見出し画像

フジロック'24 day1 備忘録

 フジロック'24、金曜日day1のみですが、参加しました。コロナ禍以降に参加したサマソニ/フジロックに関しては毎回感想を書いているので、今回もつらつらと書いていこうと思います。前回が初めてのフジロック、今回が2回目です。

前回に比べて変わったことといえば、私が学生からサラリーマンになったことくらいでしょうか。流石にずっとスーツを着ている生活の中で「フジロックに行く」というのは相当なモチベーションでした。ただ、頭空っぽにして楽しめるのか、とか、フジロックのムードに白けてしまうんじゃないか、といった心配もあるにはあったのですが。

かといってラインナップが発表された時点で物凄く行きたくなった訳では無く、フジロック自体に憧れはあれど、ただフジロックだからという理由で行くには距離がある(心理的にも、物理的にも)。去年のストロークスのような這ってでも行きたいと言えるアーティストに出てほしかった。結局金曜日に行こうと決意したのはFriko、Floating Points、Group_inouという並びの総合力の高さ、急遽決定したthe Killersのヘッドライナーというストーリー性、取れてしまった有給休暇、友人が車を出してくれる…などと色んな要素が重なった結果でした。

前段はこれくらいにして、感想を。


家主
 行きに向かう車の中で友人と「どのバンド見る?」といった楽しい楽しい話をしていた時に、朝から家主がいるじゃん!!と気がついた。彼らのことはたまらなく好きだ。teenage fanclubみたいなパワーポップを一歩一歩噛み締めるように演奏するライブ映像を見て以来、彼らを好きになってしまった。フジロックに着き、オアシス、グリーンステージ、ホワイトステージを抜けてField of Heavenに入場。すでにリハーサルでバンバン曲を演奏していて大盤振る舞いである。本編「家主のテーマ」で少し泣きそうになる。原曲より明らかに早いペースのまま、全員が全員バンドに振り落とされないように必死に演奏をした結果、雪だるま式にバンドのドライブ感が増していくという「バンドを見る」楽しさに満ちていました。どんどん人が集まっていくのも嬉しい。ロックンロールって素晴らしい、と勝手にしみじみしつつ、グリーンステージへ向かう。

Friko
Frikoがグリーンステージ、というのは中々に思い切ったなぁと思いつつ、フジロックってレッドホットチリパイパーズみたいなバンドをグリーンステージに押し上げてしまうようなフェスでもあり。蓋を開けてみたらグリーンステージで正解だったと思う。というのもあの環境というのは唯一無二で、後ろにはでっかい空間があり反響が少ないから音がひたすら外へ飛び出していくような気がするし、暑い中でもスーっと風がふく。そこで鳴る「Chemical」みたいに激情に任せたような曲も、「Crashing Through」のようなバンドのコーラスで膨らんでいくような曲も、全てがグリーンステージのマジックで大きな風になってこっちに届く。この風は、アメリカの風、シカゴの風である。「インディー」「オルタナティブ」という言葉に惹かれている私(たち)にとって馴染み深い記号に溢れたFrikoの音楽がグリーンステージで鳴っている様は、今、現在にインディードリームを立ち上がらせてくれた。「インディー」「オルタナティブ」の歴史とは、好きな音楽の記号を集め、再現し、少しのマジックを加えてきた数十年である。その先に彼らがいて、それをフジロックで見ているという事実に胸が熱くなる。見ていて思ったことは、彼らはかなり器用なバンドだということで、エフェクターを使って弦楽器の残響音みたいな音の波を作ったり、ピアノのみの曲で緩急をつけたりと決して勢いだけではない。Radioheadのカバーは見たかった。


マカロニえんぴつ
良い曲が多い!!ライブが上手い。私はボーカルのはっとり氏と髪型が似ている時期が長く、結構な回数「似ているね」と言われていたから、不思議な感慨があった。「悲しみはバスに乗って」、悲しいのに明るくあろうとする暗い曲で、好きだ!

The Spellbound
何回もライブを見ているが、今回は”曲を演奏する”という意識よりも、ビートをその場で練り上げ、1時間を組み立てて行くという意識が先行しているように見えた。後半30分、小林裕介はほとんどギターに専念していてノイズマシンと化していた。BOOM BOOMの曲であったり、Novenmbersの曲であったりと色々な方向からの期待が集まってしまう中で、「曲」みたいな概念さえ捨て行くような勢いで押し切るのはひたすらにかっこよかった。フェスのタイテの真ん中という、アンコールなんて考えられない時間にあそこまで鳴り止まない拍手が聞けるとは。

King Krule
今年の個人的目玉のひとり、King Krule。彼を知ったのは2020年、「Man Alive!」が出た頃、自分が徐々に新譜を漁るゲームに参加し始めた頃だった。そこで彼の音楽を聴いて初めて聴いて、出た言葉が「わからない、、、」。その頃盛り上がっていたサウスロンドンのポストパンク含め、自分の音楽語彙で消化しきれていなかった記憶がある。数年経って、そのドロドロ加減に体を押し込んでやればいいのかと気付いて凄く好きになった。そしてフジロック本番、物凄かった。
サックスやサンプラーのメンバーを含むバンドセットなわけだが、真ん中に立つアーチー・イヴァン・マーシャルの求心力に意識を持っていかれる。語りと歌唱の間を彷徨うのではなく、語りと歌唱の境目を叫びによって切断するような、どこまでも獰猛でセクシーな在り方にのけぞってしまった。そしてサックスプレイヤーの彼も鋭いサックスに加え、弾いていないときはその場でぴょんぴょん跳ねたり、脱いで客を煽ったりとどこまでも肉体的な蠢きを発露していた。
結局ポストパンクがなんなのかずっと分からなかったが、今回でなんとなくわかった気がする。ダブ、サイケ、ジャズ、エクスペリメンタルな要素をバンドという形式の中に詰め込んだ上で、ガツンとくる肉体性で、瞬発的に反応できる勢いでアウトプットした結果がポストパンクなんじゃないかと思う。だとしたらポストパンクは最高だ。

