小説(3回目)

 わたしは、ふらふらとしていた。
 野山を歩きに行く日だった。わたしは、そんな日だったのに、雨が降りそうだということにつまずいた。
 
 しかし、わたしは、そのつまずきを治すことにした。
 わたしは、それを、意識し言葉にした。「そんなことは思うな。病は気から、というじゃないか」
と。
 わたしはそんなことをいった。
 わたしがそんなことをいうと、私はそんな気になった。
 結果的に雨は降ることがなかった。
 わたしは、雨が降らないなか、野山を駆け巡った。すると、途中、猟犬を連れたおじさんと出会った。
「君、ここらへんは、狩猟する人もいる。危ないよ」
と彼はいった。おじさんは、片目に大きな傷があった。わたしは、それでピンときた。
「もしかして、あなたは、熊に襲われた猟師さんではないでしょうか?」
とわたしはいった。わたしがそういうと、彼はゆっくりと頷いた。わたしは、子供の頃彼のことを知ってからあいたいと思っていたが、会うことができなかった。わたしは、会うことができなかったのに、いまなにが起きたのか会うことができた。それはつまり、なにかによって会うことができるようになっていたということだ。
 わたしは、歯ブラシをしていた。その猟師さんのことを思い出していた。わたしの歯にはたくさんの歯くそがある。いつもいつもつく。
 そして、わたしは猟師さんのところにいった。猟師さんの山小屋だ。そこには、シカがいた。もちろん、もう殺されていた。処理されていた。
「大きいだろう。このシカは」
と彼はいった。彼は嬉しげだった。わたしだって嬉しくなってしまった。
「はい。いいですね」
とわたしはいった。
 すると
「シカ肉を食べていくかい?」
と聞かれた。わたしは
「そうしてください」
といった。

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