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54 一年の始まりに

作家など有名人のことばを引用して説教めいたことを言うのは好きではないのですが、新しい年が始まるときには学級通信に星野富弘さんの詩を書いて生徒たちに贈ることが多かったです。生徒に贈るというよりも自分自身に投げかけているといった方がいいかもしれませんが。

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笑顔で挨拶を交わし
小さなことにもよろこび
嘘を言わず
悪口を言わず
すべてのことに感謝し
人のしあわせを祈る

一月一日の気持ちを
皆がみんな
十二月三十一日まで
持ち続けていられたら
美しい国になる
    星野富弘『花の詩画集『速さのちがう時計』より

美しい詩画集で知られる星野富弘さんの詩です。鋭い洞察力と温かい心を感じさせる星野さんのことばに私は心を動かされることが多いですが、みんなはこの詩を読んでどう思いますか? 私は自分自身に向けられた詩のように感じています。書かれていることには「本当にその通りだよね」と共感します。でもなかなかそれが実行できません。

人間社会に暮らしているといろいろなことがあります。楽しいこともあれば辛いこともあります。ちょっとした気持ちの行き違いから人に腹を立ててしまったり、恨んでしまったりということもあります。自分を守るために人を貶めたり、傷つけたり、自分の思うようにならないと人のせいにしたり、関係のない人まで不愉快な気持ちにさせたりすることもあります。人の幸せや成功を羨んだり妬んだりすること、みんなにはありませんか? 私にはあります。嘘や悪口を言ったりすることもあります。感謝の気持ちを忘れている自分に気づくこともあります。そのたびに自己嫌悪に陥ります。惨めな気持ちになります。そして星野さんの詩を思い出します。

世の中はどんどん変化しています。自分自身の生活を見渡しても便利で楽になったなあとよく思います。少し前まででは考えられなかったことが当たり前のように行われるようになっています。でも便利な世の中になることによって失われていくものもあるような気がします。小さなことに喜びを感じたり、周囲の温かさに感謝したり、人の幸せを祈ったりすることなどは忘れがちになります。星野さんの詩はそんな小さなことの大切さを伝えているように感じます。

一年が始まる今、星野さんのことばを改めて心に刻みたいと思います。こんな気持ちをみんなが持ち続けたら世の中はもっと明るくなると思いながら。

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