第17話 卒業式


#みんなの卒業式

注記: こちらの記事は、以下のウェブサイトに掲載したものを、二重投稿したものとなります。
該当ウェブサイト: 李さんから聞いた怖い話・不思議な話 - 第17話

以下、本文:

卒業式の日を迎えた彼女。これは、李さんの親戚の孫娘かひ孫娘が体験した話。
その日は、彼女の中学校の卒業式。友達との別れは悲しいもの。出会いと別れは表裏一体。その年の卒業式も、涙を流す卒業生が、他のクラスにはちらほら。彼女のクラスでは、ほとんど全員が涙を流していた。それは、クラス皆の仲がよかっただけではない。1人、卒業を前に亡くなった女子がいたから。その女子は中学校3年生に上がってからすぐに、交通事故でこの世を去った。懸命に部活や勉学に励み、充実した毎日を謳歌していたその女子。当日、その女子の親友が遺影を持ち、皆で卒業式に臨んでいた。
永遠の別れ、とても悲しい卒業式だったのを、李さんの親戚の彼女は今でも覚えている。

あの卒業式から数週間が経ち、李さんの親戚のその彼女は高校生になった。まだ中学校の懐かしさが余韻として残っている頃、彼女は中学時代に仲のよかった友達から連絡を受けた。
「卒業式のビデオに、何か変な音が入ってるんだって」
寝耳に水のその出来事に当惑する彼女。別れの悲しさを包んだ思い出の宝石箱に場違いで取るに足りない石塊を混ぜられたことで、彼女の心に一種の不快感が水滴のように落ちて広がった。
知らせを聞いた週の週末、彼女はその友人と一緒に中学校に集まった。見慣れた校舎と見慣れた顔ぶれ。だいぶ早い同好会と怪談話に沸き立つ元クラスメートたち。かつての教室に集まった彼らはビデオテープの周りに集まった。ビデオを持って来たのは、元学級委員。ビデオの電源が入った。
再度流れる、卒業式の様子。早送りで彼らのクラスのところまで来た。
「…り…ず…ゆ…あ…」
ところどころで、人の言葉のような音が聞こえる。しかし、その音は周期的に繰り返される。参加者の誰かのしゃべり声が混じっていたら、同じ音が繰り返されることはないはず。
「実は私、この音を抽出して解析してみたの」
元学級委員は、親戚に動画を頻繁に投稿している人がいるそう。クラスの代表として学校から「変な音が入っている」という連絡を受けた元学級委員は、その親戚にビデオのことで相談したのだ。
「みんな、落ち着いて聞いてね」
彼女は卒業式の動画を止め、SDカードを取り出してビデオに挿入した。最初は機械音のみが流れた。そして、その声は聞こえてきた。
「みんな、ばかり、ずるい、ゆるせない、ゆるせない、ああああ…みんな、ばかり、ずるい、ゆるせない、ゆるせない、ああああ…」
それは、あの亡くなった女子の声。ビデオは同じ言葉をひとしきり繰り返し、再生を終えた。

温かい、大切な卒業式の思い出が一気に冷めた出来事だった。幸いなことに、李さんのその親戚の娘は無事とのこと、今のところは…


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