
モスコミュール事変
こんリシェ(՞ ܸ. .ܸ՞)"
最近noteに書くネタが尽きたリシェです。
今日は派遣時代の出来事でも書こうと思う。
20歳くらいの事だっただろうか。私は派遣社員をしていた。というのも普通の派遣社員という訳ではなく県の非就職者を対象とした事業であった。
そこの1期生として参加したのが私だった。
参加者は年齢が近いということもありすぐ仲良くなった。満了期間が半年で最初の1ヶ月がマナー、OAスキルに当てられていたので話す機会もとても多かった。
その中で飲み会に行くのが私のささやかな楽しみであった。
そんなある日の事だった。飲み会は1件目で大層な盛り上がりを見せていた。いつもなら仕事だからと切り上げる所を三次会という所まで辿り着くのであった。
メンバーは7名ほどでいずれも程よく泥酔していたと思う。時刻は2時を過ぎている。当然のことだ。
そして、私はというとジンライムを卒業しモスコミュールというお酒に手を出していた。ウォッカにトニックウォーターを注いだシンプルなカクテルだ。ジンやウォッカが強い酒だと確信していた私はこれらをイキって飲んでいた。
すると、隣に座っていた小松くんがモスコミュールに興味を持ってしまった。
「リシェちゃんの1口ちょーだい」
これが地獄の始まりである。
「うわっ、うまっ!皆ー!リシェちゃんの飲んでるコレちょー美味いっすよ!」
皆が飲んでいた手をピタッと止める。視線は私のグラスへと移った。
「えー、何飲んでるの??私も頼むー!」
皆が各々のグラスを片付けてしまうと途端にモスコミュール祭りへと変わっていく。嫌な予感がした。
「ウォッカ強いから程々にね」
私のイキリ文句を片隅に皆がモスコミュールを煽る。美味い、辺りにはその言葉が埋め尽くされた。
そして、30分程経った頃だろうか……
辺りは死体の山となった。
そう、モスコミュールを飲んだことによって皆が潰れてしまったのだ。
責任感を感じた私は数台のタクシーを呼び皆をそこに詰め込む。何となくこうなることは予想が付いたのにいざとなると阻止できないものだ。
最後に残った小松くんが特に酷く酔っ払っていた。家が近いということもあって最後まで残していたがいっそこのまま置いてってしまおうかと一瞬思った。
「小松くん?」
シーザーサラダに突っ伏したまま小松くんは起き上がる気配を見せない。
それでも何とか起こしてやると小松くんの額からレタスが零れシーザードレッシングが涙のように頬を伝った。
「小松くん!」
「うぅ…頭痛い…」
小松くんは何とか一命をとりとめたものの重傷であることは確かであった。私は最後のタクシーを呼ぶと小松くんの顔を拭いてやる。シーザーサラダまみれの顔が綺麗になる。
「リシェちゃん……モスコミュールは悪魔だ……」
本物の涙をうっすら浮かべながら最後に彼はそう言った。その顔を今でも私は忘れない。
こうして、モスコミュール事変は幕を閉じるのであった……
今ではビールやレモンサワー茶割りしか飲まなくなったが、モスコミュールの文字を見るとこの事を思い出してしまう。
くれぐれもモスコミュールには気をつけて欲しい。あれは悪魔の飲み物なのだから……