私はとても幸せだった、つまり、とても孤独だった
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凍てついた晩に ふざけて口にしたことを
朝になって 嘘だったとは云うまい
なにかの足あとが 星のように
雪のうえに つづいている
さようなら 副馬たちが眠たげに
ぴんと張った手綱のさきで 身を震わせる
揺れでもすれば かしいだ頸木の端を
道標が引っ掻くことだろう
黒ずんだ轅が 不規則にたわむたびに
わたしは思いだすのだろう
あそこでは 友らが笑い
いつもと同じ椅子や机があることを
暖かで重い扉の向こうには
湯気に 煙に 声
そうね 今日の私は最後