神話と現代の境目へ(出雲旅その1)~中国大返し
【「もやしっ子」再び】
今まで、①「恋の病」を患う後輩(熊野)、②「もやしっ子」後輩(信州)、③「情操教育の失敗作」と畏れられた大学時代の後輩(伊豆)、④沖縄出身の正岡子規みたいな髪型の後輩(三峯神社)が登場した。
②「もやしっ子」後輩と期するところあって、今年(令和6年)の年始は出雲へ旅することになった。
【もやしっ子、出雲へ】
令和6年1月1日は「能登半島地震」で幕を開けた。
そもそも早朝から初詣に行く予定だったのだが、爆睡をかましてしまい、一緒に行く予定だったメンバーからの電話で目覚めるという酷い正月だった。夢も何を見たか忘れてしまった。
その後に能登半島の猛烈な地震によって、予定が全て変更となってしまった。
あまりこれ以上深入りすると重い話になって読みにくくなってしまうので、このあたりで説明は終わる。ただ1度、我が国の原点に立ち返ってみたいということで、諏訪にて「もやしっ子」からクレソンに成長した後輩と出雲へ行くことになったのだ。
【計画性なく「中国大返し」に】
ただ、学習能力が無いため前回の旅よりもさらにハードなスケジュールとなってしまった。
1月4日の夕方に福山で合流して、その日中に鳥取県の米子まで北上し宿泊。
翌5日に、境港市→美保関→出雲→八重垣神社→尾道→福山と中国地方を大回転するという無茶苦茶なスケジュールなのだ。
豊臣秀吉は明智光秀を討つために中国地方の戦場から10日間の強行軍で山崎の戦いに向かった。
これを「中国大返し」と言う。
私たちはそれ以上の「中国大返し」いや、「中国大回転」をやろうとしているのだ。
わけがわからんが、時間が惜しいからもう実行だ!ということで福山駅で、18時過ぎにクレソン後輩を乗せて中国山地へ分け入っていった。
【恐怖の中国山地超え】
暗い・・・とにかく暗い
光源なんて全然無い山道をハイビームで走っていく。
「いやー怖いですね。そういえば、万治の石仏で何かが後ろにいるような気がしましたよね。覚えてます?」
「なんで今その話を・・・」
「何かにぶつかりましたよね ヘヘヘ」
と突然怖い思い出話をし始める。
一番怖がっていた人間がなぜ今怖い話をしようとするんだろう・・・
【綿あめのような濃さの霧】
その時、眼の前が白くなってきてくる。
「え?え!?え?」
「あれ?曇ってきたんですかね?」
軽くパニクって、フロントガラスを拭いたり、エアコンで対処するが、どんどん視界が白くなってくる。
「あ、こりゃ霧ですな!」
綿あめのような濃さの霧だった。サイレントヒル2のような陰鬱な雰囲気になってくる。
あれだ、映画「もののけ姫」のオープニングで出てくる深い森に霧が立ち込める描写だ。映画の舞台は中国山地なので、今まさに踏破しようとしている場所である。
映画で見れば神秘的、実際に通れば恐怖。
こんなの見たことがないレベルで、怪奇現象と言っても差し支えないほどの霧だった。
ここでスピードを出すと危ないので、ゆっくり進んでいく。
「中国大返し」にはスピードが重要なのだが仕方がない。
【コンビニに寄りたかった理由とは】
ゆるゆると進んでいくと、段々と霧が薄くなってくる。
民家がちらほら見えてきて、ホッとする。
視界が晴れてきたので少しスピードを出し始める。
すると中国山地に入って初めてのコンビニを発見する。
「ちょっといいですか!」
クレソン後輩がちょっと強めにコンビニへ行きたいと意思表示をする。
トイレでも行きたかったんだろうか。
急いではいるが生理現象では仕方ない。
「いいよ」
停車すると、すぐにコンビニに入っていく。
クレソン後輩は「いやーこれが食べたかったんですよ」とプリングルスを抱えて出てきた。
とりあえず、ぶっ飛ばそう!
そう思った旅の始まりだった。