カミサマのおはなし➌

神によって作られた一つの世界がある。
神は時々地上へ行き、ヒトに尋ねる。
「お前は今の生活をどう思っている?」

世界では今、大きな戦争が起きている。

神は久しぶりに地上へと降りてきた。
最近、この世界で大きな変化が起きているようだ。
「お前は今の生活をどう思っている?」
いつものようにそう問おうとしたが、
神が口を開けた瞬間、

「お願いします!許してください!お願いします!」

目の前のヒトの子はその場に倒れこみ、苦しそうな声でそう懇願した。
神は困惑した。
「何故許しを乞うのだ?」
しかし子供は神の問いに答えずそのまま懇願し続けた

神はまためんどうなのに会ってしまったと思った

そのうち子供は疲れたのかその場に倒れこんでしまった
「大丈夫か?」
「は、はい・・・」
神が何もしてこないので安心したのか子供はやっと答えた

「なんで何もしてこないのですか?」
「する理由がないからだ。お前が質問に答えればそれで私は去る」
「あなたは一体?」
「神だ」
「神様?」
「そうだ」
「この御恩は一生忘れません、助けていただきありがとうございました」
「そんなことより私の質問に答えろ」
「質問?」
「お前は今の生活をどう思っている?」
「今の生活をどう・・・ですか」
「神だからといって気をつかうなよ」
「はい・・・私はこの戦争が始まって親を両方失いました
 それから行く当てもなく、ただ食べ物を探して生きています」
「では、先ほどのはどういうことだ」
「この戦争はもともと私の住む地域の者たちが始めた反乱で、
 それで、この地に毎日国の兵たちが送られてきて、手当たり次第に
 人々を連れていくんです」
「それで私にあんなに懇願していたのか」
「はい・・・」

だいぶ落ち着いて話せるようになってきたようだ
しかし、すぐに子供は再び震えだした
振り返ると手に何か(おそらく銃というもの)を持った集団が近づいてきた
どうやら子供の反応を見るに、国の兵たちらしい
この子供が喋れなくなると困るので
一旦、子供を連れてその場を離れることにした

いつも子供が寝泊まりしてているという空き家に案内してもらい
話を聞くことにした

「そもそもこの戦争は誰のせいなのだ?」
「この地域の者は元々、差別を受けていたんです
 この地域の者というだけで虐めを受けた人々を私は幾度となく見てきま
 した
 私もいつ虐められるか怯えて生活していました
 元々この戦争が始まった理由もこの地域の人々が差別を受けていたから
 んです
 最初は差別反対のデモだったのですが、デモ参加者に警察が発砲したこ
 とにより、反乱が始まったんです」
「そうか、
 お前は死のうとは思わなかったのか?」
「もう生きたくない、そう思ったことはありました
 しかし、死んだ後のことは全く分からないので、死ぬのは諦めました」
「生きたくないのに死にたくない?どういうことだ?」
「生きたくない理由は分かりますよね」
「まあ、分かる」
「死にたくないのは、よく分からないものを恐れているといえば分かりま
 すか?」
「ヒトが私を最初は恐れていたことと一緒だな
 やはりヒトはよく知らないとそれに対して恐怖を感じるのだな」
「そういうことです」
「では、お前はどうするのだ?」
「まあ、生き続けてみます、生きてさえいれば何かいいこともあるでしょ
 う、現に今あなた様とお話しできていますし、あの時自殺していなかっ
 たからこそ今があるんだと思います、本当にありがとうございました」
「どうやら、これからどうするか決まったようだな、では私は帰ろう、さら
 ばだ」

その後すぐに争いは終わったようだ
一度、あの子供に会いに行こうかと思ったがやめた

あの後あの子供がどうなったかなんて神が知る必要はない

しかし神は、時々あの子供を思い出すのだった


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