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150 教育実習生を見ながら思ったこと

学校には毎年のように教育実習生がやってきます。ある年3名の教育実習生がやって来ました。社会科の男性1人と英語科の女性2人です。大学はそれぞれ別ですが3人とも同校の卒業生で同学年です。実習は3週間行われました。

ちょうど体育祭の前だったので3人は体育祭の実働要員として実習初日から忙しく働かされました。若い彼らは学校側にとっては何かと重宝だったようです。

彼らは入退場門のペンキ塗りからテントの修繕、競技用具の点検、グランドの整備とあれこれとやらされました。連日行われる学年練習や全校練習にも参加させられました。体育祭当日は早朝からテント張りや用具の準備に駆り出され、競技中も審判や用具の出し入れで忙しそうでした。さらにリレーでは教員チームのメンバーになって走りました。年配の教師が代替を依頼したのです。

その一方で実習生は授業も行わなければなりません。いや授業が彼らの本務です。教員たちの授業を参観し、教材研究、指導案の作成、教材づくりをするなどやることはたくさんあります。実際に授業を行って指導も受けます。毎日遅くまで残って教材研究をしていました。でも体育祭の準備に多くの時間を取られる彼らは授業の準備もままならない様子でした。

さらに実習生は部活動も任されます。もちろん補助として関わるのですが、顧問によっては毎日参加することを求める人もいます。時に実習生にすべて任せる顧問もいます。土日の対外試合も付き添ってくれと言われれば実習生としては断りにくいです。それでなくても忙しい実習生のスケジュールは超過密状態になります。毎日遅くまで残って授業の準備をする彼らを見ていてかわいそうになることがありました。

実習生は他にも様々な仕事をやらされていました。「何事も経験だ」と言いながら自分たちがやるべき仕事を教師が肩代わりさせている面も少なくないように思いました。今振り返ると過酷な労働を強いられる昨今の技能実習生に似ていたような気がします。

中学校の場合、実習生の指導は基本的には実習生が専門とする教科の教員が担います。担任をしていれば学級活動や道徳についても指導しますし、指導教員が担任クラスを持っていなければ担任をしている他の教員がそれを担います。指導教員は一般に経験豊かな教員が行いますが、学校によっては経験の浅い教員が指導を担う場合もあります。もちろんベテランだからよいというわけではありませんが、やはり指導に差が出るのではないでしょうか。

3人の指導を担当したのは社会科が教員になって5年目の男性教師、英語科が7年目の女性教師と14年目の男性教師でしたが、3人の指導方法はまったく違っていました。特に英語科の2人は対照的でした。7年目の女性教師はとても熱心で、指導案の書き方から授業の進め方、発問のしかたなどあらゆることを丁寧に指導していました。実習生が授業をするときには欠かさず参観し、授業ごとにフィードバックを行っていました。担任として行う道徳や学活の指導も懇切丁寧に行い、実習日誌も毎日欠かさずチェックしていました。一方、14年目の教師は実習生に授業をやらせっぱなしで、指導もほとんどしていません。授業は1,2回参観したあとは教室にもほとんど行かず、実習生にやらせっ放しです。その間は職員室にいてお茶を飲んでいます。授業を終えた実習生が職員室に戻ってくると「おっ、どうだった?」と声はかけますが授業の様子を詳しく聞くことはありません。「実習は学校現場を体験することが目的だから、細かいことを覚える必要はない。多くのことは実際に教師になってから学べばよい」という持論が彼にはあるようですが、私には詭弁に聞こえました。実習日誌もほとんどチェックせず、数日分まとめてハンコを押すだけです。「実習生がいると楽できる」と彼が言うのを聞いてその思いは余計に強まりました。実習生にもいろいろなタイプの人がいますから指導方法も多様であってよいと思います。でも適切な指導が行われていないこともあるように感じています。

実習期間中、大学教員が訪ねてくることがあります。学校への挨拶を兼ねて実習生の様子を見に来るのですが、これも来る大学と来ない大学があります。3人の場合も来たのは1人だけでした。来校した大学教員も実習生の授業を10分ほど参観しただけで次の予定があるからと言ってすぐに立ち去りました。実習生本人とは授業前に数分言葉を交わしただけです。

大学の先生が来ると学校はなぜか気を遣います。実習生を受け入れて指導するのは学校ですからそんな必要ないと思うのですが。大学ということで権威のようなものを感じるのかもしれません。教育実習では大学と実習校が対等の関係で連携して実習生の指導を行うことが大事だと思います。でも連携がどこまでなされているかとても疑問です。教育実習の目的すら共有されていないことがあるように感じています。評価についても実習校ごとにまちまちという気がします。

実施する以上は教育実習が有意義に行われることを願います。何をもって「有意義」とするかは明言できませんが、少なくとも実習生が「学べる」場であってほしいです。ちなみに私は教育実習に行くまで教員になろうとは思っていませんでした。でも実習校は私を受け入れてくれました。そして教員の様々な仕事を体験させてくれました。その結果私は教員になろうと決めました。私の人生を大きく左右することになった教育実習は少なくとも私にとっては有意義だったと思っています。


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