小説『淫獣少女』 第二章

注意: この文章には、一部性的な表現が含まれています。この点をあらかじめご理解の上、ご覧ください。




一日の疲れを汚れと一緒に落とし、風呂場を後にした淑乃。彼女は居間にいる家族に入浴を終えたことを伝え、そのまま自室に入った。ドライヤーの電源を入れ、彼女は肩の下まで伸ばした髪を丁寧に乾かし始めた。毎日入念に手を入れる、長い髪。淑乃は切れ長の目に小顔の持ち主。透き通るような白い肌が、その上品な顔立ちにフィットしていた。淑乃の清楚な魅力を引き立てるのが、その滑らかな長髪。静かに流れる清流のような髪は光沢を放ち、彼女が歩いているとき、風に乗って後ろにたなびく姿は絵になった。
「まだ切らなくても、大丈夫」
高校生になったばかりの彼女には、校則が気がかりだ。学校が許すギリギリの長さまで伸ばしたい彼女にとっては、髪が肩を超えたときが、美容院に行くかどうかを考えるタイミングだった。
髪を乾かし終えてベッドに腰掛けた淑乃は、いつも通りスマホで友達とおしゃべりの続きを始めた。昼は教室や部室でのおしゃべり、夜はかわいい絵文字や顔文字を散りばめたメッセージ交換。彼女たちの話題は、賞味期限が短い。教師の人気ランキング、友達・先輩・後輩の噂話、美容、流行りの動画、遊びの予定など、あちらから、こちらへ、話題は頻繁に移り変わる。そして再び美容の話が始まり、ダイエットについてのあれこれがトーク画面で咲き誇る。
「淑乃はダイエットしない方が、いいと思うけどなー」
と言ったのは、親友の紗奈。他のトーク参加者も同意だった。
「淑乃はスタイルいいし、ダイエットとか、嫌味に聞こえるー」
「そうかなぁ」と適当な相槌でごまかす淑乃。しかし淑乃の中ではダイエットが真剣な悩みとしてまとわりついていた。それもそのはず、彼女の魅力は長髪や清楚な顔立ちに留まらず、豊満な胸、弧を描くようなくびれにも表れていた。そこに加わるのが、今にもはち切れそうな太腿だ。身長百七十センチの高身長の淑乃の身体からは芳香が出そうなほどのフェロモンが分泌されており、その妖艶なスタイルに男子の目が集まることが、彼女の大きな悩みの種だった。
「ダイエットしたら、胸も小さくなるかも」
膨らみだしたのは、小学校高学年から。中学に上がった頃にはクラスで一、二を争うまでに巨乳は成長し、淑乃は自分の身体に合う服を選ぶのにも一苦労だった。特に苦労したのが、淑乃が所属するチアリーディング部のユニフォーム選びだった。スタイルを強調するのを極力避けたい淑乃は大き目のサイズのユニフォームを探したのだが、どれを着てもチアダンスの際に胸が揺れ、統率のとれたダンスにいやらしさが生まれてしまった。それが全体の調和を乱しているようで、淑乃の感情を波打たせてきた。事実、チア部のリハーサルでは淑乃を目当てに運動部の男子生徒が見物に訪れ、ちょっとした騒ぎになったこともあった。
「いいじゃない、淑乃の巨乳はせっかくの贈り物なんだから、有効活用しないと」
「男子にも、たまには貢献してあげないと」
といじられるのにも、やっと慣れた。それでもチアリーディング部が好きだからこそ淑乃は高校に入ってからも同じ部に入った。
「『部活』で思い出したんだけどさ、」
と言い出したのは、またしても紗奈だ。
「今日の授業で生物の李村が持ってきた、変な木のことだけど」

