えば、「今宵の月のように」だけだったので、何とも言えないステージングに呆気に取られ、これまでの印象が大きく変わりました。
14時半頃にInterpolを見るためにインテックス大阪に移動したのですが会場入口辺りが大渋滞。どうやら前のMando Diaoが入場規制が出るほどの客入りで、入れ替えがスムーズに行っておらず、結局30分近くも並ばされるハメに。並んでいる途中でライブ開始時刻が過ぎましたが、一応開始時間は遅らせるくらいの知恵は働いたようで、中に入ってしばらく経ったところでInterpolの演奏開始。ニューヨーク出身とリバイバルメソッドの組み合わせはハヤリの一派にカテゴライズすることもできる訳ですが、80年前後のポストパンク～ニューウェーブムーブメント的音作りはちょっぴり異色。アルバムではJoy DivisionやEcho & The Bunnymenを彷彿とさせる重暗しさとポップさが同居していましたが、どんなライブになることやら。アルバムのジャケットと同じように薄暗いステージに現れたメンバーは上下スーツでキメていて、他のバンドとは雰囲気が全く違います。シルエットが浮かび上がるような青や緑の照明を使いながら淡々と演奏が続きましたが、ポップ寄りの曲が多かったので初めて聴いた人にも充分にアピールできていたと思います。楽曲に漂う微妙な重さを伴った美意識が展示場という退廃的な環境と絶妙にマッチ。深めのリバーブがかけられ、ヒンヤリしたメロディとギターフレーズに耳も心もクールダウンできました。こういうタイプの新しいバンドをブッキングするのがサマソニの差別化可能な競争力。熱さとノリを前面に出すフェスのシーケンスにクサビを打ち込んだ情緒的で美的感覚を感じさせるライブパフォーマンスは満足度充分。
17時頃に再度オープンエアスタジアムへ移動。一時の勢いがなくなったとはいえ、ヘッドライナークラスのStereophonicsがサードヘッドライナーとして登場するのも日本ならではの贅沢さ。彼らの出番が近づく頃には日差しも随分と穏やかになってきたので、真ん中辺りで見ることにしました。開演時刻になると、ちょっと垢抜けたヘアスタイルのKelly Jonesを先頭に、メンバーと3人の女性コーラスが登場。ライブは最新アルバム"You Gotta Go There to Come Back"の"High as The Ceiling"でキックオフ。ゴスペルやサザンロックの影響を強く感じさせる楽曲は、本人達も大ファンで、ツアーも一緒に回ったというThe Black Crowsが取り憑いたように太く、グラマラス。ロックンロールモードの"Madame Helga"もアルバムを上回る泥臭さで、ギュインギュイン鳴らされるギターに身体の揺れも自然と大きくなり、"The Bartender And The Thief"が一度目のハイライト。以前よりもエッジが丸くなった感じはありますが、攻撃性を強めたサウンドが五月雨式に繰り出され、ロックンロールの持つエネルギーを余すことなく放ちます。また、スローテンポのトラックのデキも素晴らしく、"Since I Told You It's Over"の黄昏れメロディにKelly Jonesのシャガレ声がハマリ過ぎ。技アリの"Mr. Writer"の次に演奏された"Local Boy in The Photograph"が二度目のハイライト。メロディ、演奏、ボーカルが完璧な形で組み合わされた楽曲は、リリースから長い時間が経過しても色褪せることはなく、この日一番の盛り上がりを見せました。オーディエンスの反応が冷め気味だったのは気になりましたが、パフォーマンスのクオリティはさすが。
Stereophonicsが終わると、前方ブロックから人が出てきた後に、その倍くらいの人がブロックへ入っていきます。次のアクトはアルバム1枚だけで頂上へと駆け上っていったThe Strokes。メンバーが登場すると地鳴りのような歓声が沸き起こり、その人気の高さにビックリ。セットリストは3分の2くらいが2001年リリースの"Is This It"からで、残りは10月にリリース予定のニューアルバムからで、いずれも全力疾走の3分間ロック。彼らの音はスピード感とポップ感覚が親しみやすい一方で、ゆで卵のようにツルンとキレイ過ぎるところにどうも興味が沸かず、どの曲を聴いても身体は反応するものの、イマイチ乗り切れない。この日も「ストッパーさえ外れたら楽しめるんだろうなあ」と客観的に思っている自分が場違いな気がして、途中からトイレに行ったり、会場内を散策したりして過ごしました。何曲か演奏した新曲も即効性の高い必殺のメロディを持っていて、またまた大ヒットになりそうな予感。最後に「マイウェイ」を流暢な日本語で口ずさみながら、1時間弱のパフォーマンスは終了。
