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151 世界の動きに目を向けてほしいから 

天安門事件の日が近づいてきました。あれから34年。私は事件のあと毎年6月4日には学級通信で事件のことを書いてきました。政治的な意図はまったくありません。ただ社会を見つめる目を生徒に持ってほしいという気持ちからです。

1989年のこの日、私はテレビの映像に釘付けになりました。無防備な市民に対して発砲する軍隊と戦車の前に立ちはだかる一人の男性。映像は今でも忘れられません。巨大な恐竜の前に立つ小動物のようにも見えました。戦車が男性をひき殺すのではないかという恐怖に駆られながら私は画面を見つめていました。

民主化を要求して立ち上がった学生や市民に対して軍隊が無差別に発砲し、北京の天安門広場が血の海となった事件が天安門事件です。この事件で命を落とした市民は数千人、負傷者は一万人以上と言われています。事件のことは日本でも報道されましたので生々しい映像をテレビで見た生徒も多かったでしょう。

事件の背景には中国の歴史が抱える政治、経済、社会などの様々な問題があります。思想的な対立もあります。だからメディアの情報だけで簡単に事件を語ることはできませんが、私にとっては衝撃的な事件であるとともに様々なことを考えさせる事件でした。国家とは何か、民主主義とは何か、自由とは何か、そして政治はだれのためか等々。民主化の動きは他にも多くの国や地域で起きました。

生徒たちは学校でいろいろなことを学んでいます。歴史や政治、経済、社会の仕組みについても授業で学びます。これから先も学校だけでなく家庭でも社会でも学ぶでしょう。学び続けてほしいです。そのためにはまず社会に目を向けることが大事だと思います。曇りのない目で社会をしっかり見つめる必要があります。教科書に書かれたことを覚えるだけでなく、新聞やテレビ、インターネット、本、雑誌などいろいろな媒体を通して自分自身で学び続けてほしいです。自分の目で社会を見て、疑問を持って、そして考えてほしいです。歴史の中で人々がどんな社会を求め、それをどのように作ってきたのか、それは本当に望ましい社会なのか、理想的な社会とはどのような社会なのかしっかり考えられるようになってほしいと思います。

そんな気持ちから学級通信で事件を取り上げていましたが、最近はそのような話題も政治的な内容ということで取り上げるのが難しくなってきているようです。学級通信が「検閲」され、内容が制限されることもあると聞きます。

事件で犠牲となった人たちの冥福を心から祈りながら複雑な思いの中で今年も天安門事件の日を迎えます。


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