その日の生物の授業で生物教師の李村浩三は「絞殺しの木」を出し、春休み期間中に旅行したインドの話をしていた。李村は旅行中にある森を訪れ、そこで「絞殺しの木」を見つけたそう。その木にはイチジクの実が生っており、持ち出していいかどうかも確認せず、李村はその実を日本に持って帰ってきたのだ。
「その実を鉢植えに植えて育てたら、あっという間に大きくなってね、」
授業中、李村は自身の育てた木の生態を嬉々として語っていた。「絞殺しの木」は本来、宿主となる他の木に絡みついて成長する植物だ。宿主が得るはずの日光を「絞殺しの木」が代わりに奪い取り、寄生された木はやがて枯れて死に至る。そんな気味の悪い話を嬉しそうにしゃべりまくる李村の生徒受けが悪いのは、言うまでもない。
「数日前にたくさん種子ができたので、みなさんに一つずつあげましょう」
そう言って半ば押し付けられる形で種を受け取らされた生徒たち。種はパチンコ玉程度の大きさの黒い球状。表面には凹凸があり、球の赤道の位置にリング状の突起が巻かれているという構造だった。
ほどんどの生徒はその日の授業が終わる前にゴミ箱に捨てた。しかし淑乃は種子の存在を忘れ、鞄に閉まったまま、家まで持って帰ってきてしまった。

「明日も学校あるから、そろそろ済みで」
会話を終える合図。一同が「じゃあね」「明日」のメッセージを飛ばし、画面から離脱していった。
「それじゃあ、私も寝よっかな」
時刻は夜の十一時。寝るのにちょうどよい時間。淑乃は種の始末をしようと、ドアの下に立てかけてある鞄の方に視線を移した。
「あんなにたくさん、ものを入れてたっけ?」
淑乃の鞄は膨らみ、今にも破れそうだった。帰宅時も、入浴直後も鞄はいつも通りのスリムな姿だったと記憶していた。塾通いでもないので、淑乃はそんなにたくさんの荷物が必要になる理由が思い当たらなかった。気のせいかもしれないが、その膨らんだ鞄は小刻みに揺れているように見えた。
「気のせいよね、きっと」
そう自分に言い聞かせて鞄の方に行き、淑乃は上蓋を退け、中のファスナーを開いた。




