第7話 都市伝説「コトリバコ」の正体について – 可能性の話…

タイトルに書いた通り、ここでは都市伝説「コトリバコ」の正体について書いている。

「コトリバコ」について何も知らない方のために、まずはその説明を簡潔に記載する。

コトリバコ: 1860年代後半から1880年代前半まで製作された箱型兵器。製作したのは、当時差別されていた部落の人々。部落は現在の島根県に存在していた。彼らは迫害を受けていたため、その抵抗手段として「コトリバコ」を作った。
製法を伝えたのは、隠岐の島から来たある人。その製法とは、動物の血と子供を生贄に資し、その身体の一部を箱の中にしまうというもの。箱自体は複雑な形状に加工され、容易には開けないような構造。
その隠岐の島の人は製法を部落の人々に教えた後、コトリバコ1つを持って部落を出た。一方、その部落の人々は教わった製法でコトリバコを複数製作し、迫害者のうち1部の者に贈り物という名目で箱1つを渡した。その迫害者の家族(女性と子供)は苦しみながら亡くなり、そのことを利用して部落は周囲の他の迫害者たちを脅迫した。コトリバコの効力のおかげでその部落は平和を獲得した。
しかしある日、最初の箱が製作されてから13年後に部落内で犠牲者が出た。箱の危険性を知った部落の人々はそれまで継続していた箱の製作を止め、一転して箱を無効化する方向へと舵を切った。箱には等級があり、上述の生贄の子供の数が大きいほど等級が上がり、力が強い(等級は最大で7。製法を伝えた人間が持ち出したものは、等級8)。無効化に必要な年数は長く、等級が最大のものは140年。この話が書かれた時点で、まだ無効化の期間が残っている。


次に、筆者がこの「コトリバコ」の正体について書こうと考えた理由を告白する。その理由というのが、上述の箱の製法や効力、製法が伝来した時期を考慮すると、おそらく製法の出所は筆者の親戚の李一族だと考えられることだ。
以下に、李一族の記録の中で「コトリバコ」の出所と思われるものを紹介する。

出所: おそらく日本で「コトリバコ」として伝わっているものは、李一族の記録に残された「族滅器」に該当すると思われる。こちら「族滅器」は、記録の中にある箱型兵器の名前の意味に漢字を当てたもの。親戚から聞いた話では、漢語で表現すると「族滅器」となるが、英語の「Clan-extinguisher」もしくは「Clan-terminator」の方が意味の上では近いとのこと。そのわけは、もともとこの「族滅器」を初めて李一族が使い始めた頃、一族はその箱型兵器を自分たちの民族の言葉で呼んでいたことにある。その民族の言葉というのは今でいう中国語ではなく、北方にいる民族の間で使われていた言語だ。そのため漢字表記すると、少しだけ意味がずれてしまうようだ。
族滅器の効果は、コトリバコと同じだ。対象は女性と子供。対象を苦しめながら殺害することで恨みを晴らす。李一族は、部族間抗争で勝ち、かつ報復を防止するために使っていた。女性と子供を殺害することで、敵の一族を根絶やしにすることが可能だからだ。特に李一族は族滅器を、自分たちよりも強く、かつ李一族を迫害していた部族に対して使っていた。そのため、族滅器はこのように「敵の女子供を苦しめながら殺す」という仕様で作られているのだと思われる。
かつて李一族が族滅器を使った相手の中に、「狄王」という者がいた。記録ではその王は他民族を虐待し、恐怖で人々を支配する王だったそう。そのため「狄王」は人々から嫌われ、その王の家族は族滅器で殺された。「狄王」自身も、壮絶な殺され方をしたそうだ。


最期に、李一族が日本に族滅器の製法を伝えた時期について記載する。時期はおそらく18世紀後半から19世紀前半だ。鎖国下の日本社会に入り込むために、李一族はある島にいた交易相手に製法を教え、その見返りにある種の優待の権利を受け取ったらしい。李一族は、その島が弱い立場にいるところに目を付け、敵に対する抑止力として族滅器の製法を島民たち教えたようだ。今でいうところの、核兵器と同じような発想だ。
族滅器の始末方法についての記録も存在する。コトリバコが寺ではなくて神社で無効化しなければならないように、族滅器を始末するためには、ある系統または特徴を持った神の力が必要だ。コトリバコの無効化のために特定の神を祀っている神社を指示しているのもそのためだろう。李一族の場合、自民族で信仰していた神を祀っていた場所で族滅器を始末していた。

現在、李一族の記録には漢語での製法が存在しない。それはある時期に先祖が製法を漢語で説明したページを破棄したからだと伝え聞いている。製法は自民族の言語で書かれており、その言語がわかる親戚はごく少数。わかると言っても、簡単な単語や文法を知っている程度に留まる。特にそのページを解読できる人間となると、少なくとも筆者の身近には存在しない。


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