岩上の鷲
〜3〜
ここか。
我々は依頼主から届いた手紙を元にその現場へと向かった。
到着した場所には、家というよりは近代的な建物
、昭和初期の西洋からインスピレーションを経た半分城のような建物があった。白色の外壁には蔦が絡まりその色を覆って、まさしく美術館という圧倒的存在感でそこに建てられていた。
正門をくぐり建物の中に入ると、そこには燕尾服を着た男性が立っていた。
男性の白髪が少し混ざった髭と髪はきちんと整えられており、着ているものにもシワひとつない。
見た感じは60代であろうか、だが歳を感じさせないほどの高貴な雰囲気を醸し出している。
「初めまして、こちらの使用人をやらせて頂いている、神崎と申します。
お嬢様からお話は伺ってございます。奥の部屋にてお待ちしておりますのでご案内いたします。」
驚いた。
その見た目からは想像もつかない程、ハリのある美しい声であった。
ますます年齢が分からなくなってきた。
こちらも簡単に挨拶を交わし、奥の部屋へと向かった。
美術館の中は薄暗く、少し気味が悪かった。
部屋に行く最中突然現れる彫刻や、銅像に怯え、気持ち的にはもう帰りたかった。
それに対し、辰巳は壁にかかっている絵を一枚一枚じっくり見ていた。
コイツには恐怖心というものがないのか、?
なんで畑に1人佇む女の絵をそう熱心に見ていられるのか、解せぬ。
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