【音楽遍歴】2000年に行ったライブ②
はじめに
1998年から本格的にライブを見に行くようになり、この年も大体1ヶ月に1本のペースで見に行っていました。
2000年はFuji Rock Festivalには参加せず、新たに始まった都市型フェスSumemr Sonicの大阪の方に参加しました。正直言って運営はどうしようもなくクソでしたが、初日のメインステージがMuse、サブステージがSigur Ros~Coldplayで始まり、Grandaddyが出演したりとラインナップは絶妙でした。そして、冬にはダンスミュージックのフェスティバルElectraglideにも参加し、真夜中のUnderworldの映像と音ににぶっ飛びました。
単独公演はThe Chemical Brothers、Primal Scream、Oasis、Beck等の大物が来日しましたが、個人的にはリアルタイム世代にも関わらず、このとき初めて見たPet Shop Boysがメチャクチャ楽しかったです。
今回はそんな中から、下半期に見に行った3本のライブに関する出来事について書いていきたいと思います。
ライブ情報
The Chemical Brothers(2000年1月15日@Zepp Osaka)
Primal Scream(2000年2月15日@Zepp Osaka)
Oasis(2000年3月11日@ワールド記念ホール)
Ocean Colour Scene(2000年4月18日@ベイサイドジェニー)
Beck(2000年5月17日@大阪城ホール)
Pet Shop Boys(2000年6月20日@Zepp Osaka)
Summer Sonic 2000(2000年8月5-6日@WTCオープンエアスタジアム/インテックス大阪)
Badly Drawn Boy(2000年9月30日@心斎橋クラブクアトロ)
Richard Ashcroft(2000年10月21日@IMPホール)
Electraglide(2000年11月24日@幕張メッセ)
Mansun(2000年12月16日@梅田Heat Beat)
出来事もろもろ
Summer Sonic 2000
Summer Sonicの記念すべき第一回目。東京は富士急ハイランド、大阪は南港で行われました。大阪の会場はWTCの横にある更地がステージ1(メインステージ)、そこから歩いて10分弱のところにあるインテックス大阪の一部がステージ2(サブステージ)という今の規模を考えると非常にこぢんまりとした構成。ただ、家から近い(車で1時間少し)のと駐車料金が安い(1日500円)というアクセスが良いことと、メンツの強力さは非常に魅力でした。
初回というのを割り引いても運営はクソでした。リストバンド交換にとにかく時間がかかり、ステージ1からZepp Osaka(昔は南港にあったのです)を超えたあたりまで行列が続き、しかも遅々として進まず。結局、ステージ1に入るのをあきらめて、ステージ2の状況を見に行ったら、そこですんなりリストバンド交換終了。こっちでやってるなら、それを言わんかい。
初日はステージ2でGlowというドイツのバンドやくるりをチラ見して、ステージ1に移動。お腹が減ったので、WTCの中にある冷房が効いたうどん屋さんで「山菜そば定食」を食べました。これが都市型フェスの便利なところです。その後、灼熱のステージ1に移動して、Triceratopsを見て、前年にとんでもないライブを見せてくれたMansun。今回は1週間程前にニューアルバムをリリースしたばかりというタイミングでの来日。気難し屋の印象の強いPaul Draperが何とTシャツとジーンズで登場し、「モットモットサワゲー」という謎のMC。フェスを考慮してなのか、セットリストは旧作と新作から満遍なく選曲されたもので、狂気はちょっと後退したものの、バランス感覚とスケール感は着実にアップした印象がありました。その後は再びステージ2に移動して、冷房の効いた室内で寝そべりながらWeenとThe Bluetonesを見て、この日のラストはTeenage Fanclub。初日のラストにしてはちょっとメランコリーが強過ぎる音でしたが(東京のラストとしては最高だった気がします)、その澄んだ美しい音は疲れた身体に驚くほどスッと入ってきて、強烈な印象こそありませんが、初日をシッカリと締めくくってくれました。