予想とはかけ離れた出来事が起こった際、人間は驚きのあまりに動きを止める。このことを痛感したことは、淑乃の人生の中では今この瞬間、自分の鞄のファスナーを開けたとき以外には存在しなかった。それもそのはず、淑乃は生物教師の李村から受け取らされた奇妙な植物の奇妙な種子をゴミ箱に捨てるために鞄を開けた、それだけだったからだ。
直後、鞄から奇妙な生き物が出てきた。それは最初、太い二匹のミミズとして淑乃は認識した。中から這い出してきたその二匹の太さは、運動会の綱引きのロープと同じくらい。淑乃の細くて長い指三本分の太さだった。二匹のミミズのうち一匹は淑乃が鞄の中に差し入れようとした右手首に絡みついた。淑乃は咄嗟に右腕を引いたが、ミミズの動きの方が早かった。右腕に絡みついたミミズは螺旋を描きながら肩に向かって這い進み、左腕の手首にもう一匹のミミズが絡みついたときにはすでに肩までしっかりとミミズに掴まれていた。
目の前の異常事態で頭がパニック状態になった淑乃。助けを呼ばなければ、という思考に達した彼女が叫ぼうとした瞬間、もう一匹のミミズが飛び出し、口を塞いだ。ミミズが口に当たり、顔を背けると、その三匹目のミミズは淑乃の首に巻き付き、喉を締め上げた。呼吸経路を塞がれ、恐怖が跳ね上がった。淑乃は必死で声を絞り出そうとするも、ミミズは首を絞める力を強め、呼吸は徐々に苦しくなっていった。
「このままだと、死ぬ」
命の危険を感じた淑乃は脚に力を入れ、鞄から離れようともがいた。懸命に両手両脚を動かして後ずさる淑乃。彼女に引っ張られるかのように、ミミズは這い出してきた。
「んんっ」
鞄から出てきたのは、三匹の巨大ミミズ。そこにさらに三匹のミミズが加わった。新たに加わった三匹のうち、二匹は両足首に巻き付き、残り一匹は真っ直ぐ彼女の顔に向かって迫ってきた。ミミズの胴体が唇を掠めた瞬間、彼女は酸素を求めて大きく開けていた口を反射的に閉じた。ミミズは口に巻き付き、絶望的なことに、呼吸経路は完全に断たれた。
「もう、終わりだ」
淑乃がそう思った瞬間、それまで首に巻き付いていたミミズが外れ、薄くなりかけていた意識が急速に冴えわたるのを感じた。それでも、口を塞がれて叫び声が出せないという危機的状況は変わらなかった。
ミミズは螺旋を描きながら彼女の四肢の自由を奪い、肩と付け根をしっかりと固定すると、人間とは思えないほどの強い力で彼女の身体を持ち上げた。空中で大の字にされる淑乃。ミミズは鞄から這い出し、その姿が露になった。彼女がミミズだと思っていたもの、それは中央の黒い球状の核から生えている触手であることがわかった。核は人の頭程度の大きさ。触手はミミズのように関節が何個もあり、核と同様に色は黒に近かった。六本の触手は中央の核でつながっており、関節を自在に使って這うように移動していた。鞄は元通りの薄さでドアの近くに放り出され、中から出てきた教科書やノートは付近に散らかっていた。
「んんっ、んんっ、」
いや、いや、と声を出そうとしても、口から漏れ出るのは、くぐもった音だけ。階下にいる両親も、隣室にいるかもしれない弟も、彼女の窮状はわからないという状況だ。彼女は両腕と両脚を動かし、腰を捻ってもがいていたが、触手の拘束力は強く、身体を動かせる気配が一切ない。
磔のように大の字にされ、一、二分が経過した頃、首に巻き付いていた触手は彼女の胸の谷間がある付近に近づく。横断歩道を渡るときに左右の道路を確認するように、触手は首を振っていた。触手には目が付いていなかったが、彼女は直感的に、それは両方の胸を代わる代わる見て、愛でているのだと理解した。振り子のような動きを繰り返していた触手は胸の谷間の位置で止まり、先端から二本の触手が生え始める。新しく生えた触手は、人間の指程度の太さ。二本の細い触手はゆっくりと伸びていき、パジャマの上から二つ目のボタンまで近づく。そのボタンは、淑乃の胸部の一番膨らんだ箇所に位置しており、辛うじてボタン穴に引っかかっている形で胸の谷間を隠している。その二本の触手のうち、片方はボタンに吸着し、もう片方はパジャマの前側の合わせ目のところに器用に滑り込む。
「んんーっ」
ボタンはいとも簡単に外れた。彼女の大きな胸はボタンによる拘束から解放され、合わせ目を開き、胸の谷間が現れる。触手は下方へと進み、次、さらにその次、とボタンを、ゆっくりと外していく。それはまるで、触手が服の下にあるものを楽しみにしており、早く開けてしまうのが惜しいと感じているような動きだ。
ボタンが全て外れると、豊かで張りのある胸の助けもあり、大きく開いた合わせ目のスリット部から彼女の身体が露出する格好となった。肌を露出させられたことで、淑乃の中で恐怖に加えて嫌悪感が腹の底から燃え上がる。身体を激しく揺らし、触手を振りほどこうとする彼女。しかし先ほどと同様、触手は微動だにしない。触手の緊縛力が強い上に、その黒く光る表面からは粘着力の高い粘液が分泌されている。粘液は水飴や接着用ボンドくらいの強い粘性を有しており、触手と淑乃の着ているパジャマとの間に、強い摩擦力を生み出している。そのため、淑乃が暴れれば暴れるほど、前側の露出箇所が余計に見えてしまう。上下左右に踊る胸は煽情的な姿を晒し、大人の男性がその場にいれば、彼らの視線をがっちりと掴んで離さないことは確かだ。彼女の恥ずかしい姿を、二本の細くて長い角を生やした触手は舐めるように鑑賞している。目がなくとも、淑乃は先ほどパジャマを脱がせた触手から視線を感じ、羞恥心を掻き立てられる。それがさらに淑乃を焦らせ、彼女はますます激しく身体を揺さぶり、触手を振りほどこうとする。それは触手にとって思う壺だ。彼女は自身の恥ずかしい姿を自ら披露してしまる。彼女の羞恥心は燃え上がり、悪循環へと陥る。
淑乃の淫らなダンスに飽きたのか、先ほどパジャマのボタンを外した触手は、今度は下半身の方に先端を傾げた。触手の視線から、今度の狙いがズボンだと彼女は悟る。ゆっくりと、二本の触手はズボンへと近づいていく。空しい抵抗を繰り返す淑乃。ロープ径の太いミミズはズボンのウエスト部と腹部に、二本の触覚型の触手をねじ込む。ズボンを脱がされる、と思った淑乃。その予想とは裏腹に、触手は下方へと進み、クロッチへと到着する。触手が下着に触れた瞬間、彼女の身体に恐怖が奔る。

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