「狼と兎の見守る神域へ(後編)~兎が見守る調(つき)神社~」
【前回までのあらすじ】
元日、埼玉県秩父の1000メートルを超える高地にある「三峯神社」を沖縄出身の後輩と共に参拝することになった私。狼が守る神域に感動し、浮かれ気分もあって、帰りは徒歩(革靴)で表参道(高低差600メートル)を下山するかとアホなことを考えてしまい、足首はグネグネになり、命からがら外界へ戻って来る。
次は同じ埼玉県の調(つき)神社にお参りに向かうことになった。その年の干支は「ウサギ」だったため、ウサギが神使の「調神社」へ向かうことにしたのだ。
【調(つき)神社とは】
調神社とはさいたま市の浦和にある神社である。
なんで「調」と書いて「つき」なのだろう。
これは、伊勢神宮の創建者と伝わる倭姫命(やまとひめのみこと)が伊勢神宮への調物(みつぎもの)をおさめる地として定めたことが由来となっている。
御祭神は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、豊宇気姫命(とようけびめのみこと)、素盞嗚尊(すさのおのみこと)の3柱とされている。
何故三貴神のうち「月」の神である月読命(つくよみのみこと)がいないのだろう、と最初は思ったが、「つき」がもともと「月」の意味では無かったことの証左ではなかろうか。
「み『つぎ』もの」の「つき」であり、後々「月」の信仰と融合したのだろう。
「みつぎもの」だから穀物の神であり伊勢神宮の外宮に奉斎される豊宇気姫命が御祭神となっているのだろう。
調神社には7不思議がある。
1 鳥居が無いこと
2 松が無いこと
3 御手洗池の池に魚を放つと、その魚は片目になること
4 兎が神使であること
5 日蓮聖人駒つなぎのケヤキ
6 蝿がいないこと
7 蚊がいないこと
鳥居が無いことは、倭姫命の命で調物の運搬の妨害となる神門・鳥居を取り払ったからだという。
そして、兎が神使であるのは、「つき」が「月」と同一視されて、月の生き物だと考えられたウサギが神の使いとなったのだという。
現在では「調(つき)」が「(運の)ツキ」と同一視されて、地元の浦和レッズが参拝するそうだ。
何から何まで面白い神社である。
【浦和駅から調神社まで歩く】
調神社近くまで来るとすぐにわかった。
ものすごい行列だ。
そもそも元日だし、その年の干支である「ウサギ」にも惹かれて人がこれほど多いのだろう。
【境内から人が溢れている】
行列に並んでからふと思った。
「そういえば鳥居無いね」
人が多すぎて他のことに意識が行かない。
ウサギが見守る真ん中をちょっとずつ進んでいく。
【灯火に照らされた境内林が鮮やかに浮かび上がる】
満員電車のような状態で段々と拝殿へ向かっていく。
ここで誰も怪我しないように秩序が維持されているのがすごいよなぁ
ようやくお参りを果たせ、干支であるウサギのお守りを手に入れることができた。
狼が神使である三峯神社、兎が神使である調神社にお参りすることができた。
実はこの後、革靴下山のダメージ蓄積のため、猛烈な筋肉痛に苦しむことになるのだったが、この時はまだ知るよしもなかった。
「狼と兎の見守る神域へ」(終了)