2日目はMuse、Sigur RosとColdplayという、今となってはフェスのヘッドライナーを務めるようなバンドが早い時間に登場し、鮮烈な印象を残す日本デビューを飾りました。Museはアルバムを聴いたときにはRadioheadフォロワーのバンドの一つという感じでしたが、パフォーマンスは圧巻。何かに取り憑かれたようにライトハンドでギターを演奏し、生み出される分厚い音のエネルギーは強烈。スリーピースとは思えない驚愕のアクトでした。この日のステージ1はこれで終了なので、ステージ2へ移動。残念ながらキャンセルとなったEelsのピンチヒッター桃乃未琴を後ろの方で見た後に、Sigur Rosを見るために前方へ。これがMuseに負けず劣らず圧巻のパフォーマンスでした。MCは全くなく、ラストの曲が終わっても軽く手を上げて引き上げるという地味な素振りに似合わず、夫の存在感は圧倒的。永遠に続くのではないかと思うような、押し寄せては退いていく美しいギターと記号的な言葉を紡ぐボーカルのリピートに完全に脳イキしました。間違いなくこの日のハイライトの一つ。続いて、デビューアルバムをリリースしたばかりのColdplay。今や東京ドームのチケットを取ることさえ難しいバンドも、このときはまだオーディエンスも少なく、僕も最前列、Chris Martinから数mのところで見ることができました。このとき聴いた"Yellow"は素晴らしかったです。
Coldplayの後は、後ろの方でウトウトしながらNumber GirlとSupercar。あんな轟音&ノイズたっぷりのギターをバックにしても眠けりゃ寝れるもんです。一眠りして体力が戻ったのでGrandaddyは前の方で見ました。Jason Lytleは音そのままにシャイ。ローファイなアナログサウンドはそこはかとなく美しく儚げで、この時間が永遠に続いて欲しいと思うほど。そして大トリはThe Flaming Lips。サイケデリックな映像をスクリーンに映し、大袈裟に銅鑼を叩き、紙吹雪を投げまくり、指人形や鳩のおもちゃで演出する、とにかく楽しませ続けるパフォーマンスで、オッサンの底力を存分に見せてくれました。ラストの"Somewhere over The Rainbow"にはそれまでの喧噪をクールダウンする以上の効果があり、最後の最後ということもあって、何だか胸が熱くなりました。
運営はクソだったけど(2回目)、家から1時間少しで見に行ける距離で、素晴らしいアクトを見ることができたのは良かったです。特に、Sigur RosやColdplayがすぐそこで演奏しているのを見れたのは末代までの自慢です。
Badly Drawn Boy
予想や期待は良い意味でも悪い意味でも裏切られることの方が圧倒的に多い訳で、Badly Drawn Boyこと、Damon Goughに対する印象は、外見こそ「真面目でパッとしない風貌」だけれど、音は現代的なセンスと自己のルーツ的な部分をバランス良くかつ分かりやすく聴かせるところがあるので、「偏執狂タイプで大量の機材を1人で操るのでは」などと勝手に思っていました。
そして、そんな予想は見事なまでに外れます。Damon Goughがタバコをふかしながら、片手にウイスキーのボトルを持って、曲の間に酒をあおりながら、ダラダラとステージが進行。正直、やる気がないのかと思うような適当さで、イントロが終わった直後に「あ、悪い悪い、間違えちゃったよ~」と言いながら中断したり、歌が始まる直前に「あ、そうそう、この歌はね~」などとトーク開始。演奏のミスも多く、曲間でMCが入りす過ぎるので、流れはブチ切れ。挙げ句の果てには、箱の中から取り出したおもちゃを持って、「こいつはポケモンよりすっげーんだぜー」と歌う「ポケモンブルーズ」まで歌い始める始末。
これが計算かも知れないと思ったのは、"Disillusion"のイントロが終わって、「ちょっとストップ!」と言った直後に再び始まったジャストタイムのビートと演奏のタイトさ。まさに一変といった感じで、その後は、おふざけも少なく、演奏を続けていき、次第に会場をまとめ上げて行きました。ただ、「僕はずっとマンチェスターに住んでてさ」というMCの後でBruce Springsteenの"Born In The USA"をカバーし、プロモーションビデオ同様に右手を突き上げて歌う様は、本気と冗談の境界がひたすら曖昧で、巧く煙に巻かれてしまったような1時間40分でした。