この日のヘッドライナーはRadiohead。適度に休みながら過ごしたこともあって、前方に行く体力は残っていたけど、会場から出るのに時間がかかると駐車場から車を出すときにハマリそうな気がしたので、出口のすぐ横でスタンバイ。前回の"Amnesiac"リリース後のツアーは、"OK Computer"以降の音を咀嚼するのに必要なプロセスだったけど、"Hail to The Thief"の場合はアルバム自体が非常にライブ感に富んでいて、そのプロセス自体は必然であるわけではなく、前回のツアーのような切迫感貼りませんでした。「コーンバーンンワァーー」という前回の来日時と同一人物とは思えない不気味な挨拶でライブスタート。ライブが始まってしまうと、RadioheadとThom Yorkeの存在感と表現力に飲み込まれ、頭でっかちに考えていたライブの意味付けなんてどうでも良くなってしまいます。取り憑かれたように首を振りながら歌うThom Yorkeの姿に、近未来的な夜景とステージ右上方に見える三日月の取り合わせがやけにマッチしていて、特に"Kid A"以降のエレクトロニカの影響が強い楽曲の世界観が増幅されていきます。セットリストは新作の曲がやや多いものの、"The Bends"や"OK Computer"からの曲も演奏され、個人的には大好きな"Fake Plastic Trees"を生で聞けたのは大きな収穫。演奏もテンションが高く、"Paranoid Android"、"Idioteque"、"Everything in It's Right Place"という流れで本編終了。"Everything in It's Right Place"では前回のツアーと同じく、サンプリング音を操るJohnny Greenwoodを残して、メンバが一人ずつステージを後にするという演出。このタイミングで駐車場へダッシュ。ところが、駐車場の入口に着いたときにステージ方向から大歓声。どうやらアンコールがあった模様。ラッキーなことに、オープンエアスタジアムのステージやスクリーンは駐車場の入口からでも肉眼で見えるので、ここで"My Iron Lung"を聴いて、車をZepp Osakaの近くまで移動させて"Sit Down, Stand Up"と"Street Spirit(Fade Out)"を車の窓を開けて聴いた。遠巻きに見るステージは小指の先くらいの大きさにしか見えなかったし、音も小さくしか聞こえなかったけど、天保山の夜景、ステージとRadioheadの様子と音楽、その他の雑音全てを箱庭に閉じこめて、外側から俯瞰したような贅沢な気分も味わえました。
2日目
2024年の今、当時のパンフレットを見ながら誰を見たかを思いだしたところ、昼間から夕方にかけては、Mew、Kings of Leon、The Kills、Starsailor、Hot Hot Heatを見たような気がします。笑ってしまうくらいの完全屋内な一日です。Mewの音楽が超美しかったこと、The Killsが何かエロかったことを覚えてます。
ヘッドライナーはインドアステージでTravis。東京ではやらなかった"Why Does It Always Rain on Me?"と"Peace the Fuck out"のアンコールまで見た後、インテックス大阪からオープンエアスタジアムまでダッシュ。同じようなことをしている人は結構多く、「頑張って走りましょう！」と声をかけられました（笑）
この年のオーラスはBlur。確か、"Tender"は会場で聴いたような気がします。ただ、何か疲れ果ててしまったこともあって、この日車を止めていたZepp Osaka横の駐車場に早々に向かい、途中で聞こえてきた"Song2"に合わせてジャンプしてい
ました。
おわりに
今回は2003年に行ったライブの内、サマーソニックについて書きました。正直言って、フェスティバル感はフジロックフェスティバルの足元にも及びませんが、体力が削られた時に空調の入っている会場で休んだり、コンビニやマクドナルドで買い物ができるのは非常に便利。あと、単独で呼ぶのは難しいけど、ショーケース的にこれから来そうな新しいバンドをブッキングしてくれるのは良いところ。ただ、便利すぎるところが徒になって、すぐに楽な方へ行ってしまうのは。。。しかたないか、人間だもの。
ということで、2003年に行ったライブシリーズは次回で最後で、下半期に見に行った単独公演について書いてみたいと思います。