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【Live Report】 Pulp@IMPホール(1998年9月22日)

はじめに

rockin'on sonicでのPulpのパフォーマンスが素晴らしかったので、コチラに書いた1998年のライブレポートの長尺版を書いてみたいと思います。オリジナルは1998年9月に書いたもので、若干内容を修正しています。

ライブレポート

前日からの予報されていたとおり台風がライブ当日の午後に近畿地方に上陸しそうだった。会社の昼休みにイベンターに電話をしてみて「今日のPulpのライブは予定通り行われるんですか」と聞いたら、「もちろん、やりますよ」明るく答えられてしまった。こうなったら、もう行くしかない。当初の予定通り、昼から会社を休んで台風の中、大阪へ向かうことにした。会社の人たちは、「こんな雨なのにライブなんて行かない方がいいんじゃない?」とか「大変だね」とか言うけど、グラストンベリーに比べると会場は室内だし、なにしろあのPulpをIMPホールという小さいホールで見ることができると思ったら大変でも何でもない。

午後1時半頃に会社を出て駅に向かおうとするが、予想以上に雨と風が強く、100mほど歩いただけで身体中ビショビショになってしまった。仕方ないので、一旦家に戻って、シャワーを浴びてから車で大阪へ向かうことにした。50キロ規制の高速をしばらく走り、その先の高速が渋滞しているというので途中で一般道に降りると、今度は道路が冠水していたり、こちらも結局渋滞が続いていたりと、結局会場に着くまでに3時間少しかかってしまった。

IMPホールは京橋にあるこじんまりとしていたホールだ。心斎橋クラブクアトロほどは狭くもないけれど、後ろの方でゆっくり見ることもできる。グラストンベリーの11万人に比べると100分の1も入るだろうか。でも、こんな小さな会場でPulpを見ることが出来るなんて日本ぐらいだろう。会場で少し話した外人さんの旅行者は「こんな小さなホールでPulpを見れるなんてクレイジーだ」と驚いていた。

予定より15分くらい遅れて客電が落ち、"This Is Hardcore"のディストーションのかかったギターの音が鳴り響きメンバーがステージに現れる。スモークに赤い照明が当てられ、幻想的な雰囲気のオープニングだ。しかし、Jarvis Cockerはステージには現れない。イントロが終わった頃にJarvisが袖から現れ、変なパントマイムのようなパフォーマンスをしながら歌いはじめた。CDを聞いている限りでは"This Is Hardcore"なんて凄く地味な曲だったにも関わらず、ライブで聞くと全くそんな感じはなく、Jarvisのボーカルは非常に声量があるし、演奏も安定感があり、どっしりとしたサウンドを叩き出す。1曲目が終わるとMCが入る。「ここへ来るまでトラブルあったでしょ?大丈夫だった?」グラストンベリーでは「You survive three days. Respect!」と言っていたが、今日もある意味で過酷な状況だった。こんな風に、嵐を従えたPulpのライブが始まった。

その後もおかしなパフォーマンス、クルクル変わる表情などオーディエンスに対するサービス精神を惜しみなく発揮しながらの演奏が続く。水色の青いTシャツを中に着込んで、ジャケットにパンツ姿のJarvisは力強く歌い上げたり、心の底から絞り出すように感情を込めたりと、声の表情が非常に豊かだ。"Joyriders", "Help The Aged"や"Dishes", "T.V. Movie"といった曲が続いていき、大好きな"Somethings Changed"へとつながる。この曲の叙情的な雰囲気と、ささやくようなJarvisのボーカルは最高の組み合わせだ。曲の間には必ずMCを入れてジョークを混ぜながら進めていくことで、オーディエンスとの距離感を全く感じさせない。"The Fear"から"Party Hard"とギターを中心としたハードなサウンドの曲で本編は終了。ここまで約1時間。時間が短く感じられる、とても楽しいライブだ。

アンコールの1曲目は"F.E.E.L.I.N.G.C.A.L.L.E.D.L.O.V.E."だ。この曲も"Different Class"の中では"Underwear", "Somethings Changed"と並んで好きな曲だ。イントロはベースラインとドラムのリズムセクションを強調して始まり、ダンスミュージックっぽいアレンジに仕上げられていた。続いて"Glory Days"を演奏し、最後(だろうと思った)"Common People"のイントロが始まる。これで爆発一歩手前のフロアが一気に弾けた。みんなが飛びはね、ダイブする客も出始めた。"I want to live like common people~"からのコーラスは大合唱になり、凄まじい盛り上がりを見せた。この曲で体力を使い果たした。最後のコーラスなんて息が上がってしまって半分くらいしか歌えなかった。それでも、Jarvisがステージ左袖のスピーカーのところに来たときには一番前まで行って手を突き上げながら歌ってた。この辺では既に意識は飛んでたような気さえする。

"Common People"の喧噪が終わった後、再びアンコールが起こる。「もう、出てこないかな」と思っていると再びメンバーが登場。「今日の嵐の中来てくれた全ての人に感謝を送ります。それから、このビルを出てから泳がなくてすむことを祈ってます」というMCを挟んで"I Want You"が始まる。"Common People"で沸点に達した身体をクールダウンしてくれるようなメランコリックでロマンティックな局長と、Jarvisの優しくオーディエンスを見つめながら歌うスタイルがまっていた。

しばらく、身体を揺らしながら聞いていると今日のライブのことがフラッシュバックしてきた。「ありがとう。また、次のツアーで会いましょう」の声と共にメンバーはステージを去っていった。ライブ慣れしていて観客をつかむのが非常にうまいバンドだった。そして、演奏の正確さ、歌のうまさを含めて、終わったときに「楽しかった」といえるライブだった。Pulpの真骨頂はライブにある、そう言い切れるライブを体験できた。台風の日に行われたと言うことを含めて、今年最も印象に残るライブの一つになるのは間違いない。

(1998年9月24日執筆)

セットリスト

  1. This Is Hardcore

  2. Help the Aged

  3. Joyriders

  4. Dishes

  5. Seductive Berry

  6. Something Changed

  7. TV Movie

  8. A Little Soul

  9. The Fear

  10. Sylvia

  11. Party Hard

Encore 1

  1. F.E.E.L.I.N.G.C.A.L.L.E.D.L.O.V.E

  2. Glory Days

  3. Common People

Encore 2

  1. I Want You

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