Electraglide
神戸から遙々幕張まで行った一番の目当てはもちろんUnderworld。去年の苗場での軌跡の追体験を期待しての遠征でした。21時開場の幕張メッセ国際展示場には長蛇の列ができていましたが、入場は比較的スムーズで、ほとんど待つことなく入場することができました。中に入って驚いたのは会場の大きさで、フジロックのホワイトステージとグリーンステージの中間程度の広さ。まあ、去年のUnderworldの集客力を見ると妥当と言えば妥当なのかも知れません。
ほぼ定刻にOrbitalのライブ開始。この時点ではあまり熱心にかれらの曲を聴いたことがなかったので、社会見学的な立場で見ていたのですが。これが素晴らしかったです。ビートは直接的で、アナログっぽいシンセサイザーの刻みは半音ずつずれていき、常にこちらの期待をはぐらかす、練りに練られたダンスミュージックでした。かといって、難解でも頭デッカチでもないストレートさで、この絶妙のバランスの上で完成度が非常に高いパフォーマンスを見せてくれました。
Orbitalのライブ後、約1時間のインターバルをおいてUnderworldのライブ。とにかく、開始直前の会場の人の多さと緊張感、期待感の膨らみは尋常ではなく、ステージに何か動きがあるたびに嬌声と絶叫が響き渡る、そんな欠乏感が充満した異様な雰囲気でした。こちらもほぼ定刻にライブ開始。今回はセットリストやビジュアル一新後の初めての大規模ライブで、オープニングは"Cowgirl"。ビジュアルチームのTomatoのビデオやレーザーを多用した新しい視覚的要素に加えて、アレンジも変更されていました。
ところが、どうも微妙に「コレじゃない感」があって、途中でダレてしまう自分がいました。やはり、去年の奇跡は苗場の環境が計り知れないポジティブの効果を持ったからなのだろうか?もちろんそれもあるだろうけど、フジロックではオーディエンス側が放ったエネルギーが彼らの音楽の触媒となり、それが圧倒的なグルーヴを生み出していたのに対して、今回は会場の熱気を取り込むことができず、彼らの音楽を媒介としてそのまま戻ってきていただけのような感じ。ライブならではのプラスαに欠けている気がしました。
ところが、やっぱり"Born Slippy"の究極の予定調和の威力は凄まじく、長尺のライブでダレ始めたオーディエンスをグッと引き寄せるのに成功しました。ただ、今回はレーザーを利用した演出が多かったため、究極まで光を閉じこめて一気に解き放ったときのあの感動は体験できなかったのが残念。インタビューでは「Darren Emersonの脱退は影響ないよ」と答えていまさいたが、本当はとてつもなく大きな影響があるんじゃないだろうかという思いが強く過りました。
本編終了後、時計がもうすぐ午前3時に鳴ろうとしたとき、再び彼らはステージに戻ってきて、今夜はもう一曲できるんだぜー」と言った後に演奏した"Moaner"。この曲の強烈なビートと有無を言わせない説得力、フロアを飛び跳ねるレーザーの演出は本物でした。それが、往復とも深夜バスで幕張まで遠征したお土産になりました。途中のダレた感覚と最後の圧倒感のギャップが非常に気になりましたが、現時点の彼らの音とパフォーマンスが詰まった2時間半だったと思います。一方で、勝手に抱いていた期待が大き過ぎたため、その反動があったのも事実で、ちょっと微妙な評価が残ったライブでもありました。
おわりに
今回は2000年に見に行ったライブの内、下半期に行った3本(?)について書きました。これ以外には(この時点では)The Verveでは来日できなかったRichard AshcroftのライブをIMPホールという小さめの会場で見ることもできました。
次回は2001年に聴いていた音楽を挟んだ後、2001年に行ったらライブについての出来事を書いてみたいと思います。その①では「史上最強のラインナップ」と言われることも多いFuji Rock Festival '01にフォーカスして書く予定です。
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