Floating Points
マンチェスターからやってきてくれた音楽求道者/Floating Points。バンドセットやオーケストラでのライブは勿論見たかったが、モジュラーシンセとDJミキサー、そしてPCのみ、身一貫。音楽の構造自体は決して複雑ではなかったと記憶している。4つ打ちのキックの抜き差しと、いくつかのシンセサイザーのシーケンスの変化、加算、入れ替えを繰り返す。聴いている最中、キックが抜かれた瞬間に既にキックの音が戻ってくる瞬間を想像して気持ちが高まり、当然のようにキックの音が戻り、溢れんばかりの喝采が起こる。勿論そんなに単純な音楽ではなく、そう聞こえるために幾層のフィルターを通過しているのだろうが、それはそれとして、耳から脳を介さずダンスに直接意思が向かって行くような時間が流れていた。モジュラーで生成された弾丸のようなキックがまだ腹の下に残っている気がする。全体としてFloting Pointsが今年入ってリリースした「key 103」「Del Oro」のムードを完全に踏襲したサウンドで、否応にもアルバムに期待してしまう。しかし、あの場所であの熱狂を感じてしまったから、家のスピーカーで我慢できる気がしない。

The Killers
私とThe Killersは「Hot Fuss」は結構好き、でもすごい思い入れがあるわけではない…、くらいの距離感。ただ、勿論熱狂的なファンの力もあるのだろうが、にしても盛り上がりすぎた。これは完全にボーカル・ブランドンをはじめとしてThe Killersが完璧な盛り上げメソッドを獲得しているからだと思う。サビのフレーズを曲が始まる前にシンガロングで観客に覚えさせることで、曲が始まってサビが始まった瞬間に余計盛り上がる。ステージでの献身的な身の振る舞いもアスリートを応戦している気分に。昨年のストロークスと真逆だ。同じ時代の、同じアメリカのバンドなのに…。バンドメンバーのギターとベースはサポートだそうで、バンドとしてのエゴというよりも、その場がどれだけ拍手喝采と大熱唱で終わるかを軸にしているように見えた。シンセの使い方がニューウェーブっぽくて、ただ性急にならなず踊れるようなサウンド作りもヘッドライナーにしか見えない貫禄を演出していた。

こう結構冷静に見ていたわけだけど、ワタルが出てきて、ドラムを叩いた時に不思議と泣いてしまった。素人がステージに上がる演出、いつもはかなり冷めた目で見てしまうんだけども、誰かの夢が叶う瞬間と、積み重ねた研鑽が完璧に花を咲かせる様を間にあたりにして、感極まった。私も軽音楽サークルに入っていて、まだ引きずっているのだろうか。そんな多幸感のまま最後まで突っ走ったThe Killers、あまりにもクラスに一人は欲しい盛り上げヘッドライナーである。全員がシンガロングしている風景が物凄くフジロック然としていてグッと来てしまった。

電気グルーヴ
ハァハァ…となりながらレッドマーキーへ向かう。King Kruleからぶっ通しでライブを見ていて既にヘトヘトだ。電気グルーヴ、前に見た時よりもイキイキしている。というか、今年のレッドマーキーの音響はめちゃくちゃバキバキだ。音を大きくしても反響があまり無いからこそなのだろうけど。まずら石野卓球が操るアナログ機材の音がかっこいい。303の音は否応にもテンションが上がる。ギターの生音が入ると電気グルーヴのルーツであるニューオーダーやデペッシュモードのエグさみたいなのが溢れ出てくる。「Shangri-la」聞けて嬉しかったけど、思い返すと前見た時も演奏していたような。キラーズの「Mr.brightside」にも思ったが、電気グルーヴの最後の曲は「富士山」で、なんだかんだ様式美のようなものに1番テンションが上がってしまうのかもしれない。

group_inou
朝4時、ルーキーステージや深夜のサーカスを見て回った後、最後にレッドマーキーへ。group_inouを知って好きになったのはここ1年くらいで、uri gagarnよりかなり後に知った。おふざけの中に本当が見えるような舵の取り方と、最小限の音で最大限の気持ちよさを生み出すようにひたすらセンスを鋭くする在り方に惹かれる。
とはいえ知った時は活動を休止していたから、フジロックで観れるとは思っていなかった。1曲目、「EYE」が流れた瞬間、今年のフジロックの個人的ピークである。シンセサイザーという楽器の持つ脳波を揺らすような刺激と、音源では感じられないラップ/cpの激しさと、後半の4つ打ちというリズムが持つあまりの楽しさに運動会ぶりくらいに本気で体を動かした。深夜のレッドマーキーが1番好きだ。


というわけでフジロック、今年も物凄く楽しかったなぁという言葉に尽きます。月曜日のことを気にしたり、前日の業務の残りを引き摺ったり、どうしても日々にリミッターがかかって全ての娯楽を100%楽しみ切れていないような気がしていたのですが、そのリミッターを解除するわけでもなく、「こういう1日もあるから良いじゃん」と全身を抱きしめてくれるようなお祭りがフジロックなのかもしれない。来年に向けたアンケートにはTame Impala、bon iver、The National、LCD Soundsystemと書きました。「フジロックでのアーティストとの偶発的な出会い」みたいな瞬間が無かったことが少し心残りなので、是非来年はそういう出会いがあればいい。行く気マンマンです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?